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75話

グレオノール王国へと向かう事になったのですが、姉上は行った事がないそうですので王宮に向かう事になりました。

移動魔法があるので直ぐに戻れるとは思いますが、母上に報告をしてから向かう事にしました。


ヒスイについては姉上もよく分かっておられなかったので通常の収納魔法を使う際と同じように、ヒスイを保管というか保護というか…とにかく別の場所に移動させる事を考えてみたのですが上手く出来ませんでした。

王宮ならば知っている人物が居るかも知れないという事でヒスイも同行して貰うことにして、姉上の移動魔法で王宮内に向かいます。



『狭いね。』


『ヒスイが大きいのです。』



ヒスイの姿を見て怯える方や武器を構える方が居ましたが、姉上が上手く話をして下さったのでどうにかヒスイが攻撃されずに移動出来ました。

姉上が顔見知りになったという宮廷魔術師の方の元に向かうと何故か大笑いをされました。



「あっははははは!これは本当に歴代稀に見る勇者様よの。いやはや、探知魔法を使っただけの甲斐はあったようだ。」


「笑い過ぎです、レムじい。ヒロトはそんなに強くないんだよ?」


「力の使い方を知らんだけじゃろうて。しかしこれは…姉弟揃って頼もしい限りだわい。」


「うん?私も含まれてる…?」


「サーシャも魔力が大きいと言っただろう?加護も無いのにここまでとは、素養も勿論…努力もしたんじゃろうの。偉い偉い。」


「あ、はは…ヒロトと母様は私が守らないとって思ってるからね。二人の為なら努力なんて苦じゃないの。」


「姉上…。」



姉上の気持ちが嬉しくて思わず擦り寄ります。ぐりぐりと顳顬(こめかみ)を擦り付けているとくしゃくしゃと頭を撫でられました。姉上のその手付きは心地良くて好きです。



「フレッドが入る隙などなさそうな程にイチャついているのぉ。」


「イチャついてなんてないです。これは甘やかしてるの。」



そう言いながら未だに擦り寄る小生を姉上は撫でて下さいました。全身で好きだと表しているとヒスイに体当たりをされました。



『ヒスイ、痛いです。』


『俺も撫でて。』


『今は小生が姉上に構って貰ってるんです。』


『俺も。』


『後で。』


『やだ。』


「…サーシャ、弟は魔物と話が出来ているようだの?」


「あ…、はい。転生者に前例とかあるんですかね?こうやってにゃーにゃー言ってるだけみたいなんだけど、ちゃんと会話出来てるらしくて…。」


「ふむ…、前例が無い訳では無いが…遥か昔の文献でちょろっと見た程度じゃの。こんな強力な魔物を使役しただけでも本が書けそうだというのに…。」



あまりにもグイグイと頭を押し付けて来るヒスイに負けて、仕方なく撫でてやる事にしました。折角姉上に撫でて貰っていたのに…。

レムじい殿と姉上が話している間にヒスイを構っていたのですが、唐突に部屋の扉が開かれました。



「おぉ、本当に魔物を連れている。…その魔物…、…街に出た魔物に似ているが…。」


「…えぇ、子供です。」


「そうか、敵意は無さそうだが…。」



扉を開いたのは数名の護衛を連れたギド…ではありませんね、国王陛下でした。街で見掛けた様相とは異なって幾らか華美な衣装に身を包んでいます。

王宮内に魔物が入り込んだとでも思ったのでしょうか?



「ヒスイは小生が引き取ります。剣を向けないで頂きたい。」


「敵意も無く、街を襲うでも無いなら剣を向けたりはせんよ。魔物とはいえ生きているのだから。」


「ギ…、陛下は無闇に殺そうとは思っておられないので?」


「あぁ、可能な限り共存出来たらとは思っている。…が、魔物が人間を襲い、街を襲って来る事が多い今…難しい事だとも理解しているがね。」


「…食べ物を求めているから、でしょうかね。人間が食料として獣や魔物を狩るのと同じなのでしょう。」


「で、あろうな。しかしまぁ今は魔物よりも魔族よ。サーシャから話は聞いたな?」


「はぁ…、陛下に上手く乗せられた感が否めませんが…。仕方がないのでディーを虐めに行ってきます。」


「ははっ、ヒロトなら問題ない。お前の場合は弱いのではなく、戦い方が下手なだけだ。」



戦い方が下手だから弱いのではないのでしょうか?猫の姿だったらもっと上手く立ち回れる自信はあるのですがね…。これでもほぼ負けなしだったのです。



レムじいに使役について聞いてみたのですがやはり小生には出来ませんでした。今のところヒスイは連れ歩くしかなさそうです。魔物や獣を使役している方々の中にも連れ歩いている方は居るそうなので大きな問題はないそうです。ただ、ヒスイは魔物の中でも珍しい種類な上に能力も高いそうなので警戒されてしまう事は覚悟するようにと言われました。



『ヒスイ、すみません。小生では別の空間にご案内する事が難しいようです。食事はちゃんと用意しますので、街で勝手に食べてはいけませんよ。』


『…美味しそうでも?』


『美味しそうでも。…人間は果物と金銭を交換するのです。街の外であればまだ良いのですが、街の中にある果物は所有者が居ます。その人から金銭や品物を渡して交換するのが人間なのです。』


『面倒だね。』


『まぁ、それは大いに同意しますが。取り敢えずは、郷に入っては郷に従って下さい。』


『郷…?』


『…街中に入ったら街の規則に従って下さい。』


『どうして?』


『ヒスイにはヒスイの生き方があるように、街の人間にも生き方があります。必ず、とまでは言いませんが、街中に居る時はそこに住んでいる彼等に沿って行動するよう心掛けて下さい。』


『ん…、努力、する。』


「何を話しているか気になるのぉ…。」


「ふふっ、聞けば教えてくれますよ。私にもさっぱりですけど、聞くとあっさり教えてくれるの。」



ヒスイと話が終わるとレムじいから今の会話の内容を尋ねられました。やはり魔物の言葉は分からないようです。

街中では商品を勝手に食べないように話していたとお答えするととても興味深そうに頷いておられました。





ヒスイを伴ってレムじいの部下という方にグレオノール王国まで送って頂きました。

カナタ殿たちは先に向かっているのだと聞きましたが、送って頂いたところには居ませんでした。もう移動しているのでしょう。

一先ずはフレッド殿にお会いして、指示を仰ぐようにと言われたので姉上と共に彼の姿を探す事にします。

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