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41話

半人とはよく言ったものです。獣のような人間のような不思議な匂いがしました。不快という訳ではありませんが、得体が知れなくて何だか不気味です。ただ、そういった種である事を今回認識できましたのでもう不気味とは思いませんがね。

話には聞いていましたし、リゼンに詳しい文献まで見せて頂いていたので直ぐに判断出来ました。しかし実物は初めてなので少し不安があったのですが、誰からも突っ込まれない辺り半人で合っていると思って良さそうですね。

荷台を降りる前に中をぐるりと見回してみたのですが、どうにも違和感があるような…。



「ヒロト、もう良いよ、ありがと。私たちは宿を探そう?」


「姉上、何か足りない気がするのですが…。」


「うん?何が?」


「あ、いえ…それが分からなくて気持ち悪いのです。」


「えー?なんだろ。」



姉上にも騎士殿にも降りて良いとは言われたのですがどうにもスッキリしない。

小生の言葉を聞いて姉上も荷台に上がって来て下さいました。姉上も中を見回しましたが何が足りないのかは検討が付かないそうです。


もう少し荷台で考えたいと思ったのですが、馬車を押収する為に降りて欲しいと言われて姉上と共に馬車から離れました。

騎士殿たちはお仕事を忙しそうにこなしているのでぼんやりとその様子眺めて違和感の理由を考えます。



「クロガネ、何が気になっているかは知らんが行くぞ。私はお祭りを見たい。」


「お一人でどうぞ…と言いたいところですが、メヒテルト殿にお願いされてしまいましたからね。姉上の許可を貰ってからですよ?」


「子供扱いをするな、お前も9歳くらいだろう?!」


「10歳です。…小生の方が少しお兄さんのようですねぇ、ディー。」


「うぬ…っ、ニヤニヤするなっ。殆ど変わらないじゃないかっ。」


「ヒロト、ディー、行くよー?」



流石(さすが)に街中で馬に乗っている訳にはいかず、姉上とフレッド殿は手綱を引いて歩いています。仕方がないのでディーの護衛は小生が担当せざるを得ません。といっても手を繋いで歩くだけなんですがね。

もし襲われたとしても小生では庇い切れないでしょうし。…まぁ抱えて逃げる事くらいなら…、出来なくもない…かも知れませんが。



「………あ!!」


「何、どうしたの?ヒロト。」


「姉上、分かりました。違和感の正体。馬車の護衛が居ないのです。」


「馬車の護衛…?」


「商人は出会った時、賊に襲われて護衛が戦えなくなったと言っていたのですよね?その護衛はどちらに?」


「…そういえば…。戦えない状況なら怪我をしてるとか、死んでしまったとか…あれ、でも襲われた場所で立ち往生してたんだよね…?それって…。」



小生が気付いたのは護衛が居ない事だけです。でも姉上とフレッド殿はその先も理解したようで小生に手綱を任せて走り出してしまいました。…だから、小生は馬を扱えないと言っているではありませんか…。

幸い小生は馬と会話が出来ますので、お願いをしてゆっくりついて来て貰う事にしました。馬であれば姉上たちの速さに追いつけるでしょうが、馬とディーを連れた徒歩の小生が追い付ける筈もありません。




お祭りだからと人が多く、なかなか進めなかったのですがどうにか姉上とフレッド殿の姿を捉えることが出来ました。騎士殿たちが控える詰め所に向かう途中の細い道でした。祭りの騒がしさは響きますが、店もないので人通りが殆どありません。だから騒ぎにもならなかったのでしょう。


小生の鼻ではこの人混みから姉上を辿る事など出来ません。ディーが魔力を探知出来て助かりました。勝ち誇った顔をされたのでぷにぷにとした頬を軽く摘まんでやりましたがね。


姉上とフレッド殿の前には事切れた騎士殿が二人。商人を連行していった二人だったと思います。

姉上が治癒魔法を掛けているようですがピクリとも動きません。フレッド殿は姉上の詠唱を止めます。もう、魔法では助からない…そういう事なのでしょう。



「……もっと早く気付いていれば良かった…、ごめんなさい…。」


「サーシャの所為じゃない。…けど、これは詰め所に報告に行った方が良いな。俺、行ってくるけど…大丈夫?」


「ヒロトが居るからフレッドは居なくても平気。」


「うん、言い方。……じゃあ直ぐ戻るから。」



フレッド殿が場を離れて行く際に小生に視線を寄越しました。恐らく姉上を頼むとでも言いたいのでしょう。そんな当たり前の事、貴殿に託されなくてもちゃんと支えるに決まっているじゃないですか。少し不満だったので視線を反らしてやりました。

ガックリと肩を落としつつも詰め所があるであろう方向へとフレッド殿は走って行きました。



「姉上…、大丈夫ですか?」


「ヒロト…。気付くのが早かったらこの人たちは死ななくて済んだのに…。」


「姉上が責任を感じる事はないと思います。ですが、姉上が気にするのであれば弔って差し上げましょう。」


「そう、だね…。」



馬に話は付けてあるからとディーに手綱を任せて姉上の肩を支えました。

半獣の王の息子なら馬くらい(ぎょ)せるでしょう。出来なかったら笑ってやりましょう。

ディーも狙われている立場だとは理解していますが、今は姉上が優先です。そっと肩を支えたまま話を聞きました。


小生が気付いた、護衛の姿が見えない…ということから姉上とフレッド殿が気付いたのは初めから護衛など居なかったという事のようでした。

誰かを雇い、負けて逃げたのだとしたら戦えなくなったではなく逃げたと話すだろう事、死んでしまった場合も相手が魔物であれば食べられてしまったという事もあるそうですが賊に襲われてと話していた事から死体も無いのは可笑しい…そう思ったのだそうです。

結果、護衛を雇ったという話自体が嘘であり、護衛を雇わずに馬車を引いて移動出来るだけの戦闘能力が商人にはあったと判断したのだとか。


その為、訓練されているとはいえ街に居るような騎士では負けてしまうかも知れないと追い掛けたのだそうです。結局、間に合わずに商人は逃げてしまいましたが。


ついさっき出会った名前も知らない騎士殿の為に嘆いて差し上げる姉上はお優しいのでしょう。小生は全く何も感じません。弱いから負けたのです。

ただ…縄張りや食事、雌を奪い合う為に殺し合いに発展する事もありますが、逃げる為に殺すのは納得がいきませんね。人間は複雑だと分かっているつもりでしたが、此方の世界では本当に死が身近なようです。

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