第二章26話 『8月17日⑦ 東シナ海海戦』
11:00頃。日本の支那艦隊が韓国軍から情報を受けてからおよそ2時間後にようやくその場所へと着いた。しかし、中国の艦隊だけでなく、韓国の艦隊も見当たらない。そこで支那艦隊司令長官である三条政善中将は潜水隊を使って索敵を行った。およそ3時間後、ついに敵艦隊の位置を発見した。三条中将は発見した潜水隊に敵に見つからぬように尾行するように指示を出し、他の潜水隊と艦隊は情報をもとに敵艦隊へ向かうようにした。一方、他の潜水隊からは韓国の艦隊の位置が伝えられた。その潜水隊には韓国の艦隊と連絡をとり、同行するように指示した。各潜水隊と支那艦隊本隊は連絡をとりお互いの位置を共有しあいながら、敵艦隊へと接近していった。
17:00頃。ついに敵艦隊が支那艦隊の索敵範囲内に入った。中国の艦隊も同様に支那艦隊の存在を確認した。
「敵艦隊発見。編成は空母1、戦艦2、巡洋艦級4、駆逐艦10。潜水艦は確認できてません。」
「敵空母、戦闘機4機の発艦確認!」
「総員、戦闘態勢!対空射撃用意!」
各員から伝えられる情報に対して三条中将は指示を出す。
「ダメです。夕陽によって照準が合いません。」
「それなら、対空ミサイルを装填し、自動追尾させよ!」
対空ミサイルが発射され、敵機を追尾した。しかし、すばやく巻かれてしまった。対艦ミサイルが各2発ずつ発射され、すべて命中してしまった。
「被害報告は?」
「この艦・金剛に2発、主砲故障、戦艦・比叡に3発、炎上中、戦艦・榛名に1発、異常なし、戦艦・霧島に2発、炎上中です。怪我人はいません。」
「それはなによりだ。」
「三条中将!」
「どうした、基頼少将。」
「第十二艦隊司令官の清衡少将からです。」
「ああ、代わりに指揮を頼む。」
指揮を一時的に第三艦隊司令官の藤原基頼少将が代わり、三条中将は藤波清衡少将と話をした。
「どうした?清衡少将。」
「我々第十二艦隊が先行して敵空母あるいはその護衛艦をいくらか沈めてきましょうと思いまして。」
「しかし、それにはリスクが高い。」
「このままでは敵艦隊に巻かれてしまいます。少しでも足止めをしなくてはならないかと。」
「わかった。だが、足止めには潜水隊にやってもらう。その間に接近して、たっぷりと魚雷を敵艦隊に味わってもらおう。」
「ご理解感謝します。では失礼します。」
今後の作戦が定まったところで三条中将は潜水隊に魚雷を放って帰港するように指示をだした。第三艦隊は戦艦4隻が正常航行できるまで徐行し、第十二艦隊の特殊な編成、雷巡洋艦を大いに利用して攻撃することにした。この艦隊は、雷巡洋艦・北上を旗艦とし、同じく雷巡の大井、雷撃が強力な軽巡洋艦の鬼怒と阿武隈を軸に編成されている。雷撃のスペシャリストたちである。
潜水艦の魚雷攻撃によって敵艦隊は大きく隊列が乱れた。そこを狙って第十二艦隊の艦艇らは空母を中心に狙って魚雷をありったけ放った。すぐに敵空母からは戦闘機4機が発艦され、第十二艦隊は対空射撃に入る。放った魚雷の多くは空母に命中し、間もなくして空母は撃沈した。ほかにも、駆逐艦4隻ほどが撃沈した。戦艦、巡洋艦にも魚雷は命中したが、良くて中破くらいまでしかダメージは与えられなかった。
日が沈み、完全な夜戦へと突入した。敵艦隊は戦艦2、巡洋艦4、駆逐艦6とまだまだ残っている。そこに第三艦隊が合流し、戦闘機を殲滅したのち、砲雷撃戦へと入った。戦艦4隻は夜戦において最大の火力を発揮し、重巡洋艦である摩耶と鳥海も大いに活躍し、軽巡の川内・神通・那珂の3隻も敵艦を追いやった。駆逐艦も接近戦において活躍した。敵駆逐艦は6隻とも砲撃によって航行不能となり、魚雷によって沈没した。敵巡洋艦は戦艦による砲撃によって弾薬庫が爆発して轟沈したり、雷撃や砲撃によって沈没していった。最後に残ったのは戦艦2隻だった。最後まで降参することなく、砲撃によって徐々に戦力が削がれていき、1隻は浸水によって転覆し、沈没し、もう1隻は貫通弾による誘爆によって二つに分かれて沈んでいった。これによって19:00頃、東シナ海海戦は日本側の勝利に終わった。生存者を救出したのち、支那艦隊は佐世保基地へと帰投した。この海戦によって日本側は沈没した艦艇はなく、特に損害はひどくなかった。
この戦いをもって中国は制海権をほとんど失った。そして、日本と韓国の連合軍は上海基地への海路を確保したのであった。また、上海基地が確立されここを拠点に日本は中国の侵略を進めることになる。しかし、結衣は暴走によりしばらくは戦線から離れることになり、黒野大将も先の強力な魔法の発動によって休息が必要だったため、魔法軍での侵攻は厳しい。このことが戦争を長期とさせ、より厳しくさせる原因になる。
日本の野望によって日本自身も苦しめられることになるだろう。
次回以降、ドイツ編の予定。