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エンドレス・マジカルライフ  作者: 沖田一文
【第二章】世界大戦編 ユイサイド
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第二章21話 『8月17日② 大宮作戦』

 サイパン島付近にて、空と海とで戦闘が起こっていた。南方艦隊では、永野海紀中将が指揮をとり、おびき寄せた敵艦隊と基地からやってくる戦闘機とを相手にしていた。永野中将には沖縄基地を奪還した戦績があったが、今回は空襲が凄まじい威力で南方艦隊を襲い、厳しい状況にあった。航空戦力に圧倒的な力差があったのだ。永野中将は役割を分担し、攻撃の許可を戦艦2隻と空母5隻に絞り、残りは護衛として対空に集中配備した。しかし、現に艦隊にダメージを与えられるのは戦艦のみで空母から出る戦闘機は次々とやってくる敵機との交戦で精一杯だった。

 第二主力艦隊では司令長官である西園寺萌花中将が指揮をとっていた。彼女はこの大宮作戦の総指揮もとっている。この艦隊は空母9、軽巡4、駆逐26隻で編成される戦艦や重巡洋艦を持たない航空戦力特化型の艦隊である。艦隊結成当初は第一主力艦隊の水上打撃艦隊に第二主力艦隊の航空機動艦隊というセットになる予定であったが、先の大戦のように制空権を失いたくない政府が少しでも日本の領域に留まり、いつでも本土防衛を行えるように、第一主力艦隊の攻撃ではなく、防衛の色を強としたようなのである。そのことがあって第一主力艦隊と第二主力艦隊は単独で戦闘するには戦力が不安定になっていて、逆に艦隊自体を危険な状態にしてしまったのである。

 西園寺中将はそんな艦隊で空母5隻から戦闘機を稼働し、さらに対空射撃ではじめに敵機の殲滅を試みた。うじゃうじゃとやってくる敵機を見た西園寺中将は、「まるで蜂の巣から出てくる働き蜂のようだわ。」とつぶやく。敵は、対艦ミサイルを積んだ機体と航空戦を行う機体とで別れているようで、自ずとこちら側も攻撃の対象が分かれた。両者とも防衛のための攻撃を行っている。敵ミサイル攻撃機は基地を守るために艦に対して攻撃し、敵戦闘機はミサイル攻撃機や自身を守るためにこちらの戦闘機と相対する。一方、艦隊は艦隊自身を守るために攻撃をしている。この状況をみて、西園寺中将は指示を出した。


「どちらも防衛に徹しているから戦況が変わらないのよ。水雷戦隊を先行部隊として敵地に送る。第五水雷戦隊と第八水雷戦隊を交代で任をしてもらう。その間、第五艦隊と第八艦隊は1つの艦隊、第二主力艦隊本隊として行動をとる。先行部隊の指揮はそれぞれ渡部中佐と志藤中佐に任せる。敵の拠点、グアム基地の防衛機能を無効化し、基地侵入経路を偵察、確立せよ。」


 各水雷戦隊に任務が与えられた。最初に乗り込むのは第五水雷戦隊。軽巡洋艦2、駆逐艦14隻からなる大きめの水雷戦隊である。旗艦・天龍の艦長、渡部中佐がこの戦隊の指揮官である。戦隊は最大速力で艦隊から分隊し、基地へ早々と向かった。もちろん、敵機はこの戦隊にもやってくる。しかし、速度を緩めることなく進んでいった。射撃は操作によって艦内から行うので、進水しながらでも対空射撃ができる。ただし、命中率は格段に下がる。第五水雷戦隊は駆逐隊として散開し、各自偵察任務を迅速に行った。しかし、艦隊を基地に入れるルートは見つからない。どうやらここは空軍基地としての完全な要塞のようで、海軍の艦隊は入港することができないようだ。この旨を渡部中佐は本隊の西園寺中将に報告する。第五水雷戦隊は本隊の元に帰還・合流する。西園寺中将は後方航空支援として待機している南東海域担当の第十艦隊に任を与えた。


「第十艦隊はその全戦力をもってして、北のサイパン島群にある敵海軍施設を破壊、制圧せよ!」


 そして、引き続き水雷戦隊を先行部隊として行動させた。


 任を受けた第十艦隊司令官の吉彦秀武少将はさっそく戦闘機を発艦させて、敵海軍施設を空襲した。しかしながら、抵抗する様子はなく施設は無人であった。そのため、施設を資材などを含め破壊するだけして、第十艦隊はサイパン島に上陸した。その時間はわずか30分足らずだった。

 後方の安全を確保した第二主力艦隊は転回して、後方施設へと向かった。それは一度態勢を整えるためであり、南方艦隊とも情報を共有した。当初の予定では、二方面作戦による挟撃で制圧するはずだったが、手段を変えざるを得なかった。戦力を集中させ、南方艦隊を主として要塞外縁の砲撃システムを破壊・無効化することを優先とした。他の艦隊は航空支援を行い、南方艦隊を攻撃に専念させる。敵防衛システムを止めることに成功したら、上陸作戦に移行し、完全制圧を目指す。


 西園寺中将は直ちに第二主力艦隊及び第十艦隊を再出撃させ、南方艦隊のもとへ急行した。この時点において、第十艦隊は第二主力艦隊の指揮下に入り、大宮作戦は2名の中将司令官によって運営された。14の空母による航空支援を受けた南方艦隊は、攻撃へと転じ、まずは敵護衛艦隊と迎撃した。戦艦の主砲による砲撃や水雷戦隊の魚雷によって敵艦隊は殲滅・掃討された。こうして、敵の第一防衛線をともいえる段階を突破した大艦隊は進撃し、敵の陸上装備である防衛システムを破壊、第二防衛線を突破し、上陸作戦に移行した。上陸作戦には第二主力艦隊の乗員たちが参加した。艦船を留め、上陸を開始する。その時であった。グアム基地は盛大に内部から爆発し、周辺の艦船を巻き込んで吹っ飛んだ。上陸作戦に参加した第二主力艦隊のほとんどの水雷戦隊の艦は爆発に巻き込まれ、大破又は沈没してしまった。この爆発は基地にいた兵士が機密を保持するために行ったもので、原因は基地の地下にあった研究施設の原爆が爆発されたことによる。これにより、周辺海域は放射線汚染地帯となり、航行の制限が入り、大宮作戦に参加した第二主力艦隊の生存者及び南方艦隊は被爆、日本国防軍に大きな衝撃を与えた。

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