第二章15話 『中国大陸侵攻の始まり』
8月15日12:30頃。日本海軍と陸軍は日本海を航行していた。宣戦布告を艦船のなかで聴いて、戦闘準備を整えていた。今頃は神城結衣が一人で相手の戦力を削っていることだろう。陸軍大将である東条一誠は自らが戦地へ赴き直接指揮を執るため、陸軍の艦艇に乗船していた。大陸は水平線の奥にたたずみ、煙がところどころ上がっているようだった。神城結衣は予定通りに任務を遂行しているようだった。
「あの娘はちゃんと仕事をこなしているな。こちらもしっかり実行しなければな、大人の面目というものが立たないだろう。」
と傍付きに語る。傍付きは空返事だけを返し、困った様子だった。東条はただの独り言だと言って管制室へ向かった。そして、中国上陸作戦司令官として指揮を執る。
「皆の者、冷静になって聞くといい。私は日本国防軍陸軍大将である東条一誠だ。これから中国上陸作戦司令官として指揮を執る。これより我々上陸部隊は海軍の海上支援を受けつつ、作戦を開始する。慌てることなく、心を鎮めて位置につけ!準備が出来次第、報告をするように。海軍の諸君たちは引き続き周囲の警戒を、作戦が始まったら、海軍の指揮は、及川東美海軍中将に任せる。繰り返す、陸軍の者は位置につき、準備が出来次第報告をするように。」
東条は艦隊内連絡網を使用して指示を出した。すぐに報告が次々とやってきた。12:50頃、準備完了がすべて確認された。
「13:00より、予定通り作戦を実行する。上陸地点は先に襲撃を受けた中国海軍基地の3箇所だ。各艦艇は目標に針路を取れ!」
その指示により、艦隊は3つに分かれて進行した。
「各自、上陸を開始せよ!繰り返す、上陸を作戦せよ!」
この上陸が開始されたことにより、中国との戦争が本格化された。陸軍はこの作戦に3つの大隊、およそ1万の兵を投入した。陸軍軍官総数約15万人のなかから選ばれた者たちだ。
上陸後、直ちに中国陸軍と戦闘が行われた。さらに中国空軍による空爆も開始され、戦況は厳しかったが、海上からの砲撃支援により敵空軍戦闘機を好き勝手させることを抑え、時間を稼いだ。その後すぐに日本空軍の戦闘機が参入し、戦況は膠着した。
中国国家主席であり、国防部長である雷孔明のもとに随時戦況が伝えられていた。雷主席は、アメリカの大統領と電話会談を行うことにした。取り急ぎ会談の準備が進められ、その日の15:00には会談が実現された。約一時間ほどの話し合いを経て、次のようなことが決定された。
一、アメリカと中国は同盟を結び、日本とドイツを相手に共闘すること。
二、周辺諸国に救援を求めること。
三、アメリカは日本に向けて核ミサイルを発射すること。
以上の三点を両者で確認した。会談後、アメリカはミサイル発射の準備をし、すぐに発射ボタンを大統領は押した。ミサイル発射の情報を感知した日本国防軍はそのことを国民には知らせずに対処した。各地の布陣を変えることもしなかった。有賀参謀総長は黒野魔法大将を呼び、核ミサイルの処理を命じた。
16:30頃、ミサイル発射のことを知らない東条陸軍大将は上海を占領すべく指揮を奮っていた。上海の住民は避難が完了したようで、敵の兵か戦車しかいなかった。これを好機と見た東条は上海防衛本隊を一気にたたくように指示した。市街地戦から徐々に郊外へと戦地が変わっていく。それは日本軍の優勢を意味していた。しかし、見晴らしがよくなっていくことは攻める上では都合が悪かった。東条は思いきって本隊を進軍させ、敵本隊と向き合わせた。一応の勧告を敵軍にし、選択の余地を与えた。しかし、敵軍は戦闘を選んだ。迎え撃つことは簡単であった。17:00上海制圧完了。生き残った敵兵を捕虜として連行し、上海市街地へと戻った。
一方その頃、日本上空に危機が迫っていた。大陸間弾道ミサイルなるものが大気圏に突入し、日本の首都へと落下を始めていた。それに対抗するのは日本上空にいるたった一人の魔法使い、黒野魔法大将だった。彼女はミサイルを確認すると、魔法を展開する。
「アクティベーション!」
手に取ったのは魔法使いのイメージ通りの魔法の杖だった。その杖を宙の足の接地面に突いて詠唱を始めた。
「黄昏時に見る太陽は、
赤く燃える魂のよう、
明日に生きるために、
燃え続けろ、
その光ははるか遠くに届き、
生命の源となる、行け、
闇光の星!」
黒野の持つ杖を中心に巨大な星型の魔法陣が広がり、そこから白と黒の魔粒子が充足し融合を始め、その闇光はミサイルへ向けて放たれた。核ミサイルは静かに姿を消し、平和な夕時が訪れた。
「今日は綺麗な星々を見ることができる。」
彼女はそう呟いて空を見上げていた。かくして日本の首都は核の危機から逃れた。