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エンドレス・マジカルライフ  作者: 沖田一文
【第二章】世界大戦編 ユイサイド
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第二章8話 『強化』

 アンは翌日の朝まで眠った。アンは起きると、昨日のことを思い出し、泣き続けた。ご飯も食べずに日が暮れるまで部屋に篭もりきりだった。でも、夕ご飯には顔を出した。私はアンの分のごはんもテーブルに並べ、アンが食べ始めるのに合わせて私も食べた。そして、アンはふとこういった。


「あの、私、強くなります。だから、その、これからもご指導よろしくお願い致します!」


 食べるのをやめ、目をパチパチさせてアンを見た。


「わかった。これからは実戦形式で私と1対1、もしくは複数に対して戦う練習をしよう。」


 少し笑顔が戻ったアンが頷く。


「私が教えるからにはすっごく強くさせてあげるから。」


 なんか葵が言いそうなことを言った気がする。弟子は師匠に似るものなのか。・・・葵に似るのかあ・・・。

 その日は過ぎ、翌日から早速、強化特訓を始めた。


 始めは私と1対1でやる。その間、葵と総司に何かあった時のために見てもらっていた。

 アンの魔法は聖水を生み出しながら、空中に文字を描くことによってその文字通りの物や現象を出現させることができる。聖水属性なので浄化作用がある。文字さえ描けばかなり強い魔法になる。でも、実戦の経験がなければ上手く戦うことができない。私は様々な状況でも対応できるように、魔法だけでなく、基本的な剣術や銃術を中心に条件達成を目標にさせて対戦した。数週間後、ある程度できるようになったと感じたら、今度は複数人での対戦を始めた。まずは2対2の戦闘訓練。アンと私、総司と葵のペアでする。これはペアとのコミュニケーションが必要になる。でもこれは先日のドイツ軍基地の戦闘においてできていたので、そんなに教えることは多くなかった。

 一週間ほどで2対2の対戦訓練を終え、次のステップへ進んだ。一人で多数を相手することである。まずは、アン対私と葵で行った。でも、アンはこの段階で苦戦する。私であれば高速魔法を使って素早く動き、さらに相手の動きを予測魔法で分析しながら攻撃をする。しかし、普通はひとつの系統魔法しか使えないため、他の人にはできない。この問題はアン個人で打開策を見出してもらうしかない。人それぞれに合った戦い方があるはずだ。


 そこで休息日を一日設けた。アンはその日を使って自分なりに策を考えてみるようだ。私はその日を使って協会へ訪問する。アンの特訓の報告をするためと、ドイツ軍の実験についてを報告と情報収集をするためだ。協会の正装に着替えてゲートを使って協会本部へ向かった。


 協会には前もって連絡をしていたので、協会の理事会員の人たちは皆集まっていた。その前で特訓の報告を済ませる。それが済むと今回の本題へと入る。


「さて、私たちは先日、とあるドイツ軍基地へ行ってきました。そこでは秘密裏に魔法使いを使った人体実験が行われていました。このことについて協会は何かご存じですか?」

「・・・。」

「協会はドイツ軍に魔法使いを派遣しました。その派遣先の業務内容は知っていましたよね?」

「ああ、知っていたとも。だが我々は各国とそれぞれ中立的な立場を取り続けるためにはやらなければならない。今、世界は戦乱に包まれようとしている。我々の立場を守るためには協力を惜しまない。もし仮に世界各国から敵対すれば、かの魔女狩りが行われかねない。これは魔法使い全体の存続に関わることだ。分かるかね?」


 理事会の議長のおじいちゃんが答えてきた。協会は未来世代の魔法使いたちを守るために今の魔法使いの数人の犠牲は惜しまないということだろう。


「じゃあ、アンをこれからどうするつもり?」

「あの子は協会が世話をすることになっている。その務めをあなたがしているのだ。そしていずれは協会のために働いてもらう。彼女の両親からは何か聞かなかったのかね?」

「何も。でも、アンは何か聴こえたみたい。」

「だがあなたには話していないようだから、話しておこう。あの実験を受けることは当人たちの了承を受けた上で行っている。そして、もちろんその実験を受けることで軍からは報酬金を貰っている。そのお金はあなたとあの子の生活費にあてられている。この件に関してはあなたも責めることはできないはずなのだ。」

「なら、そんなお金・・・。」

「いらないとは言えないだろう。例え、あなたが何も食べなくても生きていけるのだとしても、あの子はそうではない。あなたは特別な存在なのだ。我々よりも遥かに歳を重ねて生きているが、考え方は幼い。あまり我々の手を煩わせないでいただきたい。」


 どうやら私に反論することはもうできないようだ。ここは一度引こう。


「とりあえずあなた方の言いたいことは分かりました。この件については置いておきます。では、これで失礼します。」


 一礼して部屋から出る。すぐにゲートを開き、帰った。

 大人の世界や政治の世界は難しい。今はアンを強くして何が起こっても対応できるようにしておかないと。世界は再びうねり始めている。


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