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エンドレス・マジカルライフ  作者: 沖田一文
【第二章】世界大戦編 ユイサイド
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第二章7話 『Meisterwerk(マイスターヴェルク)』

「パパ!ママ!」


 そう、その二つの椅子に座っているのはアンの両親だった。私たちはフロートを使って下の階におりて、二人のところまでいった。だが、近づいた途端、アンの両親は突然不自然に動き出した。その目は赤い光を宿して、訳のわからない言葉を発している。そして、背後から声が聞こえた。


「ハハハ。実験は成功したようだ。これで傑作ができたぞ!どうだい、ママとパパが戦争の兵器となった姿は?すばらしいだろう?」


 さっきまで私たちがいたところに白衣を着た人がいた。そして、その人が言ったことを聞いて力が入る。あごがいたくなるくらいに噛みしめていた。


「特別に説明してあげよう。この装置は魔法使いの魔力を改造し、その魔力を魔法使いたちに流すことによって戦いの駒にする装置だ。それで国家のために戦って戦って戦い続けて使われ続けることができるようになる。」

「ならそんな装置壊してあげる。」

「それはダメだ。君たちもこれからお世話になるんだから、大切に扱ってくれよ。ちなみにこれ軍事秘密だからさあ、まあもうすぐ道具になるからいいけどね。」


 アンの両親は魔法を展開させて母親は刃が波状になっている剣・フランベルジェを、父親は大きめな剣・ツヴァイヘンダーを手にした。


「アン!どうする?」


 私は剣を構えながら訊いた。


「・・・聴こえる。パパとママの声が。・・・そうなの、もう元には戻れないの?・・・嫌、私にはできない。・・・。」


 アンは目を閉じて黙ってしまった。すると、アンから魔力が高まっていくのを感じた。そしてそれが絶頂に達する。淡い光に包まれたアン。その光が晴れると、アンの両親は突然動き出した。アンは空中に指で文字を描いている。


Schild(シルト)[盾]!」


 描いた言葉の物が水によって具現化させる魔法のようだ。アンはその盾で両親からの攻撃を防いだ。


「結衣!お手伝いをお願いしてもいいですか。私がパパとママの罪から解放し、楽にさせます!」

「わかった。」


 つまり、アンは自らの手で両親を葬ると決めたということ。その瞬間に私の脳内ではあの日の夜のことが回想された。大切な人を、仲間を、家族を、望まずに自分でやることはかなり辛いことを知っている。でもアンは自分で覚悟して決めた。だから私はアンを支えなければ。

 私はアンと両親との間に入り、母を弾き飛ばす。父もそうしようとした。


「くっ、重いっ。」


 けれど、父が持つツヴァイヘンダーが重すぎてうまくいかなかった。



「アン、一度後退して。」


 アンがゆっくりと後ずさりしているその間に母のほうが魔法を唱えていた。


「ギリシア神話のプロメーテウスよ、主に怯えずその勇気をもって、我が刀身に炎を渡したまえ、ブラント・ステッケン!」


 母が持つフランベルジェが炎に包まれ、炎の剣となった。そして、アンに向かって走り出す。


「アン!行ったよ。」


 アンは急いで何かを描き始める。


Frieren(フリーレン)[凍れ]!」


 その水で描かれた文字が具現化され、母のもとへ行く。しかし、水は母の炎で蒸発してしまった。母はそのままアンに斬りかかろうとする。


Schild(シルト)[盾]!」


 再びアンは盾でそれを防ぐが、徐々に水の盾が蒸発していき、母の剣がアンを傷つけようとしていた。私が助けに行こうとするけど、アンの父が見逃してくれない。そんななかアンは一人でなんとか切り抜けようとしていた。


「アウェイ!」


 母の剣ごと弾いて距離をとった。


Zerlegen(ツェアレーゲン)[分解せよ]!」


 文字を描き、それを母に向けて放った。母はその文字を斬ろうとした。しかし、文字と剣が当たるとその接点から剣が粒子へと変わっていった。やがて、母の肉体もろとも粒子へと変わり、飛び散った。


「結衣!避けて下さい!行きます、Zerlegen(ツェアレーゲン)!」


 今度は父に向けてそれを放った。私はすぐに横にそれてそれを避けた。そしてその文字に当たった父は母と同じように粒子となり、消えていった。

 アンのほうへ視線を移すと、アンはふらふらしていて今にも倒れそうだった。急いでアンのもとに行き、アンを支える。


「アン、大丈夫?」


 訊いた私はバカかと、初めて魔力を覚醒させてあれだけの戦闘をし、さらには自ら両親を殺しているのだ。体力的だけでなく、精神面でも大丈夫なわけがない。アンは立っているのもやっとのようだった。


「いいよ、休んでて。あとは私に任せて。」


 そう声をかけるとアンは私の胸の中で眠っていった。アンにフロートをかけて、抱き抱える。あの変な科学者の姿はどこにもなかった。きっとすでに逃亡したのだろう。さて、ここを出る前にこの恐ろしい装置を壊して置かないと。


「ちょっとごめんね。」


 アンを離れたところに寝かせて、もう一度魔法を展開させる。


「アクティベーション。」


 それから、アンが両親にやったのと似ている総司お得意の魔法をだした。


「アステカの創造神テスカトリポカよ、悪魔と化し、あらゆるものを無へ還せ、リバース。」


 あの装置は黒い塊に飲み込まれて消滅した。それから、ゲートを開いてアンを抱えて帰るべき場所へ帰った。

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