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エンドレス・マジカルライフ  作者: 沖田一文
【第一章・下】 とうそう編
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第一章65話 『スピード勝負』

「ペニン!」


 戦闘開始とともにエマはあの龍を呼んだ。先に私に飛びかかってきたのはその龍だ。中国古来の龍は細長く鱗が硬くて、動きが速い。剣でその硬い鱗を受け流すが、重くて押し倒されそうになる。大勢を崩したところに背後からペニンが襲ってくる。噛みつかれそうなところをなんとか回避し、硬い鱗を斬りつける。しかし、ダメージを与えることができない。同じ位置にいると他の魔法使いたちからの攻撃の的にされる。疾風でそれらを弾き飛ばしながら、左手をかざして唱えた。


「和泉守兼定!」


 大石の兼定が現れる。それを左手に握り、二刀流でペニンを斬りつけた。痛みを感じたペニンは雄叫びをあげてから口から炎を吐き出した。それを避けながらもう一度ペニンの体に傷をつける。兼定の斬れ味は抜群だ。ペニンは暴れだした。その様子を見ていたエマはペニンを還し、ペニンは姿を消した。続けてエマが手に炎を纏う。そして、その炎は剣の形になった。


「ペニンの分のお返しよ!」


 炎の剣を振り下ろすと、炎が風とともに向かってくる。避けようとしたところに希望が言霊で私の動きを止めてしまった。逃げる術なく、炎の剣撃を受ける。衝撃とともに痛みと熱さが全身に伝わる。それがますます私の動きを封じた。それを契機に魔法使いたちは次々と魔法を放った。上下左右からくる攻撃を真に受け、意識が薄くなる。そして、意識が遠のいていくなか、体が勝手に動きはじめた。魔法の暴走の始まりである。次の魔法が発動する前に私の意識は完全に魔法の力に乗っ取られてしまった。



 暴走した結衣は2本の剣を手にハイスピードで攻撃を始めた。希望の言霊はもはや効かなかった。次々と魔法使いたちを襲って斬り倒していく。そんな結衣をエマは炎の剣で受け止めた。しかし、結衣は剣が2本ある。別の剣がエマのもとを襲う。エマはそれを身体から滲み出る魔力を炎に変えて熱風とともに塞いだ。結衣はこれ以上の攻撃は不可能だと判断し、エマを蹴り飛ばして一度距離をとった。エマと離れているあいだに他の魔法使いたちが攻撃を加える。それを結衣は一瞬でだしたアパートファイアボールを自分のまわりをクルクルさせて防ぐ。すべてを防ぎきったあとにそのまま反動をつけて周囲に飛ばす。これに巻き込まれた魔法使いは数人いたがほとんどは避けた。炎を飛ばした結衣は高速で飛び回り、再び剣撃で魔法使いたちを駆逐していく。それを今度は希望が止めた。その手には刀が握られている。素早い動きで結衣の二刀流を交互に弾いた。だが結衣は怯むことなく攻撃を続ける。希望はなんとか結衣のスピードについていっているが、限界だった。


「フローズンクリーパー!」


 そこで魔法を使った。希望の手から伸びる氷の蔓は分岐して結衣を絡めとった。しかし、すぐに結衣は炎を出して氷を溶かし尽くす。それから、希望めがけて剣をふるった。思わず目を瞑ってしまった希望は衝撃が来るのを待ったが、来たのは衝撃ではなく、剣と剣がぶつかり合う音だった。目をあけると、目の前には全権大師である織田山門と、旧最高魔法師のサブリンがいた。


「やはり、暴走してしまっていたか。」

「「山門様!」」


 突然の山門の登場で希望とエマは驚いてその名を呼ぶ。1人だけ立派な白い軍服を着た山門は異様に存在感があった。元最高魔法師の格好をしたサブリンはもはや目立たない。それはともに来ていたシャルルも同様だった。


「それじゃああとは俺たちに任せてくれ、エマ、希望。」

「「はい。」」


 全権大師からの指示に二人は短く返事をした。


「よし行くぞ、サブリン、シャルル。くれぐれも結衣に読まれるなよ。」

「そのくらい分かってますよ、全権大師どの。」


 ちょっと皮肉なことをサブリンは言ったが、山門は気にしていない様だった。3人はそれぞれ行動を始める。まず山門とサブリンの二人で結衣を押しのけ、サブリンの予測魔法で結衣の攻撃を大雑把に予測し、サブリンが結衣を対処する。それでも暴走状態にある結衣はとても予測しにくいので山門がサブリンを庇うようにフォローする。二人が結衣を相手しているあいだにシャルルは魔法を唱えていた。


「ギリシア神話の女神、アーテーよ。

  恐怖を身に、破滅をもたらせ。

  迎撃せよ、ダーク・ブレイク・スペース!」


 巨大な黒い魔法陣が結衣を囲うようにして複数現れる。それを見た二人はすぐに結衣から離れる。そして、魔法が発動し、魔法陣のなかから、漆黒の光線が連射される。結衣はそれを避けようと飛び回るが魔法陣は結衣を囲ったまま狙いを定め続けた。結衣はやけになったのか魔法を乱発させ始める。無条件に攻撃を受ける結衣をシャルルは最後に魔粒子による波動でぶっ飛ばした。


「これで作戦どおりだな。お疲れ様、二人とも。一旦、待機してくれ。」


 そういって山門はサブリンとシャルルの姿を消した。それから、離れたところで見ていた集団にも声をかける。


「作戦は手はず通りに行った。エマたちは俺についてこい。後の人たちはここで終了だ。でも、万が一のためにいつでも出られるように待機しておいてくれ。」


 山門は北東を向いて跳躍した。それにエマたちも続く。その出向の様子を見送ってから東京局の魔法使いたちはそれぞれに帰っていった。

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