第一章61話 『追いかけっこ』
どうして一度眠るとこうも数日経ってしまうしまうのだろうか。朝の光で起き上がった私はふと思う。その答えは知っているのについつい思ってしまう。不意にグググーとお腹が鳴った。そういえばもう何日もご飯を食べていない。そう考えると、なんだか力が抜けていくようだった。まずは何か食べられそうなものを探そう。穴から出て、地面を蹴り、いつものように空を飛ぶ。だけど、ご飯を食べることはできなくなった。目の前に大量の魔法使いが現れたからだ。全員協会の制服を着ている。ここでもやはり中央にいる人がリーダーのようで名乗り始めた。
「私たちは世界魔法協会日本支部所属である。そして、私は須郷希望。東京魔法学校の会長及び日本支部東京局の局長をしている。本日はあなたを連行しにきました。」
黒髪ロングストレートでいかにも会長ですといった感じの希望はご丁寧に申し上げてきた。
「ごめんなさい、お断りします。」
こっちも丁寧にお断りした。
「そうですか、では、実力行使に移らせてもらいます。全員、準備を!」
相手がみんな戦闘態勢に入ったので私も魔法を展開させて剣をとる。それを見た希望は
「戦闘開始!」
と合図した。その途端に大勢の魔法使いたちが動き始めた。私は深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから飛翔した。魔法使いたちは容赦なく強力な魔法を使ってくる。私は予測魔法で予測して高速魔法で斬ることしかできないのに。そして何より戦いにくい。人数が多いからなのか、自由に攻防ができない。さまざまな武器、系統魔法、属性があってそれがうまく組み合わされていて戦いが支配されている。そしてあの会長は外から戦いの行く末を見てるだけだった。この作戦を立てたのはあの人だ。それにあの人だけ楽をしているのはなんか嫌だ。私は熱くなって無理矢理、敵の壁をこじあけて希望のもとへ向かった。希望はこちらをじっと見ている。何もせずにただ攻撃を受けるだけかと思ったが、希望は口を開いた。
「止まれ!」
ただその一言だけで私の動きは止まった。動こうとしても動けない。何が起こっているのか希望は教えてくれた。
「私の能力は言霊。言葉を発して相手を操る。さて、お遊びはここまでにして一緒に行きましょうか。」
笑顔でこっちを見る。そして次の言葉を発した。
「協会へ行け!」
そのくらいで済んでよかった。私は言われるがままに協会へ向かって飛び始めた。そして、一緒にという言葉を無視して猛スピードで飛んだ。日本を出て、中国大陸を抜け、やがてヨーロッパへと出る。速度をおとさないまま協会に突っ込んだ。そこでようやく言霊のしがらみが解けたので協会に一発お見舞いしてあげた。炎の魔法を盛大に使ってまわりの建物を破壊し、燃やした。単なる嫌がらせにすぎない。だけど、ストレス発散には十分だった。それからすぐに協会を出て、アメリカへ向かった。ついでに協会で食料を調達して空を飛びながらパンとジュースを食べた。久しぶりの食事だったからか、質素なメニューなのに涙が出るほどおいしかった。
ヨーロッパからアメリカはすぐ近くだ。私はとりあえずニューヨークにいくことにした。そこで、情報を集めてから再び世界を飛び回ろうと思う。
そして、2、3日くらいあらゆる方法で情報収集をしたら、簡単に順序を決めて、ニューヨークをあとにした。次の行き先は南アメリカ大陸。長居は無用。なぜなら、そこにとどまり続けるといつまでもつきまとってくる協会の魔法使いたちがやってくるからだ。まあ、世界で指名手配されたっていうから大して変わらないけれど。アマゾンのジャングルの中くらいは追っ手に会わないといいな。そんなことを期待しながら南へ向かった。
高山を抜けると、緑が広がる森林帯へと入る。
「さて、どのへんで争いが起きてるのかな?」
予測魔法を使って辺りの状況を分析する。見渡せば見える範囲を分析することが可能になったので、けっこう楽になった。私の魔法も成長しているのね。身長とかも成長してほしいのだけれど、ひょっとして、私が身長伸びないのは魔法のせい?とか思っているうちに分析は終了し、争いが起こっているところはほとんどの街で起こっていることが分かった。ブラジルは治安が悪いって聞いたけどまさかここまでとは。まあ、私のせいでもあるんだけど、こんなに争いが多いと改めて罪悪感が湧き出てくる。
気を取り直して、近いところから処理にかかる。街に降り立って、争いを止めるべく、悪いほうをジャッジしてそっち側を駆逐していく。だけど、私には当然のごとく味方はいない。敵を倒しても、犯罪をとめても、テロリストを殺しても、みんなが口を揃えていうのは、「魔女」や「化け物」。何よ、私はあなたたちのためにやっているのに。それでも、私はあなたたちを助ける。感謝なんていらない。私は1人で戦い続ける。手を汚すのはもう私だけにしてほしい。すべての悪は私が滅ぼす。そんな想いで戦い続けた。時には犯罪者と、時には国家の軍と、時には魔法使いと。いったい私の敵は誰なのか分からなくなりそうだった。
そんなこんなで私は南アメリカの各地を巡って、争いの種を摘んでいった。代わりに私という恐怖の苗を住民たちに植え込みながら。




