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エンドレス・マジカルライフ  作者: 沖田一文
【第一章・上】 魔法社会革命編
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第一章56話 『魔法社会革命の終わり』

 魔法を暴走させた結衣は、破壊を始めた。大石がやられ、敬助がやられ、葵がやられ、総司まで失くし、今度こそたった一人になった結衣は人だろうが、モノだろうが、幽霊だろうが、関係なしに魔法を乱発して破壊する。心が壊れ、その瞳に意志が宿っていない結衣に声をかけても無駄だった。


「なるほど。プライマリーという抑止力がなくなり、力が解放、暴走しましたか。これはまずいですね。このまま世界を破壊してしまっては協会の面子がたちません。山門、ここは我々が引き受けます。あなたが死んでしまっては我々はすべて終わりです。」


 サブリンが司令塔の上から勧告する。それにはほかの最高魔法師たちも同意のようだ。確かに、俺がここで死んだら協会だけでなく、おそらく世界までもが崩壊する恐れがある。だがしかし、俺はあの総司が気に入った結衣のことがとても気になる。それはこのように暴走してもなお、魔力が大量に有り余っていてしかも、強力な魔法を使いこなせるということだからというだけではなく、何か別な何かが俺を引き付けている。だから俺はこのまま結衣を見届けたい。


「俺も戦う。遠くからなら問題ないだろう?」


 上を見上げて山門が訊くと、サブリンは反対側の甲板にいたメイソンたちのほうを見る。彼らが頷くのをみて了承した。


「いいけど、一応、護衛としてシャルルについてもらう。我々は空中で討ちましょう。山門は遠距離でこの大和を使って援護して下さい。」


 そういって彼らは大和から飛んで浮遊した。話し合ってるあいだに艦砲をひとつやられたが、所詮、魔力でできたもの。いくらでもなおせる。俺はちょいとそこをなおしてから大和を移動させた。遠くまで離れると、すでに結衣との戦闘は始まっていた。暴走状態にある結衣はただの無慈悲な戦闘人形だ。顔色一つと変えずに攻撃してくる。


「さて、撃ちこもうにもこれじゃあ味方まで巻き込んでしまうな。しかし、ここでやられるのをみているわけにもいかない・・・と。ふむ、まあとりあえず撃ってみるか。」


 俺は左手をあげて、全砲門に魔力を注入する。そして、魔力が艦砲に満ちるのを感じると、手を前に振り下ろし、一斉射撃をした。一応、狙いは結衣にしてあるが、その道のりに誰かがいて、あたりでもしたらそいつは消えるだろうな。

 緑色の蛍光色をした光線がそれぞれの線を縫って結衣を囲うようにしていく。幸い、味方の誰かに当たることはなかった。光線に囲まれ、周りから撃ちこまれた結衣はどうなったかというと、煙で見えなかったが、これらをすべて防いだようだ。少しの間があけてから、再び戦闘が始まる。俺はそれを観戦しながら考えた。

 やはりあの赤目をなんとかしないと攻撃はあたらないか。そもそも予測魔法というのはどういうものかはわからない。あの赤目をどうにかしたからといって、予測ができなくなるとは限らない。俺は、司令塔の上に座っているシャルルに訊こうと見やった。シャルルもこちらに気づいてこっちをみたが、笑みだけ浮かべてまた観戦を続けた。まあ、暗闇魔法のシャルルにきいたところで予測魔法のことがわかるわけでもない。とりあえず、あの赤目をつぶしてみよう。

 俺は再び左手をあげて、魔力を注入し、発射させる。今度は一斉射撃ではなく、順次射撃をした。そして、撃った艦砲はすぐに魔力をいれる。これを繰り返した。繰り返しているうちに魔力が足りなくなりそうだったがそれに気づいたシャルルが魔力の補充をしてくれた。度重なりやってくる光線に結衣はそろそろいらだち始めているだろう。殺気がこちらに向いてくるのがわかる。さあ、こっちへ飛んで来い。それがおまえのおわりだ。

 狙い通りに結衣はこっちに向かって飛んできた。俺は今あるだけを一斉射撃した。そしてすぐに魔力を注入し、満タンになる前に次を発射させた。まず第一陣の光線が結衣の動きを鈍くさせる。第二陣で攻撃をまともに食わらせる。そして、すぐに第三陣であの赤目をつぶす。このとおりに実行できた。目を潰された結衣は辺りを適当に攻撃し始まる。そのあいだにメイソンたちが近づいて攻撃を始めた。

 しかし、結衣は叫びとともに強大な魔力を周囲に放出させた。俺たちが吹き飛ばされる。そして、結衣はその赤目をぱっちり開いて、剣を上に掲げ、呪いのような魔法を詠唱し始めていた。


「すべての者たちに告ぐ。」


 世界に鈍い音が鳴り、体が重くなる。


「この世は絶望と憎しみ満ちた。」

「すべてを終わらせ、死と永久の眠りの安らぎを。」


 その言葉ひとつひとつ聞くごとに胸がしめつけられる。これは、本当に呪いの詩だ。このままでは世界が終わる。あの詠唱が終わる前になんとかしなければ!・・・・・王の力だ。この力をもう一度解放させれば希望が開けるはずだ。

 俺はまた王の力を解放させた。それは五人の最高魔法師が解放させていた。そして、それぞれの魔力の色の波動を結衣に向けて発射させる。結衣は詠唱を続けていた。


「死んでしまえ!End of the World!!」


 詠唱の終了とともに巨大な黒い禍々しい魔法陣が世界全体を包み込む。それから、轟音とともに世界が滅び始めた。詠唱を終えた結衣は五つの方向からくる五色の波動を魔力の壁で防いでいた。しかし、その壁もすぐに壊れ、波動が当たる前に結衣はさかさまに落下していった。魔力を使い切ったか?

 もはや打つ手なしと思ったときにメイソンが提案してきた。伝承に伝わるどんな願いでもかなえるという儀式魔法を五人の王で行えば、この崩壊を止められるかもしれないと。考えるまでもなかった。五人は了承しあって、陣を組んだ。星形に組んで、詠唱する。浮かんだ星型の魔法陣の中央奥には落下し続けている結衣が見えた。それを無視して俺たちは魔法を発動させた。魔法陣の光がひろがり、世界が温もりと光であふれかえった。世界の崩壊はとまり、大地や時空がもとに戻った。それを見て他の4人の最高魔法師たちが話しかける。


「世界の崩壊は止まったか。」

「これは歴史に残る戦いになるだろうな。」

「あとはよろしく頼みますよ、山門。」

「いろいろと楽しかった。何かあったらまた呼んでね。」


 メイソン、シャルンホルスト、サブリン、シャルルの順に一言残し、消えて行った。


「さて、戦艦ももう消えてしまったか。結衣はどうなった?」


 下を向いて探すが姿が見えない。魔力反応もない。全魔力を消耗して消えでもしたのか、それともどこかに逃げたか。たとえ生きていたとしてもしばらくは目立った動きはできないだろう。さて、疲れたし、協会に戻って寝るか。

 そう思って協会を見下ろすと、そこは無残な姿だった。ああそうだった。総司のやつ、死んでからも嫌がらせをするとは。

 山門はため息をついてから残り少ない魔力で協会を修復させた。


 そのころ、結衣は日本に帰ってきていた。誰もいなくなったプライマリー本部のなかで一人過ごした。暗くて冷たい夜も疲れた体を休ませ、たった一人で眠った。心も体も冷え切っていたのだ。


 夜空は晴れ、月は満ちていた。(第一章・終)


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