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エンドレス・マジカルライフ  作者: 沖田一文
【第一章・上】 魔法社会革命編
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第一章54話 『コラプサー』

 敵艦へ向かっているあいだ、葵と敬助は詳しい説明を求めた。私が簡単に説明すると、なんだか微妙な雰囲気になってしまった。


「まあ、私の結衣ちゃんだからこんなことができるのも当然よね。」


 私は葵のものでもないし、こんなことができるのは普通ではない。そんなこと、言われてもぜんぜん嬉しくなんかないんだから。


 状況の把握が済んだところで副頭首の大石歳忠は各隊に作戦指示を出していた。どうやら私は葵の二番隊と大石と一緒に行動するらしい。目的は、総司と合流し、共闘する。陽動も兼ねているらしい。やはり、作戦を立てるのは私じゃなくて、大石や総司たちにやってもらったほうがいいみたいだ。私は大石が指示を出し終えて、みんなの準備ができたのを確認すると、戦艦のスピードを上げた。やがて敵艦のところにたどり着くと艦をうまく横につけて、私たちプライマリーは作戦を実行した。大石が先頭になって、敵を斬り倒していく。しかし、その行く手を塞ぐものたちがいた。それは抜刀隊。


「ここから先は通しません!ていうか、ここで斬ります!」


 抜刀隊隊長のナイトカドシュの位をもつ女性が言った。


「抜刀術なら俺の領分だ。おまらは先に行ってろ!」


 大石は一度刀を鞘にしまい、抜刀する態勢に入った。抜刀隊の人たちも鞘に手をかける。少しの間のあと、大石が先に走り出していき、刀を抜く。抜刀隊も続けて剣を抜くとたちまち戦闘が再開された。大石は素早く彼らの剣を弾いて私たちが通る道を開けた。私たちはそこを素早く通って総司のもとへ向かった。総司はかなり苦戦しているようだった。私は高速魔法でシャルンホルストの剣を止めに入った。


「なんだおまえ!?」


 シャルンホルストが声を上げる。それに総司は少し笑みをうかべたようだった。


「うちのエースの登場だ。結衣、抜刀隊のやつらはどうした?」

「今、大石が一人で相手してる。」

「大石だと!?それになんでここに葵が、んで二番隊のやつが全員揃ってるじゃねえか!」

「私が山門の魔法を使って、プライマリーのみんなを呼んだの。」

「そういうことか。さて、どうやらこっちはフルメンバーが揃ったようだぞ、メイソン。ここじゃあ、全力を出せないおまえはただ邪魔なだけだな。」

「言ってくれるな。貴様に邪魔だと言われるのは侵害だな。今一度、死刑を執行しないとな。それもずっとつらい、痛い、地獄のようなもんじゃないと貴様らはダメなようだ。」


 メイソンは甲板を蹴って私のほうへ飛んできた。咄嗟に剣で拳を受けたが、鋼鉄の鎧は硬く重くそのまま背後に吹き飛ばされた。硬い主砲塔に突き飛ばされた私は声をもらし、地に伏せた。なんとか力を入れて立ち上がろうとしたのだが、よろめいてそのまま主砲塔を背に座るように倒れ、意識を失っていった。


 結衣をやられた総司は冷静ではいられなかった。


「てめぇ、やりやがったな!消してやる!」


 二番隊がシャルンホルストを相手しているので、総司はメイソンと一対一だった。他のメンバーもそれぞれ相手にしており、指揮のサブリンの指示もとまり、結衣が倒れても形勢はプライマリー側にあると見えた。そんな状況だから総司は存分に力を発揮しようと詠唱した。


「クトゥルフ神話のノーデンスよ!

  地下の暗黒世界の偉大なる深淵の主として、

  ナイトゴーントを召喚せよ!

  ロード・オブ・ザ・グレート・アビネス!」


 総司の前に現れたのは黒くて痩せた魔人だった。


「なんだその弱々しい魔物は。一瞬で灰にしてやろう。」


 メイソンは熱くなった鎧で魔人にアタックする。しかし、見かけによらず、その魔人はメイソンの攻撃を細い手や腕で受け止めた。そして、力強く握りしめた。魔人がメイソンの鎧を砕いているあいだに総司は次の魔法を唱え始めていた。


「常闇の宇宙に潜み、強力な重力を放ち、

  時空を歪め、光や神をも飲み込む、

  すべての物質を闇に葬り、永遠に閉じ込めろ!

  ブラックホール!」


 総司の上空に現れた小さなブラックホールは周りの空気を吸い込み始め、徐々に肥大化していく。それとともに吸引力も増大していった。術者である総司であっても例外なく吸い込まれる対象になる。船体は全体的にブラックホールに向かって傾き始めた。総司は周りの魔力で甲板に必死にしがみついている。他のみんなもあたりのものにしがみついて、戦闘を中断させていた。しかし、そのなかでしがみつけないものがいた。それが結衣だった。意識を失っているため、そのまま宙を浮いて、巻き込まれていく。総司や葵が必死で叫んでいた。そして、穴の入口で結衣は目を覚ましたのだった。


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