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エンドレス・マジカルライフ  作者: 沖田一文
【第一章・上】 魔法社会革命編
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第一章53話 『壮絶極まる戦い』


「まずは1人。あとはおまえたちだけだ。今までただ見ていただけのおまえらに何ができる?」

「それは見てのお楽しみといったところだ。ひとつ教えてやろう。この王の力は俺たちにも未知数だ。よって何ができるか、どこまでできるか試してみないとわからない。だから、おまえたち二人で試させてもらおう。たとえ神にだって負けはしないと思うぞ。さあ、大将!行こうか!」

「ふふふっ、わかりました。先の未来まで。どうやらパターンはたくさんあるようで、未来は見えてもどうなるかまでは予測できません。というわけで、このまま王の力をだしきりましょう。」


 サブリンは片手を上げて、魔力を動かし始める。自分の周辺に魔力の球を配置させると、剣・エクスキャリバーを輝かせた。両手でそれを握りなおすと、山門に指示を出した。


「山門は援護を頼む!私は遠距離魔法があまり得意な方ではないからな。」

「了解。まあやるのは俺じゃなくて、死んだ魔法使いたちだが。」


 総司も結衣に指示を出す。あれがきたらこうしろとかこうなったらああしろとか少し細かいような大雑把のような指示であとは基本、自由だ。結衣は言われなくても分かっているよ、といった感じで攻撃準備をした。天候を操り、有利になるように場を整える。サブリンはそれを見届けずに攻撃をしかけた。総司はこれに応戦する。風の加護を受けながら、順調にサブリンの体力を削っていった。山門は空中に配置していた魔法使いたちに手で指示をだして、結衣を狙った。これらの魔法を結衣は高速魔法でひとつずつ丁寧に消していった。それから魔法使いたちも一人ずつ倒していく。そうはさせない、と山門は自ら剣を抜いて、結衣と対峙した。そのあいだに総司とサブリンはどうやら決着がついたようだ。総司は最後にサブリンを山門のところへ吹き飛ばす。山門はこれを片手で頭を鷲掴みして止めた。山門はため息をついてから総司のほうを睨んだ。


「これは仕方ない。俺一人だけになってしまった。」


 山門は剣をサブリンの身体に突き刺し、引き抜いた。サブリンを掴んでいた手を離すと、サブリンの身体は総司の魔力へと吸い込まれていった。それから詠唱を始めた。




「我が祖国の心、大和魂を抱き。」


 山門の周りに緑色の光っている魔粒子が集まる。


「軍事の最高を誇る、海軍の象徴。」


 集まった魔粒子が巨大な船の形を成す。


「神より賜ったその力を。」


 その船が実体化していく。


「桜のように咲き乱れ!」


 できあがった巨体な戦艦を緑色の魔粒子でコーティングされて緑色に輝く。


「全砲門、開け!」


 全ての艦砲に緑色の魔力が充填されていく。


「そして、一億総特攻の魁となれ!」


 艦全体が動き、私たちから距離をとってその艦の横を見せ、艦砲が私たちをロックオンする。


「大和型一番艦・大和!一斉射撃!」


 詠唱の終わりとともに緑色の光線が全艦砲から放たれ、私たちに向かってくる。総司が前に出て周りの黒いモヤを使って防ぐ。


「結衣!下がってろ!」


 言われた通り、私は総司の後ろに隠れた。攻撃が止んだと思っても、またすぐに次の砲撃がくる。


「結衣!あれと同じやつを出せるか?」

「え?」

「おまえならできるはずだ。俺がここで時間を稼いでるあいだにやってくれ。まずは目をつむってイメージをするんだ。」


 私は目を閉じて、あの艦の形をイメージする。目を開いて、赤く目を光らせて凝視する。


「分析を開始。」


 私の意識が遠のいて、何やら頭の中で演算処理が行われている。


「分析完了。魔法の構築を開始。」


 機械のようなトーンで放たれる私の声はまるで別人のようだった。頭の中で様々な見たことのない文字を含めて流れている。


「魔法構築完了。これより魔法を発動する。」


 そしてそのまま私の意識の管理外で機械のトーンで詠唱し始めた。


「日本の武士道、大和魂を胸にして。」


 私の周りにカラフルに魔粒子が集まる。


「旧海軍の要となった、最高峰。」


 魔粒子が巨大な船の形を成す。


「技術を結集させてできた力を。」


 巨大な船が実体を成す。


「桜吹雪を引き起こし。」


 巨大な船体に魔粒子でコーティングされていく。


「全砲門、開け!」


 全艦砲に魔力がチャージされていく。


「その真なる力を披露せよ!」


 艦砲が相手の艦にロックオンされる。


「大和型一番艦・大和!進水!」


 私の大和は動き始め、すべての艦砲から光線が放たれた。総司はそのあいだに船に乗り込む。いつまにか私のエンジェルスカイは解除されていて、背中の天使の翼は消えていた。きっと、この魔法で魔力と注意力が奪われたのだろう。しばらく遠距離による射撃交戦が行われた。しかし、一向に差がつかない。そこで総司はこの状況を打破するため、私に指示を出した。


「結衣!進め!そのままやつの船に突っ込め!」

「本当にそれでいいの?」

「構わない。それで至近距離から撃って、そのあいだに俺はやつの船に乗り込む。」

「分かった。」


 光線による撃ち合いのなかでの会話だったので、お互い声を張り上げて話す。それはなんだか総司との距離が遠いような感覚を覚えさせた。


 私の戦艦は周りの魔力を黄色くして、少しの間の後、ジェットエンジンが積んでいるかのように戦艦にしてはとても速いスピードで進んでいった。戦艦全体が魔力で覆われている分、移動中の風はすべて乗っている私たちには影響しない。これがなかったら、乗員すべて吹き飛んでいただろう。そのくらいの速さで私の大和は協会の空に浮かんでいる島の反対側に漂っている山門の大和に轟音を上げて突っ込んで行った。艦首と艦首がぶつかり合い、お互いに損傷を受ける。それを無視して私はすぐに光線をゼロ距離で打ち込んだ。それを見て、総司は私の目の前を横切って、向こうの大和に乗り移る。向こうの大和はもうすでに艦砲のほとんどが大破して、爆炎を上げている。その振動はこちらにも伝わってきていた。山門と総司は、まだ壊れていない主砲塔付近で対峙していた。


「終わりだ、山門!この同じ名の船とともに沈め!」


 総司は周りに漂っている黒い魔粒子を舞い上がらせる。


「ならば、せめて貴様を道ずれにしてやろう。どうせ、その魔力だけでここに残ろうとでも考えていたのだろう。自分の魔法で引き起した失態くらい最後にパーにしてやる。ほんと、おまえなんか出さなきゃよかった。」


 山門は剣で軽く甲板をたたくと、周辺にとてつもない数の光が現れて、そこから1人ずつ見慣れた者達を含め、出てきた。協会の魔法使いたち、そして、最高魔法師の4人が現世に現れた。


「この幽霊船め。いいさ、俺がまとめて沈めてやる。」


 いつの間にかくっついていたふたつの船は離れ、それぞれの船は魔力によって破損を修復していた。総司を含めた何人もの魔法使いを乗せた山門の大和は、私の大和からどんどん遠ざかっていった。


「久々の戦闘だな。抜刀隊!用意はいいか?敵はやつ1人と向こうのデカい船だけだ。協会に死んでも尽くすぞ!」


 物理魔法の最高魔法師であるメイソンは、自分の部下たちに向かって叫ぶ。それに倣って高速魔法の最高魔法師・シャルンホルストもわずかな部下たちに喝を入れた。


「無様なことに奴らは二人だけになったぞ。この私をぶった斬った借りを返してやれ!」


 古参メンバーの二人に対し、サブリンは山門を責め立てていた。


「この私を手放して敵にやるとはどういうことです!?」

「まあその結果、おまえたちをこうして呼んでやってるだろ。」

「それじゃあ、納得がいきません!だいたい、あなたはいつもいつも私にそうやって面倒なことは押し付けておいて自分がいいときだけ前に出てくるん・・・。」

「まあまあ、ケンカそこまでよ。山門、あなたの魔力はこちらで補充して確保しておくわ。まあ、そのためには相手を倒さなくてはならないけど。」


 山門とサブリンの間に暗闇魔法の最高魔法師・シャルルが割って入る。


「助かるよ、シャルル。それじゃあ、サブリンにももうひと仕事してもらわないとな。」

「嫌です!まだ納得いって、ませんから!」

「なら、退場してもらうだけだけど。」


 山門がサブリンを脅すと、サブリンは渋々この状況を受け入れた。すでに総司との戦闘が始まっていたため、サブリンは予測魔法を活用して、総司の攻撃を予告する役目をした。ほかの幹部たちはその情報をもとに攻撃する。総司にとっては完全にアウェイだった。


 その頃、私は遠くから山門を観察していた。予測魔法を発動させたままずっと赤い目を山門から離さなかった。そして、例の解析が終了し、今度は自分の意識下で魔法を詠唱し始めた。


「今は亡き、現世の息吹。」


 辺りがホタルのような光で溢れ始める。


「静かに眠りしその魂を。」


 光が輝きを増す。


「再び呼び覚まし、現界せよ!」


 やがて光たちが複数に集まり始める。


「リ・アライブ・コンネクション!!」


 集まった光から、みんなが帰ってきた。


「おかえり、みんな。ごめんね、私のせいで。」


 私の頬に涙が伝う。だけど、みんなはにこりと笑ってみせると、ゲートを開いた。そして、そこから現れたのは葵と敬助だった。これでプライマリー・戦闘部隊が再び揃った。やはりこのメンバーでなくちゃ、新時代は迎えられない。私たちは一致団結して、プライマリー頭首が1人で戦っている敵艦へと船を進めた。


 朝日が山から顔をのぞかせて、空が明るくなり始めていた。私たちの戦いはまだまだ続く。けれど、勝利の時は近い。夢と希望をのせて、私たちの船は進んで行く。眩しい新時代へと。


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