第一章52話 『2人の神と3人の王』
総司は低い声で言った。
「俺がおまえらになんか服従するとでも思ったか?すべては計画どおりだ。おまえたちは必ず死んだ俺を結衣たちと戦わせようとすることくらい分かるさ。だから、それを利用させてもらった。」
「全部計画通りだと!おまえが死んだのもそのためだったのか!?」
「ああそうだ、サブリン!まんまとおまえたちは俺の思惑にはまったっていうわけだよ。まあ、おまえ自体がここまでイカれた奴になるとまでは思っていなかったが。そのせいでプライマリーは残りわずかまでとなってしまった。もともと殺すつもりでいたが、ここまで酷いことをしてくれたなら、それ相応の罪として報復を受けてもらおう。おまえたち協会はここで滅ぶ!」
総司は指を鳴らすだけで、山門とサブリンをそれぞれ別の結界の中に閉じ込めた。そして、すでにその場から逃げていたシャルルをゲートを開いて引っ張り込む。
「もはや遺言すらも遺してやらん。くたばれ!」
総司は詠唱した。
「アステカの創造神テスカトリポカよ、悪魔と化し、あらゆるものを無へ還せ、リバース!!」
強力化された総司の魔法が放たれる。
「アクティベーション!あらゆるものを返せ!ミラーリング!」
シャルルは宙に舞っていたが冷静に魔法を展開させ、すぐに対処する。シャルルの前方に青紫の光の点が並び、そこから磁力を発して総司の魔法を受けとめて、そして、はね返した。はね返った黒い大きな塊はサブリンたちの結界を飲み込んだ。
「やったな?」
「ええ、あなたがすぐにそんなものを使ってくるから利用させてもらったわ。」
リバースによって、結界が溶け、二人が解放された。こうして、2人の神と3人の王が空を舞台にぶつかり合うことになった。
一方その頃、イギリス上空に浮かぶ世界魔法協会の地上では混戦していた。敬助と葵と二人で協会の多数の魔法使いたち相手に奮闘していた。魔力は昨夜の戦闘で擦り切れているため魔法はあまり使えていなかった。後方支援型の葵はともかく、剣術の稽古は怠らなかった敬助は今まで培ってきた技術と度量で立ち向かっていた。
「天然理心流!乱懸剣!」
「天然理心流!石火剣!」
「北辰一刀流!切り落とし!」
次々と剣技を披露し、敵を斬り倒す。飛んでくる魔法は葵が鞭で打ち消すか、華麗に避けていた。戦いが続く中、むこうから光と大きな衝撃と音が聞こえてきた。強力な魔力を含んだ衝撃波は、魔法使いたちを不快にさせた。何度もくるそれに次第に魔法使いたちは嫌になって逃げていった。残された二人はただそれを眺めて見てるだけになった。
最高魔法師の3人はそれぞれ目を閉じて魔法を詠唱し始めた。
「「「世界魔法協会に伝わる。」」」
3人がそれぞれ自分の系統魔力の色で魔粒子を充満し始める。
「「「魔法使いの頂点に立つ者。」」」
3人それぞれを中心に円柱状に魔力が広がる。
「「「それ即ち魔法の王である!」」」
3人は目を開き、それぞれの魔力の色に染まった瞳を総司と結衣に向ける。
「「「魔法を操り、術者を掌握し、我らの危機に手を下さん!」」」
「我の名を、予測魔法の王・サブリン!」
「私の名を、暗闇魔法の王・シャルル!」
「我が名を、生物魔法の王・織田山門!」
「「「ここに王の力を解放する!!!」」」
「「「キング・オブ・メイガス!!!」」」
幾重の魔力の層が3人の周りにできている。まるで銀河が3つあるかのように、魔力は彼らの周りを不特定方向に回っていた。
「さて、終わりにしよう。」
3人は周りの魔力を2人にぶつけ始めた。総司はそれを闇で薙ぎ払う。
「そんなわけのわからないものに触れるわけないだろ。結衣!行くぞ!」
結衣は首だけで返事をすると、総司に続いた。総司の魔力で王たちの魔力という名の結界を溶かし、王のふところに入り込む。そして、結衣が斬り込みに行く。はじめは暗闇魔法の王からだった。彼女は唯一、この3人のなかで剣を使っていない。それに、援助で魔法を使われると面倒だからと総司は考えた。しかし、一筋縄でらいかない。結衣の剣を魔力だけで受けとめて、そのまま指でつつくだけで結衣は後方へ飛ばされた。危うく周りの魔力に触れそうになったが翼をうまく使ってそれだけは回避した。その間に総司が王の相手をする。しかし、暗闇魔法どうしは相性が悪いらしくイーブンだった。そこで、結衣は総司の魔力に電流を流し、王に攻撃した。王は魔法でそれらを打ち消して回避する。そのうちに結衣は王の背後へ回りこみ、総司は王の気を引く。そして、電撃ビームを背後から食らわせた。動きを止めた王だったが、外周している魔力を使って二人を飲み込ませようとした。だが、二人は魔力を一度だけ放つだけでこれを回避した。そこに、王が詠唱を早々にすませようとしていた。総司は魔力をぶつけて黙らせてから、三段突きで王を討った。王の肉体は魔粒子となって総司の魔力へと変換された。
これで、二対二になった。