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エンドレス・マジカルライフ  作者: 沖田一文
【第一章・上】 魔法社会革命編
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第一章51話 『望まぬ戦い』

 そこにいるのは確かに総司だった。背が高めで顔かたちが整っていて、しゅんとした感じ。上手く言葉では表現できないが、私にとってはイケメン。いや、みんなから見てもイケメンだと思う。だって、私の婚約者なんだもん。かっこいいわけだよ。ただひとつ違うのは、服装がプライマリーの制服ではなく、協会の正装を着ていることだ。白い装束も似合うけど、やはりプライマリーの黒めの服が落ち着く。そんなことを考えながらも私の剣を握った手は、頭上の攻撃準備の態勢から力が抜け、剣を下につけていた。嬉しさや悔しさといった感情が入り混じり、困惑していた。


 そんな私のもとに、総司はゆっくりと歩み寄っていた。そして、総司は魔法を展開させた。あらわれた菊一文字を手にし、私を促す。


「結衣。構えろ!俺は今じゃお前の敵だ。倒すべき相手だ。さあ、来い!頭首としての強さを俺に見せてくれ!言っておくが手加減は無用だ。さあ、いつでもいい、おまえから来い!」


 涙が視界を遮る。何度泣いただろうか、どのくらい泣いたのだろうか。私は涙を拭って剣を構える。



 結衣は姿勢を低くし、総司のもとへ突っ込んで行った。


「天然理心流!三段突き!」


 これを総司は剣で受け流す。


「こんなんじゃ、まだまだだ!もっと本気でこい!」


 結衣を剣ごと吹き飛ばす。そして、総司は結衣が立ち上がるのを見守る。それから結衣が再び突っ込んでくるのを受け止めて返す。結衣の姿を見て総司は再び口を開いた。


「結衣、魔法を使え。どうせ俺は死んだ身だ。恐れずに来い。俺を楽しませてくれ。いいだろ、結衣。」


 優しく結衣に語りかける。結衣は小さく、分かったと返事をすると目を赤く光らせ、高速魔法を使って攻撃を始めた。総司はこれを目をつむって対応する。そしてさらに結衣に注文した。


「予測魔法を使ってまで俺に優しくしなくていい。いいか結衣、これはみんなのこれからがかかっている。これ以上は言えないが、とにかくお前には本気で戦ってもらわないと困るんだ。じゃないと俺が本気を出せないだろ。」


 それを聞いた結衣は攻撃を一度やめ、後退すると、総司に確認をした。


「本当にいいの?」


 総司が頷くと結衣は魔法を詠唱した。


「ローマの最高神ユーピテルよ」


 結衣のからだが浮き始める。


「天を操り、雷を起こせ」


 上空に雲が集まり、結衣の周りに風が吹きはじめ、辺りに電流がはしる。


「天使の羽を付与し」


 結衣の背中に天使の翼が現れ、


「我の願いのために」


 羽を羽ばたかせて天高く舞う。


「事象を支配せよ」


 結衣の剣が黄色く輝く。


「インペリアル・エンジェル・スカイ!」


 結衣は総司を見下ろす。総司は結衣を見上げてつぶやく。


「最上魔法か。ならばこちらも使わせてもらうか。」


 総司は剣を横に広げると、詠唱を始めた。


「ギリシアの冥府の神、ハーデースよ!」


 総司の菊一文字に黒いモヤが纏わり始める。


「富裕者も貧困者も受け入れ、」


 辺りに冷気が漂い、黒い霧がかかる。


「平等に慈悲を分け与えよ」


 総司の目が赤く光る。


「全人類の死後のために」


 総司の背中に黒くて赤い亀裂が走った禍々しい翼が生える。


「永遠の闇を支配せよ!」


 総司の刀・菊一文字が紅く輝き、闇を発し続ける。


「インペリアル・ダーク・アンダーワールド!」



 天と地が混ざり合い、この現象を支えきれず、空間が歪み始めた。二人はそんなことには気にせず、衝突を繰り返し始めた。結界はやがて亀裂が入り、割れて剥がれ始めた。その間に敬助と葵は結界を出る。そして、最高魔法師であるシャルルを探しにいった。というのもその場に居座ると何が起こるかわからないため、避難したのだ。やがて、結界がすべて破壊されると、二人の魔力現象は範囲を広げ、協会の領地を覆った。二人は、それぞれ操れる事象を使ってぶつかり合う。天地がひっくり返るところも現れ、雷雨が下から現れたり、横から現れたりと世界は渾沌へと向かった。二人が剣と剣とを合わせる様子を遠くから見ると、それはまるで天使と悪魔が戦っているかのようだった。総司は魔力が消耗してきたのをみて、周りのものを魔力へと変換し始めた。協会の建物がどんどん闇に包まれ、魔粒子となって総司のもとへいく。そのあいだもなお二人はぶつかり合っていた。


 そして、あたりの建物を壊し尽くした総司は魔力を大量に蓄え、攻撃をやめた。次の総司の狙いは最高魔法師の3人。総司は召喚された身であったため魔力は基本的に山門の魔力を供給してもらうことになる。しかし、総司が何か怪しい動きをすれば山門はすぐに総司を消してしまうだろう。そのため総司はまず、自分が存在していられるだけの魔力を確保するためにわざわざ本気で結衣と戦っているふりまでして魔力を消費し、それを補うためにという名目で魔力を集めたのだ。そして、そのことは何度もぶつかり合っていたときに結衣に話していた。神格化された二人は赤く光らせた目を山門とサブリンに向けた。




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