第一章48話 『死の旋律』
月が高く上がる前には協会に着く予定だった。しかし、予定より遅い。やはり、自分以外の誰かを運ぶために飛行し続けるのは難しかったのだろうか。私たちが日本を出て、もう3時間以上たっている。高速魔法ならひとっ飛びで済むのだが、そうでないと結構かかる。そう言えば、いつかの作戦も世界に転々と移動した部隊があった。あの時は、もしかして大石が1人ずつ運んだのだろうか。あのときのことを思い出したら、胸が痛くなった。深呼吸して気を落ち着かせる。私は先頭で一人、誰かに見られないように涙を一筋流した。風でそれはすぐに乾き、何事も無かったかのように振り向いた。そして、さらなる選択を決め、指示した。
「みんな!このままじゃ時間がかかりすぎる。だから、私と一緒に先陣をきってくれる人は各々集まってちょうだい!ほかの人は、ゆっくり休みながらきて、援軍として参戦してほしいの!」
私の依頼に応じてくれたのは、主に隊長たちだった。それならば隊長の代わりに副隊長にはここに残って指揮をとってもらおうと考え、副隊長たちはお戻りいただいた。一、二、六、七、八番隊の隊長と副頭首二人が協力してくれた。私は、援軍部隊の全体の指揮を三番隊隊長の佐倉梅に任せて、一度ドイツ支部で休むようにと指示した。それから、私たち隊長部隊は全力で飛び始めた。
「私は先に行ってるから、来れる人だけついてきて!」
私はそんな捨て台詞を言って、反論を言わせないためにすぐにスピードをあげた。いつものように葵がなにか叫んでいたが、今は速く協会に着くことが目的だ。あれから何時間も経っている。アーサーが1人で生き残っているとは、正直、思えない。だからこそ、はやくいかなければ。私はあれから30分とたたずに、協会へ着いた。世界魔法協会はイギリス付近の上空にある。これは魔法使いじゃないと見ることができない。そんな協会は今も点々と光を放っていた。そのなかに、さっきいた白亜の闘技場?があった。そこはなんだか厳粛な異様な雰囲気が漂っていた。私はそこへ向かった。
そしてそこには、ボロボロになったアーサーが中央でギロチンに拘束させられていた。なんとも言えない苛立ち、怒りがこみ上げてきて、私は中央へ突っ込んで行った。そして、剣を構えてそのギロチンごと破壊しようとした。しかし、その目前でギロチンの刃が落ちた。私は無意味にもギロチンの上部を切断する。それから、アーサーのむごい姿を見た。
そこで動きを止めている合間に、処刑台の周りに檻が生成された。ハッとして、私は檻を斬ろうとしたが、後ろに弾き飛ばされてしまった。
「やっと来たか。待ちくたびれたぞ。」
姿を現したのは、サブリンだった。そして、私が声を上げようとすると、サブリンは手をあげて、檻の周りにいた魔法使いたちに集中攻撃をさせた。私はフィールドをつくるが、数秒と持たずに破られ、まともに攻撃をくらった。熱かったり、冷たかったり、痺れたり、いろいろな感覚が滅多打ちにされる。サブリンが手を下げると攻撃は止んだ。だけど私は、そこで意識を失って倒れてしまった。