表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エンドレス・マジカルライフ  作者: 沖田一文
【第一章・上】 魔法社会革命編
4/158

第一章1話 『新天地』

 目をあけると、そこには白い天井があった。どうやらここは病院らしい。酸素マスクがつけられ、左手に点滴の針が刺さっていた。酸素マスクをはずして、体を起こした。辺りを見渡すと、左には大きな窓があり、高い建物が並んでいるのが見えた。ここも高いところに位置しているようで、十分に景色を見渡せそうだった。

 ここはどこなのだろうと、あの日の夜の記憶が思い浮かぶ。あれは夢だったと思いたいその記憶は私をつらくさせた。いろんな思いにふけっていると、背後から足音が聞こえた。


「青山!」


 振り返りながら、声をかけた。でも、望んでいた人はそこにはいなく、白衣を着たナースがいた。咄嗟に目をそらす。それでも、恥ずかしさで顔は熱かった。ナースは、少し驚いていたが、すぐに笑顔で尋ねてきた。。


「気分はいかがですか?あなたは東京に来る船に運よくみつかり、この病院に運ばれてきたんですよ。それから、約一か月ほど昏睡状態でした。あと、身元の確認ができなかったので、いろいろと質問させていただきますね。」


 これにうなづくと質問が始まった。


「では、お名前を教えてください。」


 まっすぐこちらに視線を向けてくる。私は目をまた逸らして答える。


「神城···結衣。」

「漢字はどう書くかわかる?」


 と、子ども扱いされたが、このくらいは島にいたころから客人によくされていたので慣れていた。漢字を教えると次の質問がきた。


「じゃあ、今、いくつ?」


 13歳っと答えると、驚かれてしまった。そのことに疑いをもったのか、もう一度聞かれた。


「本当は何歳?」


 少しむっとしてもういちど答えると信じてもらえず、次の質問が来た。


「誕生日を教えてちょうだい。」

「2040年4月12日、13歳。」


 年齢も付け加えて答えた。


「じゃあ、もう誕生日はすぎちゃったね。今は2054年5月28日だから14歳だね。」


 そのことを聞いて少し残念な気持ちになった。去年の誕生日パーティーのことを思い出してしまった。みんなからプレゼントをもらってとてもうれしかった。それなのに、私は…。私は、あんこを、メロディを、奏を、心愛を、そして、青山やお父さんまでもこの手で殺してしまった。もう元には戻れない。私は人殺しなのだから。私は、私はどうすれば―


「どうしたの?大丈夫?いったん休もうか?」


 ナースが気にかけて声をかけてきた。私は、首を横に振り続けるようにいった。


「あまり無理しないでね。具合悪いときはいつでも言ってね。じゃあ、住所ってわかる?」


 ・・・住所?困ったことに住所を答えることはできない。だってこの国に私の家などない、ましては、もう私の家なんてない、母国ですらもない。では、いったいどう答えればいいのか、まったくわからなかった。


「わからないならしかたないよね。ごめんね。次の質問よ。ご両親の名前は?」


 これは答えていいかわからなかったが、とりあえず答え、母親はすでに幼いころに他界していると説明した。


「ああそうだ。住所がわからなくても中学校の名前はわかるよね?」


 なんということだ。そんなことを聞かれても答えられるはずがない。忘れちゃったっとこたえると怪しまれたが、見逃してくれた。しかし、このままではいずれ私がこの国の人ではないとバレてしまう。面倒なことになる前に終わらせておくべきだろう。


「あの…。そろそろ寝たいんですけど。」

「ああ、そうだね。意識が戻ったばかりで疲れちゃったね。ごめんね。じゃあ、続きは明日しましょう。」


 私はベッドに横になると、ナースが布団をかけてくれた。


「おやすみなさい。また明日ね。」


 といって、病室を出て行った。

 また明日もこれが続いてはまずい。どうにかしなければ。何かいい方法がないかと模索しているといつの間にか寝てしまっていた。


 気が付くと夜になっていた。窓から満月の光が差し込んでいる。


 そうだ、今のうちにここから出よう。


 私には魔法というものがある。見つからないように静かに起きて、窓際に立つ。点滴が邪魔だったので針を思い切って抜いた。当然、痛くて、血が飛び散ったが構わない。窓を静かに開けると詠唱した。


「アクティベーション。」


 右手を前に出すと赤い光がひかり、剣が現れ、着ていたパジャマもあの日の夜と同じ格好のTシャツにパーカーをはおり、スカートという姿に変わった。この剣でみんなを斬ってきたと思うと胸が苦しくなるが、それを押しとどめて、手を前にかざして再び詠唱した


「フロート!」


 すると、足元に赤い大きな魔法陣が私を囲むようにして現れた。強く念じると私ごと宙に浮いた。そして、窓をでると浮上し、高い建物の上に一度降りた。街の景色が一望できた。


 夜なのに街中電気がついていて明るくきれいだった。建物の上は高すぎるせいか少し風が強く寒かった。この国は、私のいた国よりもはるかに栄えているようだ。見た感じ、このような高い建物を建てるだけにも高度な技術が必要そうだ。まずはこの国について詳しく知る必要がある。今日、ナースと交わした言葉は日本語だった。ということは私たちの国と同じような日本にゆかりのある国かもしれない。あるいは、日本そのものか。そういえば、ナースと話したときに東京って言ってた。東京はたしか日本の首都だったような・・・。


 とりあえず今日の逃げ場を見つけなくては。お金もないので野宿をするしかない。人にみつからないようなところがいいけど、こんな街中にあるのだろうか。とりあえず、山でも探してそこにある洞穴あたりにでも見つけて休もう。


 私は再び空を飛び、山を探した。少し飛んだだけでは風景はあまり変わらなく街が続いた。しばらくすると、緑の多いところがみえた。あれは間違いなく山だ。山に下り、休めるところを探す。しかし、なかなかみつからない。だから、思い切って魔法で岩壁を壊してみた。手を前に出すと、自然と言葉が出てくる。


「火の神ウルカヌスよ わが身に力を貸したまえ 障害を燃やし尽くせ エクスプロード!」


 ものすごく大きな轟音を立て、壁に大きな穴をあけた。やりすぎたけど、居場所ができただけでもほっとした。魔法を解除して剣を収め、中に入ると、壁にもたれて座り、そのまま寝入った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ