第一章35話 『最強剣士現る!』
このゲリラ戦、こちら側に明らかに不利であった。だから、もしかして負けるのではないかと内心ではそう思っていた。だからおれは、結衣たちを避難させようとした。しかし、結果はそうならなかった。結衣たちも結局は戦いに参加し、結衣は深手を負ってしまった。これは俺の責任だ。俺が結衣を守ってやれなかった。だからこそ俺はこの戦いでケリをつけようと思った。協会を完全に消滅させてやる、と。例えどんなに不利であろうとやってやる。俺は、剣を突きの構えで構えた。
「京の都を駆け巡る、蒼い狼たち。
その布を黒に染め、強者を示せ!
一に、瞑想。二に、俊敏。三に、剣術。
天然理心流!無明三段突き!!」
俺は、目にも見えない高速魔法のような速さで山門へと駆ける。山門の顔を見ると、にやっとするのが見えた。俺はそのまま連続で突く。しかし、山門は周知していたかのよのように三つとも刀で受け流した。
「総司!おまえがその技を使うのは分かっていた。分かっていて対策をしていない事なんてなかろう。そんな愚かなお前に最高の相手を紹介しよう。」
山門はライフル・バックである人物を登場させた。出てきた彼は、浅葱色の衣を纏い、腰に刀を刺している。
「紹介しよう、彼が新撰組一番隊隊長、沖田総司だ。」
山門は総司の曇った顔を見て、笑みを浮かべる。
「ふん。なるほどここでオリジナルを倒して、強さを証明すればいいんだな。」
「まあ、できるはずはないがな。例え魔法を使おうとも沖田には勝てないだろう。」
「いいから黙ってろ。今、師を超えてみせる。邪魔はするなよ。」
「ああ、存分にご見物させていただくよ。」
山門は近くの木の幹に寄りかかった。沖田は、状況があまり掴めていないようだった。
「あの人を倒せばいいのですか。どうやらぼくは勝手に師と敬われているようですが、そんなたいしたものではないですよ。でもまあ、あなたが強さを求めてぼくの真似事をしたのなら、ぼくに恥じぬようにその技を見せてください。ようやく、存分に遊べそうな人が現れたので、楽しませていただきましょう。」
沖田は刀・加州清光を抜き、構える。それを見て総司は、疑問に思ったことを問い出した。
「その刀は本物か?」
「さあ、ここにいるぼくが本物であるなら本物だろうし、偽物だったら偽物だろうね。ちなみにぼくの刀は加州清光だよ。あなたのは、一文字みたいだね。まあ、それは魔法とやらでできた贋作か。話が逸れたね。始めようか。いつでもどうぞ。」
ここで魔法を使うのはある意味自殺行為かもしれない。魔法を唱えているあいだに殺されてしまうだろう。正真正銘の真剣勝負ってところか。
総司は、一息吐いてから、動き出した。
「遅い!」
沖田は、総司の刀をすり抜け、総司の左肩を刀で突いた。苦を浮かばせながらも総司は次の行動をとる。しかし、沖田は刀ではなく、柔術で総司を一本投げした。きょとんとした総司を見下ろして、沖田は言う。
「とんだ的外れだよ。まさかこんなに弱いなんて、本当にぼくの真似をしてきたの?これじゃあ、素人同然じゃないか。今までどうやって生き抜いてきたか不思議なくらいだね。」
「ハハハ。聞いたか総司。おまえはどうやら雑魚のようだな。もう分かっただろう。沖田、終わらせてやれ!」
山門が沖田に命令した。
「さあ、立ってよ。最後くらいちゃんとしてよ。ぼくの得意技で決めてあげるから。なんなら、これで勝敗を決めてもいいよ。」
総司は立ち上がり、刀を構えた。
「ふん。圧倒的過ぎて怒りすら冷めてしまった。ここは師匠に甘えさせてもらおう。」
「じゃあ、やろうか。ぼくは何も言わなくてもすぐにできるから、どうぞお先に。」
「京の都を駆け巡る、蒼い狼たち。
その布を黒に染め、強者を示せ!
一に、瞑想。二に、俊敏。三に、剣術。
天然理心流!無明三段突き!!」
総司が詠唱を終えるとともに二人は素早く駆け出した。
沖田さんかっこいいです。尊敬しています。まさに私の師匠です。次回は、大石編になると思います。