第一章29話 『プライマリー本部 これがトップクラスの実力!』
風で髪がなびく。そこには、風の音と旗がはためく音しか聞こえなかった。総司が敵の大軍の中央で向き合うと、私たちもそれに倣って、総司の横に並んだ。総司の右側に私が、左側に大石が並ぶ。それから、三笠葵とその二番隊が私の横に、一番隊は大石の隣に、そして、頭首直轄部隊は、半々に別れて、左右対称になるように並んだ。それから、少し間を置いてから、頭首・総司が敵将・織田山門からの問いに答えた。
「このとおり、俺たちはこの場に残って戦う。俺たちの居場所は俺たちで守る!そして、各地で戦っている仲間たちが帰る場所を守る!何がなんでも、ここは譲らない!さあ、来るなら来いよ!全力で相手してやる!」
山門は、総司の言葉を聞いて、少し口元を緩めて、叫んだ。
「それでこそおまえだ!さあ、この大軍を全て止めて、その屋敷を守ってみろ!全軍に告ぐ!敵及び、敵のアジトを木っ端微塵にせよ!!」
馬に乗った戦国武将たちを先頭に大軍が押し寄せてきた。
「大石、少しの間、頼む。」
「了解。総司も飛ばすんなら俺もぶっ飛ばすか。」
「結衣!俺たちであの大軍を消すぞ。」
総司の言葉に頷いて答える。すると、大石が先に魔法を唱えていた。
「時間の神、クロノスよ!
時を止め、我が時を速め、
時間を支配せよ、
タイム・ルーラー!」
大石が魔法を唱え終えると、敵軍はピタリと止まった。それだけでなく、私と大石以外の人や物は全て止まっている。大石がチラリとこっちを見て、声を上げた。
「おまえ、なぜ動ける!?」
普段は冷静な大石が凄く動揺していた。私は、わからないっと思わず笑って答えてしまった。大石は、前に向き直しながら
「まあ、いい。そこで見てろ。俺の攻撃を見れるのは幸運だからな。」
といってから、再び詠唱を始めた。
「ギリシア神話の神、クロノスよ!
全宇宙を統べ、神々の王に君臨し、
万物を切り裂くアダマスの鎌で、
憎き汝の末子、ゼウスの民を切り落とせ!
アダマンティン・ゴッド・スウェイヤー!!」
大石の和泉守兼定が巨大な死神が持っているような鎌に変わった。
「さあ、狩りを始めようか。」
大石は、左端の列から順に鎌で狩り取っていく。切り刻まれて、吹き飛んだ兵は空中で静止し、空中は、見ていられない光景へと変わった。目を伏せていると、大石は右端のほうも狩り取り終えたようだった。
「このくらいでいいだろう。ん、これはまだ刺激が強すぎたな。悪い。今、楽にしてやる。」
大石が、私の姿勢を見て言うと、指を鳴らし、世界を再び動かした。その途端に、切り吹き飛ばされた兵たちが粒子となって一斉に消えていった。
それから、私は、急いで総司に遅れないように、総司に合わせて詠唱を始めた。
「アステカの創造神テスカトリポカよ!」
総司と、一緒に手を上げると、私と総司の上空に黒い魔粒子が集まり始める。
「悪魔と化し、あらゆるものを無へ還せ!」
二人分の魔力を帯びた黒い塊は、どんどん膨れ上がる。その間に、敵はすぐ目の前まで攻め込んできていた。でも、最後の一言の方が速い。
「リバース!!」
総司と一緒に手を前に差し出す。すると、巨大な黒い魔力の塊は、迫る敵、信長をも飲み込んでいった。全ての敵を飲み込んだ塊は、辺りに衝撃波を放出して、消えていった。
運良くと言えばいいだろうか、敵将・山門だけは生き残っていた。山門は、大声で笑っていた。仲間を全て一度に失って、気がおかしくなったのだろうか。私は、その様子が不気味に思えた。総司はそんな山門に声をかける。
「まだ、やるのか?もう、おまえの負けは決まったようなものだが。」
山門が、ギョロリと総司を一瞥して答えた。
「そうだな。今回のことは俺の負けだ。一旦ここで退くとしよう。次は負けない。じゃあな。」
そんな捨て台詞をいって、山門は、一瞬で姿を消した。大石が総司に
「どうする?追いかけるか?」
総司は、いや、いいと答え、ここでの戦闘は終了した。
「さあて、それじゃあ俺たちは帰ってくる仲間を待つとしよう。」
みんなが屋敷へ向かい出す。私も行こうと歩みを進めようとした。―なんだか、凄く眠いような気がする―視界が歪み、クラクラして、瞼が重くなる。少し呼吸も速くなっていた。―もう、限界。どうなってもいいや、このまま寝て―そこで私の意識は途切れた。
総司は、ふらふらとしていた私の姿を見て、倒れるところを受け止めた。
「おい!どうした?起きろ!…寝ているのか?」
葵が駆けつけて、私の呼吸を確認する。
スー、スーっと静かに息をたてて眠っていた、らしい。
「寝てるだけか。良かった。」
総司が、安堵の声を上げると、葵がつっこむ。
「何言ってんの!戦ってすぐに倒れるくらい結衣ちゃんは頑張っていたんだよ。少しはあんたが支えてあげなさい!」
「ん、ああ。分かってる。」
頼りない返事をした総司は、葵になんだかんだ言われながらも、私をお姫様抱っこして、屋敷へと戻った。
これで、私の第2陣は終わった。この戦いに名前をつけるなら、『プライマリー本部の攻防戦』とでも名付けよう。




