第一章23話 『マーシャル諸島海戦 大石歳忠VS.シャルンホルスト』
残った戦艦・ビスマルクの甲板に最高魔法師のシャルンホルストが立っている。それに対して、大石は、上空で剣を抜かずに見下ろしていた。
「さあどうする?お前と俺が釣り合うと思うか?答えは否だ。死にたくないなら、降参するのは今だぞ。」
シャルンホルストが皮肉めいた口調で大石に話しかける。大石は、鼻で笑いながら答える。
「それじゃあ、お前の言うその強さを見せてみろ。高速魔法の最高魔法師とて、俺の速さは世界一だ。どちらが真の高速魔法の最高魔法師か、これで決着をつけようぜ。」
大石は、そう言って、いつでも抜刀できるように姿勢を低くして構える。
「後悔しても知らないからな。まあ、始めからお前たち、テロリストどもに慈悲などかけるつもりもなかったがな。いいだろう。最高魔法師の実力、その身で知るがいい!アクティベーション!」
シャルンホルストが魔法を展開し、剣・バルムンクを手に取った。バルムンクは、黄金の柄をして、宝石がはめられている幅広い剣だ。
大石も抜刀しながら、魔法を展開させる。
「アクティベーション!先手必勝、さっさと決めさせてもらう。」
目に見えない速さでシャルンホルストのもとへ行く。
シャルンホルストは、これを軽く剣で弾く。それから、剣を縦に構えて魔法を唱える。
「北欧神話の雷神・トールよ、
我に汝の如く巨人を退く、
いかづちを享受せよ、
トールハンマー!」
バルムンクから、電流が流れ始める。バチバチと音を立てたバルムンクを大石目がけて放つと、光の如く素早く大石のもとへ向かう。大石は、これを刀で弾き飛ばすと、言い放った。
「このくらいの速さで俺を仕留められるとでも思ったのか?さっさと向かって・・・!」
大石が話している間にシャルンホルストが大石のもとへ瞬間移動をする。それから、いまだに電流を帯びたバルムンクで大石をぶっ飛ばす。大石は、吹き飛ばされながらも、体勢を安定させて、空気を蹴った。
「そんな感じだ。俺に一発食らわせたお礼だ。」
大石の刀がシャルンホルストに直撃する。だが、感触がおかしかった。寸前のところでかわされたらしい。頬に傷をつけた程度だった。シャルンホルストは、そのまま瞬間移動し、間合いをとると、遠方から轟音が聞こえてきた。
どうやら、十番隊の奴らは目的を達成したようだ。衝撃波が二人を襲う。
その間、両者は何も攻撃を仕掛けることが出来なかった。衝撃波が終わり、辺りに平穏が訪れると、シャルンホルストが言う。
「さて、そろそろ最高級の魔法を見せてやろう。神の御業を見るが良い!」
シャルンホルストは、少し上空に上がると、バルムンクを上に掲げて詠唱を始める。
「ローマの最高神ユーピテルよ!」
バルムンクが眩く光り始める。
「天を操り、雷を起こせ」
上空に雲が集まり、シャルンホルストの周りに風が吹きはじめ、辺りに電流がはしる。
「天使の羽を付与し」
シャルンホルストの背中に天使の翼が現れ、
「我の願いのために」
羽を羽ばたかせて天高く舞う。
「事象を支配せよ!」
バルムンクの刀身が伸びて、光の剣のようになる。
「インペリアル・エンジェル・スカイ!!」
その瞬間、シャルンホルストは、気象を操り、雷雨、風が大石を襲う。大石は、落雷から逃れながら、シャルンホルストの動きを見る。
あれが総司のいっていたやつか。結衣が特訓の時に、佐助に使って大変だったと聞く。これはかなり厄介だな。さすがに俺も魔法を使わないではいられないな。
大石は、移動しながら魔法を唱える。
「鬼神・経津主神よ、
神を斬殺し、刀剣の威力を見せつけよ!
鬼の副長の刀・和泉守兼定!」
大石の刀・和泉守兼定が赤黒いオーラを放ち始める。そして、大石は何も無い空中を刀で斬る。すると、雨風が止み、落雷を止まった。
「この俺と和泉守兼定がいれば、斬れないものはない!何であろうが切り刻む。さあ、終わりだ。」
その言葉を聞いて、シャルンホルストは動く。瞬間移動を繰り返し、大石を斬りに行く。しかし、大石は、余裕の表情で空中を斬る。そして、ついにシャルンホルストの動きが止まった。それは、空間ごと切り離され、移動することができなくなったためである。シャルンホルストが大石を見ると、身体が震え出して、何も出来なくなった。大石が鬼の眼差しを向けて、恐怖に身を包まれたからである。大石は、刀を上げ、振り下ろす。シャルンホルストの身体は、声を上げることもなく、真っ二つに割れ、血が噴き出した。大石が刀を鞘に収めると、空間が元に戻り、シャルンホルストは、海へと落ちていった。
「俺の勝ちだ。」
大石はシャルンホルストの死を確認するためにじっと海面を見つめていると、原田武蔵たちの姿がみえた。
「大石さん、シャルンホルストは?」
元気よく原田は質問してきた。大石は、静かに言う。
「死んだだろう。だが、ビスマルクがどっかに行った。たぶん、金剛のところだろうな。援軍に行くぞ。」
「はい!」
十番隊のみんなは元気よく返事をして、大石がさっさと行ってしまった方向へと急いだ。
大石が、空を突き進むと、前方に艦隊が見えた。あれは明らかにビスマルクを含めた艦隊だ。その奥に金剛たち、四番隊の人たちが見えた。大石は刀を抜くと、静かに戦艦・テキサスに乗り込む。それから、あっという間に艦内の船員を斬り殺し、戦艦の操縦権を握った。無線による相手の作戦を見抜こうとしたが、船長とやらがこの事態を報告した後らしい。通信が切られ、あちらから砲弾が飛んでき始めた。十番隊が来たら、これを使わせようと思ったが、直接、あちらに乗り込んで殺したほうが速そうだ。大石は、戦艦・テキサスを出て、戦艦・ウィコンシンに移ると、同じように一瞬で片付け、戦艦を奪う。それから、また、移り、戦艦・ニュージャージーも奪った。そんな頃に、ようやく十番隊が到着し、大石は、四番隊と十番隊に指示を出す。戦艦・ニュージャージーには四番隊が、戦艦・テキサスには十番隊が、そして、戦艦・ウィコンシンには、大石自身が乗り込み、プライマリーによる艦隊が編成された。旗艦・ウィコンシンを中央に、敵艦隊へと進める。それから、戦艦と戦艦による艦射砲撃戦が行われた。もちろん大石一人だけが乗っている戦艦・ウィコンシンは、撃つことができないので的を拡散させだけだ。5VS.3の攻防が続く中、後ろから艦隊が姿を現した。それは、日本から出航した在日米軍の空母・ロナルド・レーガンと第5空母打撃群直属ミサイル巡洋艦隊だった。全部で12隻ある。これで、17VS.3というかなりの劣勢になった。
「時間がないっていうのに、うじゃうじゃと出てくるな。」
大石がつぶやく。それから、新たに指示を出す。
「俺が後ろの艦隊をやる!お前たちは、今の戦艦5隻を沈めとけ!」
そう言って、大石は、戦艦・ウィコンシンの舵をとり、旋回して、空母打撃群直属ミサイル巡洋艦隊を真正面にとった。背後では、砲撃の音が止まない。
大石が甲板に立つと、いきなりミサイルによる一斉攻撃がきた。大石は、抜刀して、唱える。
「アクティベーション!
鬼神・経津主神よ、
神を斬殺し、刀剣の威力を見せつけよ!
鬼の副長の刀・和泉守兼定!」
再び赤黒いオーラを放ち始めた兼定。それを持って、横一文字、縦、斜めと無作為に斬撃波を出し、ミサイルを破壊する。煙で辺りが確認できないなか、上空にモーター音が聴こえた。空母から出撃した戦闘機だろう。大石は、ひとっ飛びして、これらを撃墜させる。それも器用に敵戦艦に落として、丸ごと沈没させる。これによって、戦況は、15VS.3。まだまだだ。大石は、抜け殻になった戦艦・ウィコンシンに向けて発射されたミサイルを見て、戻る。ミサイルを迎撃し、今度はミサイル巡洋艦へと乗り込みに行った。一隻を制圧すると、装填してあったミサイルを敵ミサイル巡洋艦に発射する。しかし、これはミサイル駆逐艦によって撃墜させられて、当たらなかった。大石は、乗っ取ったミサイル巡洋艦を敵空母に向けて全速力で進水させてから、ウィコンシンへと戻った。ミサイル巡洋艦は、他のミサイル巡洋艦によって攻撃を受けたが、破壊されても尚、進み続けて、敵空母の艦首へと突っ込んだ。その間に大石は、ミサイル駆逐艦へと潜入し、再び乗っ取ると、同じように駆逐艦を空母に向けて発射させた。今度は、駆逐艦ということあって、とても速くてミサイルの迎撃が間に合わなかった。そのまま空母中央に激突した。内部で爆発があったようで、兵士たちが、空母から脱出していた。戦闘機を使って逃げ帰るものもいれば、脱出ボートに乗って逃げるものもいた。これで12VS.3。
これでは、時間だけが過ぎてしまう。そう考えた大石は、背後のアメリカ戦艦の5隻をさきに沈める必要があると判断した。大石は、再び旋回して、砲塔をひととおり敵戦艦に向けると、高速魔法を使って、一斉射撃した。よくよく敵戦艦を見てみると、あらゆるところが損傷していた。
これは、すぐに終わらせそうだ。その代わり、味方艦もかなり損傷していた。それはそれでちょうどいい。先程と同様に戦艦ごとつっこませてしまえばいい。戦艦・ウィコンシンを戦闘範囲の外側を旋回させておき、大石は、砲弾の雨のなか、各隊に指示を出しに行く。再びウィコンシンに戻ると、何度か射撃を繰り返し、相手を引きつける。そして、作戦は決行され、戦艦・テキサスは、うまい具合に戦艦・ミズーリと戦艦・ニューヨーク2隻を巻き込み、大破。戦艦・ニュージャージーは、戦艦・アイオワとともに大破。どの艦も航行不能だった。これで8VS.3。
残る戦艦はただ一つ。戦艦・ビスマルクだ。ちなみに、在日米軍の艦隊は、生存者、死者ともに回収し、撤退を始めたようだった。
俺は手っ取り早く、この艦で相手を沈めようと思ったが、この状況では当たりに行くのが難しい。ならば、正々堂々と撃ち合おうではないか。俺は、甲板に四番隊と十番隊を集め、それぞれの位置に配した。操縦は俺で、攻撃は各隊がやってくれる。俺は、とにかく撃ちまくれ、とだけ指示した。そして、ついに一対一での砲撃戦が始まった。相手の手慣れた海兵隊員たちと比べてこっちは素人だが、こちらは魔法が使える。俺たちは戦艦自体にフィールドを張って防御をあげ、それぞれの魔法で戦艦の最大限の能力を上げた。だから、戦いもすぐに終わりを迎えた。敵戦艦・ビスマルクは、艦中央部から真っ二つに割れて沈んでいった。我々の勝利だ。
俺たちは、役割を終えた戦艦・ウィコンシンを沈め、それぞれ総司に指示された場所へと向かった。
この戦いにより、高速魔法の最高魔法師、シャルンホルストが亡くなり、多くの海兵隊員が亡くなった。それに加え、ドイツやアメリカは優秀な艦艇を失ってしまった。それに対して、プライマリー側は、被害なしだ。これは、世界に衝撃を与えた。




