第一章21話 『ドイツ支部 六番隊隊長・長門佐助VS.最高魔法師・サブリン』
俺たちが応援に駆けつけたころにはもうすでにドイツ支部は包囲されていた。俺たち、六番隊はすぐに屋敷の外に出て、戦闘を開始した。この状態を打破するための方法をドイツ支部の長である、五番隊隊長・ヴォルフが出すまでは、俺たちと、ヴォルフの部隊が戦いを引き受けていた。屋敷の表は、六番隊が、裏は、五番隊が対応していた。しかし、数が圧倒的に足りていない。みんな必死になって戦っていた。俺たちは、美桜のバックアップもあって、負傷者を出さずに耐えることができた。
正面玄関から三番隊・佐倉梅たちが出てきた。どうやら、方針が定まったみたいだ。そんなところに、敵将のサブリンが進んでいくのが見えた。俺を放っておいて、小さい子に先に手を出そうとするなど、それでも誇り高き英国騎士なのか。俺は、戦いながらも声を上げる。
「おい!まてぇぇぇ!」
しかし、サブリンたちは止まる気がない。それから、ついに剣を抜いた。そしてから、脅すように佐倉梅に話しかけている。こちらの敵がよそ見ばかりするなと言わんばかりにしつこく攻撃してくる。すきがないから、魔法も使えない。まさに正々堂々と剣と刀による一騎打ちだ。しかたなく、俺はこちらの相手に集中する。刀は剣に比べて、細く折れやすいので、剣とやりあうにはうまく衝撃を逃がさないといけない。そして、力任せに攻撃を仕掛けたとしても、剣で防がれてしまうと、こちらの刀が簡単に折れてしまうのだ。しかし、欠点ばかりがあるわけではない。刀身が細い分、すばやく動くことができる。しかも、細かい動きができる。そうした技術をもとに俺たちは騎士たちと戦っていた。
一見、終わりのなさそうな戦いに契機はきた。佐倉梅による魔法で俺たちはようやくしつこい名もなき騎士たちとの戦いから逃れることができた。俺はすぐにサブリンのもとへ走る。
「これでようやくあんたと戦える。」
これが、俺とサブリンとの戦闘開始の合図となった。俺たちは、互いに剣と刀でぶつかりあう。
「できれば、あなたとだけは戦いたくなかったです。」
俺たちは、戦いながらも話を始める。
「それは、俺には勝てないっと見込んでいるからなのか。」
「そんなことではない!ただ、あなたと戦えば、私たちの作戦が少しずれてしまうのですよ。」
「それは、良かった。」
「ちっとも嬉しくありません。というわけで、ここから、本気でやらせていただきます。」
サブリンの動きがとまる。俺もそれにあわせて、足を止める。
「じゃあ、魔法をようやく使えるんだな。」
「ええ、そうです。どうぞ、ご満足のいくようにお使いください。」
「なら、お言葉に甘えて。」
そうして、俺は構えの姿勢をとる。呼吸を整えてから、詠唱する。
「雷光の如く、さきばしれ、電光剣!」
黄色く輝く魔粒子のプラズマをたて、すばやく、サブリンの喉元へと斬りかかる。サブリンは、瞳を赤く輝かせながら、笑うと、それを華麗によけた。
「あなたはたしか、物理魔法の使い手だったと存じていましたが、まるで高速魔法の使い手でもあるように見えます。しかし、この私の前では速さなど無意味です。予測魔法の頂点に立つ私がそのような技を避けられないとでもお思いになられたのですか。」
この一連の出来事に俺は、思わず笑みを浮かべる。まさかここで、副頭首・神城結衣との特訓の成果を使うことになろうとは。そして、神城結衣がどれだけ貴重で、恐ろしい存在なのか、はっきりとわかった。最高魔法師と同等レベルの魔法を使え、あらゆる魔法を操ることができ、他人の魔法までもコピーすることができるとは、彼女の敵ではなくてよかったと、俺でも思う。俺は、ずっとその彼女の婚約者であり、プライマリーの頭首である総司にどこまでもついていこうと改めて強く思った。思わざるを得なかった。
さて、結衣と戦ったときは、たとえ、攻撃を予測されていても、かわすことのできなかった技がある。あのときの結衣がまだまだ、未熟だっただけかもしれないが、やってみる価値はある。そして、何よりもその技は俺の得意技だ。
俺は、播州住手柄山氏繁に魔粒子を集め、下段に刀を構える。魔力が充填し、プラズマが放ち始める。
「じゃあ、次の攻撃はよけきれるか、試してみようぜ。」
「ああ、気が済むまでやるといい、私はそれまであなたを無力化することをしない。」
俺は、詠唱を始めた。
「中国の四海を司る竜王よ
雷鳴をならし
天空を切り裂け
龍飛剣!」
俺は、一気に距離をつめ、サブリンの剣をめがけて、刀を上にやる。サブリンは、予測していたこともあり、これに応じようとしてきたが、俺の速さには勝てない。俺の刀がサブリンの剣を吹き飛ばした。それから、空いた金ぴかに輝く鎧めがけて、おもいっきり、刀を振り下ろした。サブリンの鎧は電撃で一部が溶け、皮膚に傷をつけ、それから、サブリンは、後方へと吹き飛ばされた。
まさかこの私がここまでやられるとは、予測にないことだ。これは、かなりやばいことだ。私の予測を超えることはあってはならない。それは、世界の秩序も大きく乱すことになる。多少、荒っぽくなってしまうが、彼らは、世界の転覆を企む大罪人だ。問題などない。むしろ、いなくなってもらった方が好都合だろう。
私は麻痺して動かない体を、内側からにじみでる狂気というもので麻痺を吹き飛ばし、立ち上がって歩を進める。それから、落ちていた剣を拾い上げ、こちら見つめていた男に差し向ける。
「さて、戯れはここまでだ。今から私はあなたたちの運命を絶対的なものに変える。その事実を、その運命を受け止めるがいい。」
サブリンはこちらから見ても、おかしな雰囲気だった。なにか嫌な予感がする。予測魔法の使い手じゃなくてもわかる。
サブリンは騎士の構えをとって、詠唱を始めた。彼の周りには、異常に魔粒子が大量に集まっていた。