第一章15話 『帰還』
戦闘から帰ってきた後、それぞれ救護班の手当てや検査を受けて、ドイツ、アメリカ支部の幹部たちも合流したところで幹部会議が行われた。今回の作戦の結果と今後の方針をどうするかについて話し合われた。ドイツ、アメリカ支部もターゲットである最高魔法師を倒せなかったが、相手の戦力を削ぐことはできたとはいえ、最高魔法師を倒さないと、現状はあまり変わらない。そして、私たちの目的も達成することはできない。室内に沈黙が流れだした。そんななか、沈黙を破るように部屋に飛び込んできた者がいた。
「大変です!」
鬼の形相で大石が男を睨む。男が萎縮するのをみて、総司が静かに返事をする。
「なんだ?いいから言ってみろ。」
「はい。たった今、世界魔法協会から宣戦布告のメッセージを受けとりました。」
怪訝そうな顔をした総司は
「宣戦布告!?そんなの出さなくてももう戦争は始まってるだろ。」
「そして、皆さんこちらをご覧ください。」
男が指さした方向の壁の上からスクリーンが降りてきた。男は持っている端末で操作すると映像が流れだした。
「こちらは、世界魔法協会、高速魔法の最高魔法師、シャルンホルスト。彼が戦闘の場所を指定してきました。」
スクリーンのなかの偉そうな男が話しだす。
「テロリストの諸君!我々世界魔法協会は宣戦布告をする。一週間後、太平洋にて会いまみえよう。この私が直々に出向いてやる。協会に歯向かうおまえたちの未来はない。恐怖をあじわうがいい!」
そういって、映像が途切れた。
「さらに、ドイツ海軍の艦隊がキール軍港から進水をはじめた模様です。通信傍受によると、ドイツ海軍はパナマ運河経由で太平洋に進出、その後、アメリカ本土のアメリカ海軍の艦隊と合流し、連合軍を組んで太平洋、マーシャル諸島付近に布陣する模様。」
それを聞いて幹部たちは苦い顔をする。総司は頭首らしく、話を進めた。
「情報部隊は引き続き、ドイツ・アメリカ連合軍の監視とドイツ、イギリス、フランス、アメリカ軍それぞれの動きを探っといてくれ。」
「わかりました。私はこれで失礼します。」
男は礼をして部屋から出ていった。俺は早速指示を出しはじめた。
「おそらく、やつらは一斉攻撃を仕掛けてくるはずだ。俺たちがやりたかったが人数が少なくてできなかったやつだ。必ず、ドイツ、アメリカ、ここを同時に攻めてくるはずだ。太平洋は単なる陽動にすぎん。まずは、ドイツ、アメリカ支部は引き続き、五番隊隊長・ヴォルフ、七番隊隊長・アーサーの部隊を中心に行動してくれ。だが、それだけでは人手が圧倒的に足りないだろう。」
総司は考えはじめる。戦闘部隊は俺と大石の部隊を含め、12部隊ある。単純にそれぞれ4つの部隊であたるのが妥当だろうか。織田山門は日本人だ。あいつはおそらくここ山梨の本部を攻めてくるだろう。ここは俺たちが守ったほうがいい。しかし、それだけでは戦力が足りない。相手は武将たちを引き連れてくる。魔法を使わなくとも十分強い。
総司がしばらく考え込んで、決断がでたようだ。みんなが総司に注目する。
「よし、とりあえず俺の部隊はここに残る。そして、星読みの赤城がいる十番隊隊長・原田武蔵の部隊は太平洋に。あとは四番隊・金剛勇実も頼む。」
「了解。任せておいて。」
金剛が了承する。総司は続けて指示を出す。
「ドイツには、三番隊・佐倉梅、六番隊・長門佐助の部隊が、アメリカには、八番隊・斎藤リリィ、九番隊・藤堂百合の部隊が行ってくれ。一番隊・新藤敬助と二番隊・三笠葵の部隊は俺とともにここに残ってくれ。。そして、大石は太平洋に行ってくれ。それで、さっさと片付けてきて、ここに帰ってきてほしい。」
「了解した。さっさと終わらせてくる。俺を信じて、籠城しとけ。そしたら、山門は俺がやる。大将は大人しく引っ込んどけ。」
得意気に大石がいう。そして、総司も元気が出てきたようだ。
「まあ、時がくるまではそうさせていただくつもりだ。残りの太平洋組は、武蔵はアメリカ支部に、金剛はドイツ支部に援軍として行ってくれ。」
「了解!」
二人が返事をすると、解散の指示を出し、各々動き出した。
どうやら協会は、一気に私たち、プライマリーを倒しにくるようだ。この大規模な戦いにおいて、人手が足りないのは痛い。私は、少しでも戦力になれるように頑張ろう。いつまでも守られてるわけにはいかない。総司に認められた以上、成果をあげてみせる。きっと、この戦争は私にかかっているのだから。