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エンドレス・マジカルライフ  作者: 沖田一文
【第一章・上】 魔法社会革命編
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第一章13話 『作戦決行』

 作戦当日。昨日のだるさは消えて、コンディションはよかった。作戦が行われるのは夜で、日中は準備や休息して過ごす。作戦が行われるというのに屋敷内は静かだった。みんなは何をしているのだろうか。総司は朝から見当たらない。頭首としての仕事があるのだろう。部屋に戻って、ベッドに横になる。とても静かで自分の鼓動だけが聞こえた。


 夕方、葵が結衣の部屋に入る。すると、結衣はスヤスヤと寝息をたてて眠っていた。本当に小さな子どものようでかわいい。ベッドに静かに腰かけると、結衣を起こさないようにそっと頭をなでた。葵はできれば結衣を戦いの場に出したくはなかった。こんなに小さい子どもに戦わせるなんてことはしたくなかった。けれど、組織の意志に歯向かうわけにはいかない。それに何よりも結衣本人が行きたいという。葵にはただ陰で結衣を支えることしかできない。だから、葵は結衣をこのまま起こさないでおこうと思った。そうすれば結衣を戦いに出さなくて済むかもしれないからだ。集合時間まであと30分。どうか起きないでそのまま寝ててほしい。だけど、その望みは叶わなかった。


 気がつくと、夕方になっていた。私は寝ていたらしく、気づいたら葵が部屋にいた。私は起き上がって目を擦る。時計を見ると約束の時間が近づいていた。


「やばい。行かないと!」


 私は慌てて立ち上がり部屋を出ようとするが葵に止められた。


「待って。まずは制服に着替えないと。私が手伝ってあげる。」


 そういわれて、私は葵に制服を着させてもらった。葵は細かいところまでチェックする。OKがもらえたところで私たちは集合場所へ急いだ。


 ようやくこの日がきたと、本格的に協会を倒しに行けるという嬉しい反面、俺には心配事があった。今日の朝に情報部隊からの報告で、協会がこちらの作戦に勘づいているという、情報が入った。まあ、予測魔法である程度は予測されることはわかっているが、初陣であり、俺の大切な結衣が関わっているとなると不安で仕方ない。結衣のことまではわかっていないことを願おう。それに、大規模な戦闘になろうともこのプライマリーの精鋭ぞろいにそう簡単には勝てないだろう。とりあえず、このメンバーなら大丈夫だ。無傷で帰ってやる。俺は微笑みをうかべると、横にいる結衣をみた。


 星をきらきらと彩った夜空の下、私たちは東京の地上の星の上に浮かんでいた。黒くて、赤のラインが入った制服を着て、胸にはプライマリーの紋章のバッチがついて、私は気持ちが引き締まっていた。隣にいる総司が笑ってこっちをみたので少し緊張していたのが和らいだ。私がいる部隊は作戦のために選ばれた実績の高い幹部たちだった。メンバーは、副頭首・大石歳忠、一番隊隊長・新藤敬助、二番隊隊長・三笠葵、四番隊隊長・金剛勇実、六番隊隊長・長門佐助、副隊長・明石美桜、八番隊隊長・斎藤リリィ、九番隊隊長・藤堂百合、十番隊隊長・原田武蔵、私と総司を入れて11人。葵とリリィは私の護衛役で、美桜は後衛で支援、あとは、前衛で対峙する。ドイツとアメリカの部隊は現地で人員を揃え、各支部総勢での決行らしい。こっちに戦力の大半を集めていて大丈夫なのだろうか。でも、信頼できて、強い人たちがいてくれてとても心強い。これから、人を殺すとなると、とても嫌な気持ちになる。そんな気持ちを察したのか総司が励ましてくれた。


「いいか、結衣。これからするのは戦争だ。だから、人はたくさん死ぬ。けど、戦争せずにこのまま協会をほったらかしにしたらもっと犠牲者は増えるんだ。だから、俺たちは汚れ仕事を引き受け、ここで悪循環を絶つんだ。この戦いは人を助けるんだ。俺たちは人を助けるために人を殺し続ける。誰かを守るために、大切な人を守るために。おまえは何も考えなくていい。自分のために、誰かのために戦え。・・・そろそろ時間だな。みんな!俺たちの戦いはこれからだ!思う存分やっていい!やつらを根ばやしにするぞ!」

「オォォォ!」


 一斉に魔法を展開させる。それぞれの武器を手にし、フィールドをかける。私は予測魔法でターゲットが建物の中にいることを確認すると、総司の合図で魔法を唱える。


「アステカの創造神テスカトリポカよ、

 悪魔と化し、

 あらゆるものを無へ還せ、

 リバース!」


 黒い塊が建物に衝突し、壁を消す。そこに待っていたのは、協会の魔法使いたちだった。


「やはり読まれていたか。ふっ、ちょうどいい、まとめてやってしまえ。何度も出回る必要がなくなる。思いっきりやってやれ!」


 総司が鬼のようになり、怒りが満ちた声で言った。協会の魔法使いは魔法を唱える。


「空間を写し、別空間に創造せよ、

 パラレルワールド!」


 とても分かりやすい詠唱で、誰もが理解できた。彼を中心に広がった魔方陣が敵味方を含んで光輝く。そして、世界は静かになった。見ると、そこには私たちただけしかいない。これで関係ない人を巻き込まずに戦えるってわけだ。さすが協会だ。人間社会に根付いてるだけあって、そういうところはしっかりしている。そうこうしてるうちに、戦闘が始まった。


 今回のターゲットは、世界魔法協会の5人の最高魔法師の一人、生物魔法のトップ、織田山門である。織田とは高等部のころの同僚だ。だから、俺たちはお互い、よくわかる。俺たちふたりは、戦闘が始まっても、睨みあっていた。二人の距離はそれぞれの仲間に阻まれて遠い。俺は織田と戦いたくない。一番敵にまわしたくない相手だからだ。なんとか織田を仲間にしてみようとする。


「織田!こっちに来ないか?おまえなら俺たちのことがわかるだろう。」

「まだわからないのか?貴様がやっていることは犯罪だ。テロ行為だ。いくら協会が腐っていようが、おまえたちは殲滅の対象だ。民の脅威は排除しなければならん!総司、俺はおまえとは違う。俺のやり方でいかせてもらう。だから、これ以上協会の邪魔をするな。俺の邪魔をするやつは誰だろうと許さん!」


 一人だけ和服を着た織田は誘いを断った。


「それならば仕方ない。その言葉、そっくりそのまま返してやる。邪魔者は始末する!」


 俺はマジック・ターンをして菊一文字を杖に変えてから杖をまえにかざして魔法を唱える。


「アステカの創造神テスカトリポカよ」


 俺の足元に紫色の魔方陣ができ、杖の先にも同じものが浮かび上がる。織田は魔法を展開させ、刀・宗三左文字そうざさもんじを手にした。


「悪魔と化し、

 あらゆるものを無へ還せ」


 足元の魔方陣から黒い魔力が浮かび上がり、杖先に集まる。織田は、刀を天高く掲げ、魔法を唱えている。


「リバース!」


 杖先から黒い塊が一直線に織田へ向かう。両者の間にいた敵味方は双方が魔法を唱え初めたら退いていた。俺は、塊を目で追いながら、ソード・ターンをする。すると、辺りに緑色の光が複数現れ、そこから、あるものが出てきた。塊は、出てきたものにあたり、それごと消え、辺りには馬に乗った武将たちがいた。彼らたちは一度死んだはずの者たち。しかも、厄介なことにみんな強いやつらだ。これがあいつ、織田山門の生物魔法、『ライフル・バック』だ。これで織田陣営が敷かれた。織田はだいたい呼び出す人が決まっている。それはたいてい織田家の最盛期、織田信長を中心とした武将たちで、今は、織田信長、丹羽長秀、明智光秀、柴田勝家、滝川一益、豊臣秀吉、徳川家康、そして、織田山門のそばには森蘭丸が配備されている。これが嫌だからさっさと消しておきたかったんだ。織田信長がこっちを見て、言う。


「お主は織田の壁となるのか?そこにいる光秀のように裏切るのか。」

「裏切ってなどいない。元から俺は山門についていない。ただ、同僚だっただけだ。」

「しかし、今は織田の敵。ならばその首を討ち取るまで!いけぃ!」


 これに各武将たちはこたえる。


「はっ!この柴田勝家、先陣ををとらせていただく。」

「援護射撃はまかせておけ!この滝川一益がいれば退くものも討つ。」

「この秀吉、一期一振で相手の首をとってみせます。」

「長秀に勝てるやつなどいない。先にお前の首をとってやる。」


 4人が攻めてくる中、他は話している。


「しかし、戦では一人に対して、このような大将となる方々がよってたかって大丈夫なのでしょうか。」

「問題ない。今は戦国の世ではないからな。あくまで俺の駒にしかすぎない。命令に従ってさえいればいい。」

「山門!お前は俺に命令するとでもいうのか。このわしこそが天下をとる男だぞ。」

「まったく、先代様は末裔の願いすらもかなえられないのか。これだから、光秀に裏切られるんだ。」

「なにぃ!お主、もういっぺん言ってみろ!ただではおかんぞ!」

「信長様!そのへんでご勘弁なさってください。」

「ふん。光秀もはやくいかんか。」

「いやしかし、わたくしは信長様を裏切った身でございます。ともに戦ってよろしいのか・・・」

「何を言っている。過去は過去だ。今を生きて、戦い抜け!お主がわしに昔と変わらずにつかえてくれるならそれでいい。」

「ありがたきお言葉。この光秀、必ずや敵将の首を討ち取って見せます。」


 くそっ。こっちは3人や4人と戦ってるっていうのに、のんきに話しやがって。おまけに話が終わったとあれば、信長以外の武将どもが攻めてきやがる。地上は危険すぎる。そう思って、フロートをして飛び始めたところに足に感触がはしった。足を見ると、足首に矢が刺さっている。舌打ちをして、戦場をみわたすと、蘭丸が弓矢をもってこちらに向けていた。やられる前にやる!アウェイで一気に蘭丸ではなく、山門との距離を詰めると、山門に斬りかかる。その瞬間、山門がにやりと微笑んだ。すると、横から、光秀と秀吉が来て、突きがくる。アウェイで秀吉を飛ばし、後ろにさがって切っ先から逃げようとした。しかし、光秀の刀は俺の肩に刺さってしまった。山門が見下した目で話す。


「ばかめ。大将たるものが自ら最前線に出るとは、どうぞ首をとってくださいといっているようなもんだ。総司、おまえは俺の見込み違いだったようだな。さあ、死んで俺のものとなれ!」


 山門が俺に向かって刀を向けてくる。ここまでなのか。まだこれからだというのにこれで終わるのか・・・。そして、光秀が剣をを抜き取り離れると、目の前に山門がいた。



 

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