第三章36話『幕間』
11月26日。
世界は寒波で覆われた。これによって、世界各地で行われていた戦闘は中断された。
11月28日。
国連で停戦交渉が行われた。各国の担当者が出席し、国連の調停員とともに話し合いが持たれた。しかしながら、その日は何も決まらなかった。
12月5日。
2度目の停戦交渉が行われた。これで、だいたいの取り決めが行われた。
12月15日。
3度目の停戦交渉が開かれる。前回の内容を各国で承認を受け、国連総会にて停戦協定が締結された。これによって、ドイツのワシントン基地の明け渡しも成された。そこにいた日独魔法連合部隊は各国へ戻っていった。しかしながら、日本とアメリカ合衆国は、停戦交渉のなかで決まらなかったハワイ基地明け渡しの賛否を巡って関係を悪化させることになった。
12月20日。
国連本部で日米首脳会談が行われた。議題は無論、ハワイ基地についてだ。しかし、話は上手くいかず、源原鳥海首相は日本へ帰国した。
12月28日。
ナポリ基地にいた日本艦隊は修理などを終え、日本に向けて出港した。
そして、年が明けた2576年1月10日。
日本では密かに新たな新造艦が就任した。それは飛行戦艦と呼ばれ、その存在は海軍と魔法軍など一部の上層部しか明かされていない。もちろん、結衣ですらその存在は知らなかった。
1月20日。
アメリカで再び日米首脳会談が開かれた。アメリカのラザフォード大統領と鳥海首相も要求を曲げず、本会談も失敗に終わった。そして、会談後に事件は起こった。鳥海首相が会場の外に出た途端、魔の手が首相を襲った。だが、首相の影より現れた黒野魔法大将によって刺客は倒され、首相は無事であった。この事件は、鳥海首相暗殺未遂事件として日本国内で報道され、反米思想が高まるきっかけとなった。これによって、合衆国は日本との交渉の手段を失った。
翌21日。
アメリカは太平洋艦隊に対し、出撃命令を下した。アメリカは、アメリカ魔法使いの魔法と科学者たちの技術によってできた魔法具『グランド・ストレージ』によって過去の産物を現代の技術同等以上にアップグレードさせて生成できるようになった。これにより強化された戦闘装備を量産し続けることが可能になった。この道具は超最高機密とされ、上層部のなかでもごく一部しか知らない。開戦当時からあった『グランド・ストレージ』はシーバランスを考慮し、あまり使われなかったが、多くの艦艇を失った現在、これをフル活用させて戦力を増強させた。また、太平洋艦隊には捕虜になっていたレオ・ハンプトン海軍大将が解放され戻っていたため、再び彼が太平洋艦隊司令長官として就任した。
1月22日。
日本海軍は、大規模な艦隊編成の変更とそれに伴う人事異動が発表され、艦艇と人の配置転換が開始された。
1月24日。
日本国防軍はアメリカの出撃を察知し、ハワイ基地周辺の警戒を強化した。
そして、2576年1月27日。日本連合艦隊直轄部隊とアメリカ合衆国海軍太平洋艦隊の中核戦力が武力衝突した。これにより、日米戦争が開始された。しかしながら、アメリカ太平洋艦隊は5つの空母打撃群を中核としており、戦艦を中核とする連合艦隊直轄部隊は、一方的に叩かれるのみであった。直轄部隊には一応の航空戦力として無人機登載空母・安土桃山と江戸の2隻が随伴していたが、戦力差は圧倒的であったため、即時に撃滅されてしまった。航空戦力を完全に失った直轄部隊は、度重なる空襲に対空砲及び防空ミサイル等で耐え続けながら、後退した。その後、付近を警戒していた第一機動艦隊による航空支援とハワイ基地からくる空軍の支援を受けながら、直轄部隊はハワイ基地へと帰投した。
敵艦隊の位置も掴んでいない日本国防軍は事の重大さを理解し、ハワイ基地での迎撃態勢をとり、第一機動艦隊や第八艦隊の空母に索敵を急がせた。それから参謀本部より黒野大将に命令が下り、彼女による魔法で敵艦隊の情報を収集し、艦隊の編成と位置情報を割り出した。わずかばかりの作戦会議を経て、直轄部隊は再び出撃をした。直轄部隊は分隊となり、大和隊と武蔵隊は北方にいる第一機動艦隊へ合流、大和型戦艦紀伊・尾張・和泉ら紀伊隊は南方のいる第八艦隊へと合流し、それぞれ敵艦隊へ向けて航行した。敵艦隊に近づくまでに5日ほどかかった。その間に敵艦載機による空襲と敵潜水艦から発射されたミサイルに遭い、潜水艦の警戒や損傷の修理などで時間を要した。2月1日、日本ハワイ基地の主力艦隊は敵艦隊に対して攻撃を始めた。しかしながら、アメリカ太平洋艦隊は複数の空母打撃群や水上打撃群などで構成されており、そのうちの一つや二つに攻撃をしても敵航空機によるしっぺ返しは誰もが予想されうることだった。それでも艦隊は艦載機を発艦させて攻撃を始めた。それに合わせたかのように敵機も押し寄せてきた。結果、この日は敵機の撃退に集中したため敵艦隊への攻撃は失敗に終わった。




