第三章30話『大西洋決戦Ⅱ』
発艦した艦載機より情報が入った。敵艦隊の編成はジェラルド・R・フォード級原子力空母1、ニミッツ級原子力空母ロナルド・レーガン、ミッドウェー級空母ミッドウェー、フォレスタル級空母2、モンタナ級戦艦ルイジアナ、コロラド級戦艦コロラド、メリーランド、デ・モイン級重巡洋艦1、クリーブランド級軽巡洋艦3、その他駆逐艦10の22からなる艦隊だった。残念ながらそれ以降の通信は途絶え、艦載機は撃墜されてしまったらしい。それらの情報をきいたミハエル中将はまたもや異変を感じた。
「まずいな。第1群任務部隊は60以上からなる大艦隊だ。そもそもアメリカ海軍は空母1隻を中心に編成し、世界の海を担っていた、それに加え、戦艦というものが復活してから防空のために1艦隊に複数つけるのは納得のいくものだ。しかし、この戦争に向け、アメリカも大軍を編成していたはずであり、前の戦いもそうだったと聞いている。ここにきて戦力を分散してきたのは、索敵のため・・・いやそれだけではない。囮にもなり、こちら側の位置を把握し反撃することができるうえ、たとえすべての艦隊の位置をあぶりだしたとしても攻撃のための戦力が分散され、さらには包囲され集中攻撃までされかねない。」
「何をブツブツ言ってるんだミハエル。簡単なことだ、見つけたものから順に沈めていくだけだ。」
「兄さんは黙っていてくれ。」
「俺だって中将なんだぞ!」
「敵機多数、こっちに来ます!」
ミハエルとエーミールの兄弟げんかが本格化する前に敵が来たことにより、私たちは戦闘モードとなった。
「アンはいつもどおりバックアップだ。俺が先にやる。お前たちはそのあとで攻撃しろ。」
エーミール中将は指示をさらっと出して自分は敵機に向かって突っ込んでいった。敵はミサイルを発射する。それをアメリ中佐の水の魔法で封じ、ノア中佐の雷撃で無害化させた。エーミール中将は気にせずにそのまま進み、炎の魔法で敵機を粉砕した。その様子をみて、私たち日本側も行動を開始した。
「天遥!こっちの指揮はあなたに任せます。」
私はそう言って飛翔した。
「善処しますが、勝手な奴らは放っておきます!」
天遥の叫び声を聞いてから、加速する。予測魔法と高速魔法を駆使したいつもの斬撃で敵機を斬っていく。ほかのみんなはというと、会長である未希は結界に敵機を誘い込んで自滅させている。浪岡広海や岩清水愛、最上奈桜、安藤柴乃らは敵機に乗り込んで乗員を直接斬っている。それによってコントロールを失った戦闘機を葛西天遥の指揮のもと残りの人たちで始末していた。
襲来したすべての戦闘機を始末したあと、ミハエル中将は今後の方針と指示を出した。
「これよりわれわれは敵艦隊にいち早く乗り込み、敵空母を撃滅、その後モンタナ級戦艦ルイジアナを撃滅する。」
「モンタナ級戦艦ルイジアナはどうやって判別するんですか?」
未希が質問する。
「戦艦の中でも一番デカいものがそれだ。」
「私たちが艦隊のそばから離れても大丈夫なのですか?」
「大丈夫ではない。だからこそできるだけ迅速にやり遂げる必要がある。多方面からの敵機が味方に襲来した場合はその時点で後退する。」
「「了解。」」
「よし、アン、透明化の魔法をかけてくれ。」
それから私たちは敵の視覚をごまかして敵艦隊に接近した。しかしながら、敵は私たちの存在を完全に気づいていた。機銃掃射を受け、それから逃げ回る。どうやら音響による探知で方角がだいたいわかっているようだ。敵艦隊は私たちの狙いを理解し、空母の艦載機をすべて発艦させた。その方向は味方艦隊だけでなく、別に2方向へ飛ぶものがあった。どう考えても援軍を請うものだ。
「ちっ。総員後退だ。置き土産をできるやつはして行け!」
ミハエル中将の後退命令が出された。私は、通常動力の空母3隻に対し、ファイアボールを命中させて大破もしくは中破へ追い込む。それに追撃するようにエーミール中将が攻撃を加え、フォレスタル級空母レンジャーを沈めた。ノア中佐は雷の魔法で艦隊の機器の故障を一時的に誘い、アメリ中佐の水、エリス中佐の暗闇魔法、ジョセフ少佐の鉄、エリーナ少佐の闇、フランク少佐の氷とそれぞれの魔法で攻撃し、フォレスタル級空母インディペンデンスを航行不能にした。さらにオリビア少佐の光の魔法で敵兵の目をくらまし、その間にみんなは後退を私は高速魔法で飛び回り、ミッドウェー級空母ミッドウェーを破壊、轟沈させた。そして最後に再びファイアボールを放ち、敵艦艇に火災を起こし、みんなに続いて後退した。
これでわかったことだけど、学園の生徒と戦闘経験があるドイツの魔法使いとでは明らかに戦力差があることが明らかになった。まあ、変に力が入って死に行ってしまうよりはマシだけど、やはりこの子たちを生かすか殺すかは私に懸かっているようだ。そのためにはなるべく完全試合になるようにしなければ。そしてそれはミハエル中将の考えに沿うのが今のところ一番いい気がする。そして、エーミール中将率いるニンフェンブルク小隊の連携もいい。アンや彼らの力を借りてこの部隊を守り遂げよう。




