表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エンドレス・マジカルライフ  作者: 沖田一文
【第三章】学園長編
141/158

第三章28話『ユトランド沖大海戦』

 敵艦隊が地中海艦隊であったことはすぐに情報が伝えられた。第三艦隊を指揮するリンデマン中将は援軍が到達する間、前線の維持をするために手を尽くした。大洋艦隊第三艦隊は本土防衛のために用意された部隊であり、時間稼ぎさえすればよいという考えのもとで存在していた部隊だった。捨て駒扱いであるがゆえ、リンデマン中将は攻撃を徹底させた。潜水艦隊のUボートによる多数の雷撃と合わせて敵艦隊を疲弊させた。まもなく第一艦隊と第二艦隊の航空隊が到着し、攻撃が開始された。それに対し、イギリス地中海艦隊も空母二隻より艦載機を発艦、迎撃をする。さらに機動力を生かし攻撃を巧みにかわして第三艦隊の横を通り過ぎていった。お互いに魚雷を放ち牽制しあう。しかしながらこの雷撃により甚大な被害を受けたのはドイツの第三艦隊のみであった。哀れな姿を横目で見ながらイギリス地中海艦隊は進撃を続け、後ろに控える艦隊に向かっていった。

 及川海鈴大将は敵の情報を受け、早々に針路を進めた。前にいる大洋艦隊と並び、追い越しつつあった。その様子を見ていた第一艦隊司令官のメイ中将は第二艦隊のアウグス中将にシャルンホルスト級2隻を日本艦隊に随伴するように指示した。その指示を受けたアウグス中将は第二艦隊の指揮権をメイ中将に預け、旗艦シャルンホルストとグナイゼナウは日本艦隊に続いて先を急いだ。航空機より共有される敵の位置情報をもとに北上していき、敵艦隊を目視確認した。海鈴大将は同時に大洋艦隊第三艦隊の存在も確認し、彼らのもとへ行き、保護することを優先して速度は落とさずに航行を続けた。向かってくる敵地中海艦隊に対して、戦艦以外の艦艇を対象に砲撃を始めた。その砲撃の様子を見たアウグス中将はドイツ戦艦2隻を日本艦隊の前に出し、敵艦隊に対して牽制の魚雷を放射、そして、堅牢なドイツ戦艦の装甲を友軍艦隊の盾として弾受けとなった。さらに前に出ることによって主砲弾が命中しやすくなり、敵艦の装甲を貫いていった。しかしながら、相手には巡洋戦艦レナウンやフッドなどがいたため、シャルンホルストやグナイゼナウの頑丈な装甲でも徐々に損傷が増えていった。だが敵艦隊は魚雷から逃れるために転舵した。そこを見計らってアウグス中将並びに海鈴大将は全砲門を敵戦艦に向けて発射させた。戦艦6隻から放たれた47の砲弾は敵戦艦を一網打尽にした。こうして速度を失った敵巡洋戦艦は速度を上げたままの他の艦艇に衝突され、互いに航行不能に陥った。敵空母もその一例で減速しきれずに仲間どうしぶつかって大破になった。アウグス中将はおしまいに雷撃を加えようとしたが、装填時間の関係から断念された。海鈴大将は一切の攻撃を止め、前進を続ける。日本艦隊はシャルンホルスト級戦艦2隻のおかげでほぼ無傷であった。


 ようやく大洋艦隊第三艦隊のもとにたどり着いた日本艦隊らは救助活動を始める。1時間ほど活動をしていると、大洋艦隊本隊から情報が入った。敵本国艦隊が南西方面より侵攻中とのことだった。海鈴大将は救助活動を中止し、独第三艦隊の残る艦艇に救助者を移乗させた。それから針路を南西に急行した。


 大洋艦隊本隊を指揮するメイ中将は空母と駆逐隊2つはそのまま北上させ、それ以外を旋回、敵艦隊に向かって針路を変えた。しかしながら、針路の向こうは煙幕が焚かれて敵艦隊が見えなくなっていた。レーダーと航空機により探知を行う。

「敵駆逐艦多数発見!雷跡多数こちらに向かってます!」

「取舵いっぱい!速度も落として!」

 メイ中将自身も魚雷の数を確認し、驚愕するところを噛み殺して指示を出した。急転舵により艦内は激しく揺れた。しかしながら、隙間なく魚雷が多数向かってくるので艦首に魚雷が幾つか命中した。浸水によりさらに速度が落ちる。応急修理を急がせ、艦隊は一時停止した。その間、敵艦の捕捉活動を続ける。敵艦隊の全貌が分かったのは煙幕が晴れてからだった。

「敵艦隊全部で27!ライオン級戦艦4、ウォースパイト級戦艦4、ネルソン級戦艦2、空母プリンス・オブ・ウェールズとイーグルの2、巡洋艦7、デアリング級駆逐艦8です。」

「第一次攻撃隊発艦させて!」

 メイ中将の指示により、空母4艦より、戦闘機が飛び立った。敵艦隊方面へ向かった戦闘機はすぐに敵機とドッグファイトを始めた。メイ中将は航空戦の指揮をそれぞれの空母の艦長たちに任せ、水上艦隊の針路を南へ変更し、速度を上げた。そして、日本艦隊の司令官及川海鈴大将と連絡を取った。

「本艦隊は敵艦隊の南側を抑えます。そちらは、北側を抑えてほしい。」

「了解した。現在速力最大で急行中。そちらが交戦を始めるまでには間に合わないでしょう。」

「了解。幸運を祈ります。」

「幸運を。」

 それから、Uボートとの情報を照らし合わせ、敵艦隊の誘導先針路の情報をとあるところへ転送させた。そして、敵艦隊が針路をさらに南寄りに変えたのを確認すると、機関を停止させ、艦隊の速度を落とした。さらに、敵艦隊付近に潜んでいたUボートにも直ちにその海域を離脱するように指示を出す。まもなく、天空に異変が起きた。



 大洋艦隊より情報を受けたのはドイツを統べるヴィルヘルム総統閣下であった。

「この情報が私のもとへ来たということは私から手を下せということか。海軍を大西洋に送り出すためには仕方あるまいか。」

 そうおっしゃって、閣下は執務室の窓のそばに立った。

「私がいいというまで、だれもこの部屋に入れるな。」

「承知しました。」

 伝令で訪れていた人に告げ、閣下一人になった。

「アクティベーション。」

 そう告げると、閣下の周りが光り輝く粒子であふれた。

「太陽神アポローンよ、彼の地おいて、聖なる光の矢を降り注ぎたまえ。ハイリガー・リヒター・リーゲン。」

 静かに魔法を唱え、閣下は再び椅子に腰かけ、業務に戻った。


 この魔法によって、イギリス本国艦隊の上空に神々しく輝く魔法陣が広がり、そこから光速で矢が降り注いだ。光の矢が艦船にあたると、装甲を焼き溶かす。そして、顕わになった弾薬庫へも降り注ぎ、艦隊を吹き飛ばした。結果、この戦闘においてイギリス海軍は多大な損害を受けた。本国艦隊のうち運よく生き残ったのは、艦隊から離れて行動をしていた空母プリンス・オブ・ウェールズとイーグルのみであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ