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エンドレス・マジカルライフ  作者: 沖田一文
【第三章】学園長編
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第三章22話『東太平洋大海戦Ⅲ』

 黒野大将は、魔法を展開させ、杖を手に取る。

「千里眼!」

 瞳に黒い魔法陣を浮かべ、目を大きく開けた。黒野の視界は太平洋上を進み、やがて味方艦隊を見つける。それからさらに先へ視界を進め、敵の大規模空母群を見つけた。

「みーつけた。この辺ならもっと面白いことができそう。さあアメリカよ、自分たちがしたことをお返ししてあげたら、どんな反応をするのかしら。ドイツの貸しを返しあげる。」

 黒野の足元に巨大な黒い魔法陣が現れ、黒野は詠唱を始めた。

「穢れなきこの空に、無垢なる神の子らは狂気を宿す、

 繰り返される無限の理不尽を、

 愚かなる選択をした犠牲者たちよ、

 思い知れ、これが望むさだめである、

 真実をさらけ出せ、

 イロージョン!」

 何重もの黒い魔法陣が黒野を中心に広がり、天高く積み重なっていく。黒野が手を高く挙げると、黒い魔粒子の束が魔法陣の中心を貫き昇っていく。一番上の魔法陣までくると、その魔粒子は太平洋の彼方へ瞬速で飛んで行った。


 北アメリカ大陸上空。そこに黒い魔粒子はたどり着き、空に巨大な黒い魔法陣を浮かび上がらせる。その大きさは北中アメリカを覆うほどであった。そして、アメリカにいる人々が空を見上げて不思議に思い始める頃に、その魔法陣から赤黒い炎の雨が火山弾のように降り始めた。あらゆ人に対するこの無差別攻撃は以前にアメリカの魔法使いたちが協力してドイツ本土に対して発動させたものと同様のものである。しかしながら、黒野魔法はあれだけの被害では済まない。炎に当たったものを焼き焦がし、溶かすだけでなく、当たったものそのものが消えるように分解までしてしまうものだった。その被害はワシントンにあるドイツの基地にも影響した。それは、ペンタゴンによる結界を破壊し、基地の孤立を解く結果になった。結衣やアンたちはその降り注ぐ悪魔を恐怖を抱いて見ているだけであった。恐怖を抱くのは彼女らだけではない。もちろん全米にいる人々がそうであった。人々は逃げ隠れし、社会は混乱した。そして、黒野の本来の目的である太平洋にいるアメリカ海軍第3群任務部隊の空母群にも徹底的であった。降り注ぐ悪魔は砲弾やミサイルなどでは防ぐことはできない。よけるにしても俊敏性に欠け、巨大な艦艇は簡単にその悪魔に触れてしまう。悪魔に触れてしまった艦艇はじっくりと浸蝕され、静かに分子レベルの粒子となって消え始めた。爆発もすることなく、原子炉でさえも分解した。中にいた搭乗員たちは逃げ、海中へ身を投げるが、逃げるときに浸蝕部へ出会ったり、海に落ちても悪魔に直接触れてしまった者は例外なく存在を消された。身体的な痛みはないが、ただただゆっくりと自分の体が消えていくことに怯え、なすすべなく悲鳴をあげることしかできなかった。


 悪魔が降り、次々と空母が消えていく光景を宮野少将がいる艦隊の位置から確認することができた。あれからまだ1時間経っていないというのに多くの敵艦が静かに失われていく。悪魔の雨の恐ろしさは直接被害を受ける者たちだけでなく、その観測者たちにも伝わった。この時間を終わらせるには上空に浮かぶ巨大な魔法陣を消滅させるか、1時間という約束の時間が過ぎるのを待つかのどちらか。この混乱の中アメリカの魔法使いを束ねるジェシカは、指示を出すが統率がとれていなかった。そんな危機的状況を打破するために動いたのはアメリカ側ではなく、日独側である結衣とアンだった。

「結衣。これは何?」

「これはたぶん、黒野大将がやった魔法だと思う。」

 結衣は目を赤く光らせ、予測魔法を発動しながら答える。

「黒野大将か、日本の魔法使いの頂点に立つ人物だな。そしてこの魔法は前にアメリカがドイツに対して行ったものの再現だろう。あのときは空にある魔法陣を壊して攻撃は止んだ。あのときでさえ、大変だったんだ。今回は黒野大将がやったとなると、なかなか難しいんじゃないか。まあおかげでこっちはペンタゴンの

 呪いから解放されたわけだが。」

 ミハエル中将は結衣とアンがのぞいている窓をその後ろから眺めて言った。

「でも、これって関係ない人にも・・・。」

「ああそうだ。我々ドイツも多大な被害を受けた。それによって国内でも魔女狩りのようなスパイ狩りが始まってしまったほどだ。」

「なんとかできませんか?」

「なんとかできるとしたら、君たち次第だろう。」

「私たち?」

「そうだ、黒野大将に対抗できるのは結衣。しかしながら、結衣だけでは心配な部分がある。暴走されても困るからな。」

「なぜそれを?」

「こちらにだって情報を集める機関があるんだ。まあ、結衣の場合は協会の歴史上、周知なところもあるが。まあ、系統魔法を関係なく操れるアンと一緒であればなんとかなるだろう。」

「でも、勝手に私たちが破壊していいんですか?黒野大将がやったってことは日本軍の指示があったってことですよね?私も一応日本軍には所属しているわけで・・・。」

「ならばこうしよう。結衣、アン、二人に命令だ。早急にあの忌々しい魔法陣を破壊せよ。これは現場指揮官である私の命令だ。ほかに文句があるやつがいたら、私がねじ伏せてやるから、任務を遂行してくれ。」

「なるほど、了解しました。直ちに任務を遂行してきます。いくよ、アン!」

「はい!」

 結衣とアンは部屋から外へ向かった。



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