第三章19話『航空戦力の脅威』
11月8日午前5時過ぎ、フランス大西洋艦隊と対峙した日本艦隊スエズ組は、改めて戦闘態勢に入った。
「敵戦艦の情報は?」
「敵戦艦は、どれも超弩級戦艦で、ブルターニュ級3と、リヨン級4です。」
「各性能は?」
「リヨン級は、主砲45口径四連装砲4基16門を持ち、水中に魚雷発射管を隠している模様。装甲については最大300です。ブルターニュ級は、主砲45口径連装砲5基10門、装甲は最大400です。速度はどちらも20ノットを超える程度です。」
「空母の方は?」
「原子力空母シャルル・ド・ゴールは、戦闘機用に核兵器が搭載できるようです。その他防空能力に長けているようです。通常の空母フォッシュは、レーダーと防空システムに長けており、その他の兵装の情報はありません。」
「分かった。気をつけるべきなのは、戦闘機による核攻撃と、戦艦による砲弾の嵐だな。この距離なら核を撃ってくることはないと思うが、戦闘機発艦をさせないためにも、空母を早々に攻撃しなくてはならないな。よし、射程内になり次第、榴弾で敵空母2隻を集中攻撃する。」
「司令官、すぐに射程距離内です。」
「砲撃用意!全艦榴弾を装填し、攻撃可能となり次第、砲撃せよ!狙いは敵空母のみ。」
戦艦4隻は、全門斉射し、そのいくつかは敵空母に命中した。これを受け、敵空母に動きがあった。
「敵空母、戦闘機発艦準備に入った模様!」
「次に一斉射したら、対空ミサイルを装填。敵機が発艦したところを狙え!」
基頼少将の指示通り進めるも、敵戦闘機はやってくる。
「防空ミサイル用意!すぐに撃て!」
それでも数本の対艦ミサイルは、日本艦隊を襲った。
「敵ミサイル直撃!3番主砲塔故障、炎上!」
「全艦最大戦速!消火を急げ!それから、魚雷装填!随時発射せよ!」
敵側にいた水雷戦隊は、魚雷を発射してから戦艦の陰に隠れるように移動した。
「消火終わりました。」
「よし、対艦ミサイル用意!誘導を解除し、敵空母を狙え!」
迫り来る敵艦隊から砲弾の雨を受けながらも、慎重に照準を定めて発射した。そして、32本の対艦ミサイルが発射された。その後すぐに徹甲弾を装填させ、攻撃を続けた。そして、対艦ミサイルは、幾つか撃ち落とされたものの、敵の防空ミサイル発射機を狙ったものが命中し、敵空母は対抗手段を一つ失った。その他、敵空母には命中したが、大破させるには至らなかった。その頃には、お互いに魚雷の対処をして、速度を落としつつも、再び砲戦が続いた。そして、両者がすれ違い離れ始めるところにもう一度対艦ミサイルを発射した。そのときには再び主砲塔が故障したことにより、30本となったが、今度は全て敵空母に命中した。そのうち半数近くはシャルル・ド・ゴールに命中した。その後、敵艦隊は旋回し、離れようとする日本艦隊を追撃しようとする。砲撃が届く限り、砲戦は続いたが、速度の差は大きかったため、日本艦隊はフランス艦隊を離した。それから、シャルル・ド・ゴールは冷却機能を失ったことから、爆発を引き起こした。乗員は退艦を始めていたが、間に合うことはなかった。周囲の艦艇を巻き込んで、沈没数は13にも及んだ。日本艦隊は、フランス艦隊の手から逃れることができた。しかしながら、受けた砲撃の損害は大きく、これ以上の継戦は望ましくないほどだった。
その翌日、9日東太平洋赤道付近をハワイ基地から出た戦艦長門率いる日本艦隊はパナマ運河を通るべく航行していた。そこに、パナマ通行を阻害する目的でいたアメリカ海軍レオ・ハンプトン海軍大将率いる第3群任務部隊が関与してきた。レオ・ハンプトン海軍大将は、偵察によって発見した日本艦隊に対して、空母より数百もの艦載機を発艦させ、攻撃を開始した。空母は全部で15隻所属しており、まさに海上の飛行基地となっていた。モンタナ級戦艦であっても、主力ではなく、いち水上戦闘艦の戦力として、空母を敵から護衛するに過ぎない。
航空戦力主力のアメリカ海軍に日本も対策を講じていた。と言っても、ハワイ基地から第6航空戦隊を中心とした第七艦隊が後方に付いているだけであった。空母4プラス2に対して15というのは圧倒的な差だった。
日本艦隊第一艦隊を指揮する宮野優作少将は、敵哨戒機の発見をしたときに、後方にいる第七艦隊司令官阿部則任少将に連絡した。連絡を受けた第七艦隊から直ちに空母雲龍・天城・葛城・信濃から艦載機を全機発艦させた。それらは第一艦隊を超え、前線に出る。そして、敵機の大軍を発見して攻撃を開始した。しかしながら、数には勝てず、敵機は第一艦隊に対して対艦ミサイルを発射、命中させる。この戦力差を見せつけられた宮野少将は、やむを得ず、進行を中止し、艦隊を旋回させた。それから、参謀本部へ連絡をした。
「有賀総長、敵航空戦力は尋常ではなく、撤退を開始しました。何としても撤退だけは成功してみせます。」
「宮野少将、諦めるのはまだ早い。状況を見て、再び針路を戻すのだ。こちらから手は打ってある。アメリカ海軍を殲滅し、日本の威光を見せるのだ。」
「しかし、それには圧倒的に戦力足りません!」
「これは命令だ。私は君ならできると思っている。冷静になって、任務を遂行するんだ。大丈夫、直にわかるさ。その戦闘における指揮権は君にある。あるものを使って敵を叩け!分かったかな?」
「は、はい。了解しました。」
宮野少将は、有賀総長が本当にこの状況を打破できるものなのか理解しているのか責め立てたいところでほあったが、軍人において上官の命令は絶対。逆らうことはできない。しかしながら、有賀総長の言っていたことが分かるときはすぐに訪れた。




