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エンドレス・マジカルライフ  作者: 沖田一文
【第三章】学園長編
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第三章18話『ジブラルタル海峡』

 ヨーロッパの南部のほとんどがローマ帝国となった現在、なぜ未だにジブラルタルはイギリスのままなのか、それは藤原基頼少将は疑問に思った。ローマ帝国の地中海内にいる日本艦隊はフランスの地中海艦隊との戦闘を受け、修理のためナポリ基地に戻っていた。フランス艦隊はしばらくは出撃してこないだろうという考えは基頼少将もローマ帝国の指揮官も同じであった。しかしながら、この一連の情報はフランスからイギリスやアメリカにも渡っているということは誰もが予測した。その第一関門として、イギリスの要塞、ジブラルタルである。ここは海上装備は持たず、陸上装備のみであるが、未だにローマ帝国に属さない鉄壁である。その防衛力を基頼少将たちは恐れていた。そして仮にそこを突破できても、すぐにアメリカの艦隊と邂逅すれば、全滅の可能性すらあると考えている。相手に準備を完了させる時間をなるべく与えないためにも早めの行動が求められた。そして、基頼少将が下した決断は、『夜間突破』だった。海峡を慣れない日本が夜間に突破するのは危険だとローマ帝国からも指摘があったが、基頼少将は念を押して、承諾を得た。その志を勝ってローマ帝国は、空軍による夜間空襲をし、援護することになった。


 艦隊は21時に出発し、はじめは微速航行でゆっくりと船を進めた。22時を過ぎると、ローマ帝国空軍は作戦を開始し、戦闘機及び爆撃機をジブラルタルへ飛ばした。その空襲によって炎上する灯りを目印に艦隊は舵を取った。海峡付近は空に夢中になってこちらには気づかない要塞に対して、基頼少将はローマ帝国への謝意を込めて対地攻撃を行った。少しでもこの要塞を崩しておこうと思ったのだ。海峡通過時は、砲撃は辞め、数隻ずつ航行して通過する。全艦が通行を遂げると、最大戦速30ノット越えで航行した。こうして11月7日、日本艦隊スエズ組は大西洋への進出を完了させたのである。


 そしてその翌日となった2時頃、日本艦隊は急行してきたイギリス海軍の地中海艦隊に発見された。巡洋戦艦を中心としてなるイギリス地中海艦隊は、夜戦の猛者とも言えるだろう。しかしながら、日本艦隊もイギリス出身とも言える技術からなる金剛型戦艦である。両軍は勝ち目があると見込んで戦闘を開始した。ところが基頼少将をはじめ、日本艦隊は大きな違いに気づかなかった。はじめに出くわしたのは、巡洋戦艦4、重巡洋艦4、軽巡洋艦1、駆逐艦7からなる艦隊であったが、さらにその後方に艦隊が存在していたのである。空母2隻を引き連れた本艦隊であった。そのため、日本艦隊は艦上攻撃機による夜戦攻撃を受けた際の衝撃は相当のものだった。運良く雷撃を回避できたこともあり、大きな損害を受けなかった艦隊は、西へ針路をとり、戦闘からの離脱を図った。


 残念ながら、神は敵方を味方したようだ。西へ行くということはアメリカに少しでも近づくということ。日本艦隊は、イギリスから情報を受けたアメリカ第1群任務部隊と邂逅することになる。第1群任務部隊は、大西洋艦隊を指揮していたハーヴェイ・ホワイト海軍大将が率いる大艦隊となっている。以前のドイツ軍との戦いで壊滅状態にあった大西洋艦隊は、新たに第1群任務部隊となり、とある秘密道具によって強力な艦隊に生まれ変わった。空母が16隻も所属する余力アリアリの艦隊だった。そんな国一つ2つ分以上の戦力を持っていることを知らない日本艦隊は、アメリカ艦隊を捕捉した時の絶望感は真骨頂であった。


「前方に敵艦隊捕捉!数・・・・・・68!?」

「それは本当か?」

「間違いありません。それに空母と思われるのが16!」

「空母16だと?他の船からの情報と合わせてみろ。」

 基頼少将は、情報の信憑性を疑った。しかしながら、事実であるということが証明されただけで、それは艦内を動揺させることになった。基頼少将は、必死に手段を模索した。

「航続可能距離はどのくらいだ?」

「金剛は、約1万キロです。駆逐艦だと、6000キロほどです。」

「目的地をドイツまで、海峡を迂回するとなるとどのくらいの距離だ?」

「4300キロほどです。」

「ならば、最大戦速をあとどれくらい維持できる?」

「10分ほどです。」

「よし、ではこれより北東に向けて全速で敵から離れる。対空見張りを怠るな。面舵いっぱい!」

 日本艦隊は、旋回して北東を目指した。最大戦速を10分で止め、速度を半分以下に落とす。それからしばらく後、フランスの大西洋艦隊を進行方向において発見した。それも視認できるほどの距離にいたのである。原子力空母シャルル・ド・ゴールを中心とした30隻から成る艦隊だった。基頼少将は、今度は戦う覚悟を決めた。その狙いは一つ、敵空母の撃滅。これ以上、負債を抱えてイギリスの制海域を突破するのは困難であり、敵艦隊の主力の一つを崩せば、少しは相殺されるだろうと考えたのだ。駆逐艦の航行距離のことも考慮し、あまり時間はかけられない。今の基頼少将には慈悲などかける余裕はなく、ただ敵を退け生き抜くための野生の目をしていた。

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