第三章15話『バリーアー』
イギリスの魔法使いゲーアノートたちを追い払った私たちは食事と休憩をするために一度拠点に戻ることにした。ゲーアノート戦でエーミール中将をはじめ、みんなは疲労を感じていた。そのため、帰路はゆっくりと空を飛ぶことにした。私はアンと2人で先頭を飛ぶ。アメリカの魔法使いジェシカたちはまだ撤退していないということが分かりきっていたので、元気に動ける者を外側に配置したのである。もうすぐホワイトハウスが見えてくる。そのはずだったけど、そこには大きな城塞がそびえ立っていた。その外側で破壊を続ける魔法使いたちがいる。そして、ジェシカとミハエル中将の姿も見えた。私はジェシカに攻撃しようとスピードを上げて単独で乗り込んだ。
「どうやら、きみの計画は崩れたようだな。」
「それはどうかしら。」
「これ以上、どう戦うつもりだ?無意味な戦いはやめたほうがいい。」
「あなたにはわからないわよ、私がどんな思いでどのように動くかなんて。まだまだ現場監督官でしかないミハエルには。」
そして、ジェシカは一直線に向かってくる私へ向けて銃弾を連発する。私はその銃弾を予測魔法で読み切って高速魔法によって剣で弾く。そのまま勢いを殺さず、ジェシカへ突っ込んだ。ジェシカはもちろんこれをよけて私が着地したところへ銃弾を放つ。私は予測魔法で目を赤く光らせながら、銃弾をすばやくよけながら、右往左往としつつ、ジェシカのもとへ走る。ジェシカは自分に能力強化を使って、私の斬撃からよけ後退しながらも、すかさず銃を撃ち込んできた。ジェシカはさらに後ろに下がって剣の間合いから抜ける。
「あのゲーアノートから無事で帰ってこられるとは、確かに私の思惑は外れてしまったようね。やはり神城結衣とやりあうのは分が悪いし、ここは一度下がることにするわ。また近いうちに会いましょう。」
そういってジェシカはアメリカの魔法使いたちを引き連れて撤退していった。
戦闘が終了して、南条師行の魔法も解けてもとのホワイトハウスの姿へと戻った。そこに私たちは帰還した。エーミール中将をはじめとする負傷した人たちを治療や休息にあたらせると、ミハエル中将は私と須藤未希を呼び集めた。
「さて、敵を追い払うことができたのはたいへん結構なことなのだが、一つ問題がある。それは、この空にある結界である。ペンタゴンによる仕業だということは重々承知している。だが、この結界を解く方法がわからない。」
「ペンタゴンを破壊するのは?」
未希が手をあげて提案する。
「それができたら今にでもやりたいところだ。」
提案をミハエル中将は即座に切り捨てた。
「このままでは、外との連絡がとれない。我々はこの結界の中に閉じ込められ、外と中とを自由に行き来することはできず、食糧などの物資も遮断されている状態にある。魔法でいつでも本国と行ったり来たりできることをいいことに食料はあまり予備がない。これでは継続して戦闘はできないことに加え、最悪餓死で全滅することになる。」
「ということはあまり時間もないということですね。」
「そうだ。未希のいうとおり、我々に猶予はなくなった。ペンタゴン攻略を急がねばならない。」
「ところで、ペンタゴンではなく、結界そのものを直接破壊するのはダメなんですか?」
私は思ったことを訊いてみる。
「残念ながら、この結界は見えるようで実は実態のつかめないものだ。物理干渉は意味ないだろう。そして、俺が言いたいのは君たちにお願いしたいということだ。悪いが、ペンタゴン攻略を君たち日本のチームにまかせたい。俺たちドイツチームは以前から調査をしていたが何もわからなかった。それに、不本意ながら兄さんがあんなだからな。」
「わかりました。私たちにお任せください。ちなみにデッドラインはいつですか?」
「1週間が限度だろう。ドイツチームはここで結界について調べてみる。」
「了解です。ではさっそく昼食後に行ってきます。」
「ああ頼む。」
こうして、未希が了承したことによって私たち日本チームはペンタゴン攻略のための調査をすることになった。
次回以降、しばらく海戦遊びの茶番です。




