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エンドレス・マジカルライフ  作者: 沖田一文
【第三章】学園長編
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第三章11話『ディー クラフト フォン ツヴァイ ロイテ(2人の力)』

 私たち派遣部隊は、ドイツの敵地内唯一の拠点であるアメリカの首都ワシントンのホワイトハウスに配属され、その日は夜まで歓迎会が行われた。そんななか私は弟子ともいえる親しい仲であるアンと再会し、2人はそれぞれ何を成してきたのかを語り合った。

 歓迎会を終え、みんなは就寝へとつく。今日はミハエル中将が夜の番をしてくれるようだった。だから私たちも寝ることにした。

「じゃあ、一緒に寝ましょう?」

 アンが言った。

「えー、さ行がちゃんと言えたらいいよ。」

「さー、しー、すー、せー、そ。」

「え、なんで?」

「ちゃんと練習してましたから。では約束通り、一緒に。」

「わかった。そうするよ。」

 こうして私はアンと同じ布団に入って目を閉じた。アンが寄り添って身を預けてきたが、そのままにしておいた。



 ミハエル中将は深夜、執務室で情報を取り入れていた。その情報元はミハエル中将の指揮下にある戦略魔法機関の予測魔法部隊であるドレスデン小隊所属のニーナ中佐だった。

「・・・というわけで、そっちは動いたから気をつけて。宇宙軍による攻撃の後、ペンタゴンは解放されるはずだから。」

「予想どおりに相手は動くんだな。日本からアレを呼んでおいて正解だった。まずはお手並み拝見だな。」

 その時、窓の外が異様に明るく光った。ミハエルはフッと笑みをこぼしてから、片手を挙げて詠唱を始めた。

「我が祖国の先人ニーチェは言った、

  『神は死んだ』と、超人たる印を刻み、

  神の威光を焼き切れ!

  Zartošt(ツァラトゥストラ)!」

 ミハエルを中心に結界が展開され、ホワイトハウス全体を包み込んだ。アメリカ宇宙軍による攻撃はペンタゴンへと当たり、その余波が周囲を襲った。結界は余波が当たると燃え始め、衝撃を焼き殺した。そして、ペンタゴンは閃光を受けて激しく輝きを増し始めた。

「それでは、俺は行く。今日は番を請け負ってしまったからな。」

「ふぅ~ん。まあ、頑張って。私はチョコレートでも食べてるよ。」

 そこで会話は終わり、ミハエルは外へ向かった。


 晴れ渡る夜空に星はほとんど見えなかった。ペンタゴンの輝きが眩しすぎるのだ。そして、そのペンタゴンから数多の何かが出てくるのが見えた。

「ドローンか。ウォームアップにはちょうどいい。アクティベーション。」

 ミハエルはここで魔法を展開した。剣を手に取り、向かってくる大量のドローンに向かって横に振りかざした。剣から出た斬撃波がドローンに当たり、炎が上がった。地上からの侵入を足止めすると、今度は空からドローンがやってくる。ミハエルは空に剣を向けて唱えた。

「煉獄より産まれし不死鳥よ、

  炎天、業火、熱波を布教せよ、

  Sengenゼンゲン!」

 一度ペンタゴンに対して使った魔法だが、今回はドローンの大群に対して放った。炎の鳥たちはドローンに突撃して、ひとつひとつが猛火をあげた。その炎は空で連鎖をし、夜空を紅に染めた。


 寝ていた私は危機を察知して起きた。予測魔法で状況を把握し、しがみついていたアンをどうにか起こさないように静かに取り払って、外へ出た。地上の向こうや空は炎に包まれていて、その奥にペンタゴンが異様な雰囲気で光を放っていた。

「起きたか。」

 ミハエル中将が私に気づいて声をかけてきた。

「何か良くない気がしたので。」

「そうか、では君の、結衣の力をみせてくれ。もちろん援護もするし、こちらも積極的に行く。」

「敵の殲滅でよろしいですか?」

「ああ、いい。」

「アクティベーション。」

 私は魔法を展開し、剣を手に飛翔した。高速魔法で敵群まで近づき、予測魔法を使いながら敵を剣で倒していく。空中の敵を一掃した後、結衣は詠唱した。

「満天の星々が光り輝く、

  星空の神、アストライオスの恩恵を受け、

  われに星を支配させたまえ、

  スター・コントロール!」

 結衣は宇宙における天体の動きをその目に宿すことを可能にし、さらに詠唱をした。

「我、アストライオスの化身として、

  汝らに天罰を与える、

  メテオ・シャワー!」

 もとはプライマリーのメンバーであった者が使った予測魔法の一種で、天体である隕石を呼ぶ強力な魔法である。すると、何をしようとしているのかを悟ったミハエル中将は制止しようと叫んだ。しかし、隕石は止まることなく地球に向かい、ミハエル中将が恐れていたことが起こった。隕石がアメリカ宇宙軍の衛星兵器と衝突をし大爆発を起こしたのだ。その兵器はお得意の原子力を糧としているため被害は予測できた。ミハエル中将は仕方なく剣を空へ向けて魔法を詠唱した。

「我が祖国の先人ニーチェは言った、

  『神は死んだ』と、超人たる印を刻み、

  神の威光を焼き切れ!

  Zartošt(ツァラトゥストラ)!」

 先ほども使った結界を空広範囲に渡って展開する。隕石と兵器の破片が結界にぶつかる。しかし、結界はその炎を持ってしても破られそうだった。それを見ていた私は事の重大さ、己の誤ちを自覚し、詠唱した。

「アステカの創造神テスカトリポカよ、

  悪魔と化し、あらゆるものを無へ還せ、

  リバース!」

 暗闇魔法の一種、総司の得意技で危険物のほとんどを消した。残ったのはひとかけらの隕石で、それは本来結衣がしようとしていた敵の大群に当てて一掃することをその一つで成し遂げた。これで大方のドローンは片付いた。


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