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エンドレス・マジカルライフ  作者: 沖田一文
【第三章】学園長編
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第三章9話 『無効化能力』

 テロリスト掃討作戦を行い、私たちは最後の第3地点に向かった。そこは都会の建物が建ち並ぶエリアと山林との境にある住宅地の奥にあった。一見ただの山林のように見えるが、その地下には広大な施設が広がっている。その様子を私の予測魔法は察知したのだ。

「地下に何かあるのは分かったけど、問題はどうやって入るか、ね。」

 会長が問題提起する。

「なら、地面をえぐるなりして生き埋めにしたら?」

 最上奈桜が興味なさげに言う。

「なるほど、それはいい。ぜひやってみよう!」

「うっ、やっぱやめたわ。季賢と同じなのはイヤ。」

 賛成した伊達季賢を受けて奈桜は撤廃する。

「それに結衣の方針に背くことになるしな。その辺にあるマンホールが入口だろうが、1人ずつ入るっていうのは敵の罠でしかない。」

 さらに天遥が以前と同じように冷静に物事をすすめる。

「それなら私に任せて!」

 元気に手を挙げたのは和賀木稲(わがこのみ)だった。

「マンホールってことは水があるってことでしょっ?水と植物は私に任せて。フロート。」

 そのまま木稲はマンホールを浮遊させて退けると、魔法を唱えた。

「天の恵みを授かり、漲るパワーをもつ生命たちよ、

  そのパワーをちょっと拝借させて下さい、

  プラント・ドール。」

 山林に生い茂っていた木々が根を土から出し、動き始めた。

「でも、これだとマンホールの中に入らないよ?」

 ついつい気になったことを口にしてしまった。

「大丈夫。ロープ・プラント。」

 木々の枝が伸びてマンホールの中へと入っていった。すると、中から人の叫び声がいくつか聴こえてきた。

「よし、これなら不意打ちはないだろう。今回は今までとは違う気がする。慎重に行こう。」

「それなら、私が先に行くわ。」

「会長が?」

「天遥、さっき自分で言ったじゃない、『慎重に行こう』って。先頭は私に任せなさい。」

「会長がそれでいいなら。」

「それと結衣ちゃんは一番後ろね。私たちの背中を頼んだよ。」

 私は頷き、みんなの最後尾として地下へ入った。はじめは狭い通路で、さらにそこに木稲の木の枝がテロリストたちを絡めていたから進むのは大変だったけど、私たちは広い場所へとたどり着いた。そこに銀髪の男が立っていた。


「まさかここに来るのが学園の生徒とは、不思議なことがあるものだ。」

 その人は武器も持たずにラフな格好で立っていた。

「あなたは何者?」

 会長が当然の質問をする。その人はウロウロしながら話し始めた。

「私は魔法を嫌いとするものたちのまとめ役をしている豊富吉光(とよとみよしみつ)という。そしてここはそのものたちの武装訓練をするための場所だ。つまり、ここには訓練したての猛者たちがたくさんいる。そして君たちはその相手となってもらおう。魔法なんてものを使わないで正々堂々とね。」

 吉光が手を叩くとぞくぞくと武装した人たちがこの部屋に流れ込んできた。

「武装といっても身軽さを重視しているから、剣や銃なんかを持っただけなんだけどね。君たちが人間としてどのくらいなのか楽しみに見てるよ。」

 そう言って高みの見物を決める気だった。私は吉光を先に捕らえようと動く。その時から戦闘が始まった。


 しかし、問題が発生した。私たちが手にしていた武器は消え、魔法が使えなくなった。それを見た吉光はふっと笑い、動きを鈍らせた私に蹴りを入れる。私は両手で受けるが、2度目の蹴りで飛ばされてしまった。壁に追い込まれ、そこからみんなのことを見たがやはり混乱しているようだった。魔法が使えなくなり、武器が消えてしまってはどんなに剣が上手くても意味が無い。だがしかし、会長はものともせずにみんなを守りについた。

「止まれ!」

 会長の言霊によって敵は全員動きを止めた。

「武器を捨てよ!」

 敵は彼女の言いなりになって剣や銃をその場に捨てた。それらの剣を南条師行(なんじょうもろゆき)、浪岡広海、岩清水愛、葛西天遥、最上奈桜、石亀明久、安東紫乃、伊達季賢、仁賀保常文(にがほつねふみ)らは拾い上げ、構えた。

「これは驚いた。まさか魔法使いだけでなく、能力者までいたとは。」

 様子を見ていた吉光が私から離れて須藤未希の方へ行く。

「これは、君たちは武術の達人と見た。君たち、魔を捨て我々の仲間にならないか?」

「お断りします。あなたが何をしたいのかは知りませんが、こうして軍でもない人たちが武装している時点で犯罪者よ。すべてをあきらめて投降しなさい。」

「投降したところで誰が得する?」

 吉光は会長に近づく。

「止まれ!」

 吉光は会長の言葉を受け、立ち止まった。

「すでにあなたは詰んでいる。」

 会長の言葉を聞いた吉光はニっと笑い、会長を前蹴りした。

「私の前ではすべてが無になる。魔法であれ、能力であれ、無にすることができる。そして政治だろうが、法だろうが私には無意味だ。私にとって、私だけがすべて。誰も私には逆らえない。」

「それなら、あなたが表に出てくればいい。なのに、あなたは表に出なかった。それはあなたの能力が完全ではないから。あなたの言動は間違っている。能力への理解もその使い方も。私たちはあなたに逆らう。そしてあなたの望む人間としての戦いをしてあげましょう。」

 会長はみんなの支えを受け、立ち上がり言った。吉光は高笑いをしている。

「自分がめちゃくちゃだということはわかっているみたいね。大人しく倒れなさい。」


 決着はいたって簡単だった。会長と吉光との一騎討ちで格闘戦が行われ、会長の猛烈な攻撃によって勝敗は決した。


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