第三章7話『選抜メンバー』
「敵襲!?みんなはとりあえず基地に戻って!」
危険を察知した私は試合を中止し、避難を指示した。しかし、須藤未希は従わなかった。他を避難させて増援依頼を指示した。
「ここは私一人で大丈夫。だからここから離れて。」
「いいえ、私も残ります。まずは学園長の回復を。」
再度の私の指示をおさえて未希はここに残ることを宣言し、私を回復させた。
「敵は本当に来るのですか?」
いつものキリッとした感じで訊いてくる。
「水平線の向こう側からやってくる。今はまだ視認できないけどそのうち見えてくるはず。」
「それでいったいどうするつもりですか?」
「こちらから敵を排除しよう思う。けど、あっちが先みたい。敵戦闘機がこっちに来てる。ここに来るまで数秒とかからないはず。」
私はそう言いつつ、前に出てシールドを展開した。それは敵の戦闘機がすでにミサイルらしきものを数発発射していたからである。飛来物そのものは防ぐことができたがその爆風は吹き荒れる。
「私が敵を倒すから、あなたはここで支援魔法でもしててちょうだい。」
「わかりました。学園長の戦いぶりをみるいい機会です。」
会長は防御と速さを向上させる魔法を使用した。私はそのまま私たちに突撃しようとしてくる機体を前にした。ここで機体を落とせば操縦している人たちは命を落とす。しかし、やらなければ私たち、いや会長の命が失われる。はやくもこのジレンマに陥ってしまう時がきてしまった。これが戦争というやつなのか。自国を守るために、人々を守るために、敵の命を奪い合うしかないとするのが戦争。すべての人を救うことはできない。ただ己の正義のために、私たちは闘う。
「忌み嫌われし我が力よ!
天に居座る堕落した神々の幻惑を、
その穢れをもって禊たまえ!
Anti Gods Mischief!」
詠唱を終えると、隊列を組んで向かってきていた機体が闇にまみれて消えた。
「アパートファイアボール。」
お馴染みの魔法をすぐに機体の消えた方角へ放つ。すると、機体は消えた場所から少し離れたところに現れ、すぐに放った炎に当たって墜落していった。本当はもっと離れたところからやり直しをさせてどうにかしようと思ったけど、思ってたより出現場所の距離が無いことを予測魔法で察知し、仕方なく撃ち落とした。その結果、敵艦隊は回航し、離脱を始めた。それを追尾しようとした会長を押し留め、私たちは水平線のはるか向こうに見えなくなるまで見届けた。
その後、私たちは学園の生徒たちとともにハワイ基地を去り、学園へ戻った。そして、合宿を閉める式が執り行われた。その式で私はドイツ派遣のことを説明し、選抜メンバーを発表した。メンバーを最終決定したのはその直前で、会長もメンバー入りさせた。選ばれたメンバーはその場で有賀総長から正式に任命を受け、生徒たちから激励の拍手を受けた。式が終わり、生徒たちが解散し始めると、選抜メンバーを学園長室に呼び集めた。それはもう1つの任務内容を伝えるためである。
「学園長、全員揃いました。」
「うん、じゃああなたたちにもう一つの任務について説明します。」
「もう1つの任務とは、それはドイツ派遣と関係があるのですか?」
「それは何とも…。ただ、戦闘をするということは間違いないです。」
「その任務とは?」
「国内におけるテロリストの排除をせよ、ということで魔法使いに対して反発をする人たちを捕らえるあるいはそれができないなら命をとっていいという命令がきました。そして、その実行日が明後日です。」
「私たちがその作戦に参加するというのは、派遣するに至っての最後の実戦訓練になるからということですか。」
「さすがは生徒会長。その通りです。」
「でも、さすがにいきなり明後日って言われても。」
「そうですね、相馬海人さん。あなたの言う通りです。でも、これは決定事項で軍参謀本部から直々の指令です。派遣メンバーとなったあなたたちは今日をもって軍の一員となり、命令を拒否する権利はありません。残念ながら私もですが…。というわけで明後日は作戦に参加します。そのかわり、あなたたちは何もしなくていい。私がすべてをやり遂げます。」
「それでは命令の趣旨に背くことになるのでは?私も戦います。」
「会長、私もやりましょう。いや、ここはみんな団結して戦いましょう!」
「何言ってるの!?私は季賢となんかと一緒に戦いたくないね!」
「奈桜ちゃん、しーっ。季賢くんも、ね。」
熱血な伊達季賢と彼と仲が悪い最上奈桜を優しく黙らせたのは大宝寺月海という生徒だった。
「まあ、私は美味しいものが貰えるならやってあげてもいいよ。」
「何そのかんじ。私とキャラカブるぅ。私ならあ、こうやって、あ・・・・。」
「愛も木稲も静かに。話が進まない。」
「天遥の言う通り、私たちは今選抜されておきながらナメられてるのよ。」
会長がキリッと横目でざわめきを鎮めた。
「会長、ここは一つ学園長に言ってあげて下さい。」
冷血な葛西天遥が会長に促す。会長はそれに応じて発言した。
「学園長、私たちも戦います。ですから、私たちを生徒としてではなく、仲間として接して下さい。ひとつになって成し遂げましょう。」
会長の言葉に生徒たちは全員頷く。
「分かりました。ただし、全員無事でいること、それから敬語はやめること、これができるなら一緒に頑張りましょう。」
再び生徒たち、私の仲間たちは頷く。
その後は簡単に能力の確認や作戦の詳細の確認などをして、あとはその日に託した。




