第三章3話 『就任3日目』
9月12日、今日は昨日の夕方に生徒会長から圧がかかった合宿の件についてその相談をするため昨日と続いて再び有賀総長のもとへ向かった。
「それで今日は全校生徒が合宿できるところはないかと尋ねてきたわけだね。」
「はい、どこかないでしょうか?」
「はっきり言うと全校生徒となるとないね。それと合宿といっても宿に泊まるのか、野営をするのかというのもある。あと、ゲートというものを使えばすぐに戻ることも可能だ。」
「でもそれだと普段と変わりないですよね。」
「それなら、ある程度別れて別々なところで合宿をすればいいんじゃないかな。」
「確かに、生徒たちにはチームを組むように伝えてありますのでいいかもしれません。」
「もともとあの学園は分隊を組んであるはずだかね。」
「でも、それは上級生ぐらいだったかと。」
「そうか、それならレベル別にして合宿をするということでいいのでは?」
「そうですね、それでいきます。」
「内容はどうするつもりなんだい?もし、決まっていないのなら国防軍が全面協力して演習をしようか?」
「そんなことをして大丈夫なんですか?」
「戦力を揃えるのもまた軍の役目だからね。もしよければプログラムをこちらに一任してくれないかな?」
「ぜひお願いします。」
私は立ち上がって直角に頭を下げた。
「明後日までに仕上げておくから。」
「はい!お願いします。」
話が進んだところで部屋に人が入ってきた。
「参謀総長、連絡が。」
その人は有賀総長の耳元で情報を伝えたのち、退室した。
「それじゃあ、お土産に新鮮な情報を伝えよう。さあさあ座って。」
私はソファに座り、総長に耳を傾ける。
「今入った情報はね、ロシアが参戦するというものでね、本日日本とドイツとロシアで同盟を締結したということなんだ。これで戦況に何らかの影響が出るはずだ。」
「ロシアですか。」
「ドイツが密かに交渉をしていたらしくてね。アメリカと中国を凌ぐ対抗国だね。」
「そもそも私たちはなぜ2つの大国を相手に戦争を始めたのですか?」
「日本の建前としては、大国が有している膨大な土地を利用して国民の食糧を確保するためと世界の新たなる平和のため、という理由だ。2つの大国によって世界が揺さぶられ、平和すら危うくなる。私たちは振り回されるのにうんざりなんだ。」
「だから、ドイツという友好国とともに世界の覇権を握れば、世界の秩序が維持されると・・・。」
「そのとおり!」
「でも、私たちがしているのは立派に侵略行為ですよね。私たちが戦争を始めなければ世界はまだ平和のままだったはずだと思うのですが。」
「しかし、今は止められない。我々は目的をやり遂げるしかないのだ。目的を達成するその義務を果たすことによって世界を守ることができる。今は勝つために努力するべきなんだ。」
「そ、そうですか。」
「はい、この話はおしまい。お昼一緒に食べていくと言いたいところなんだけど、残念ながら忙しくなりそうでね。」
「わかりました。私はこれで失礼します。」
「悪いね。合宿の件は任せておいて。明後日にまたおいで。」
「はい、ありがとうございました。」
こうして、私は参謀本部を後にし、学園へ戻った。
午後は学園内を見てまわった。学園は西洋の造りをしていて、ゴシック様式っていうだっけかな。とにかく豪華というか立派な貴族の屋敷のような建物だった。さすがにプライマリー時代の面影はなかったが、我が家を思い出すので悪い気は起こさなかった。生徒たちは座学や実演などそれぞれ授業を受けていた。それらを見ているとなんだか私が授業をサボっているみたいだった。学園内を外も含めて全て回った頃には夕方になっていた。放課後になった学園には生徒たちの騒ぐ声がこだます。青春を表す放課後の光景に私は、自分が何事もなくただの人として生きたのならあんなふうに青春をしていたのかな、と懐かしのあの地、懐かしの友たちを想像し黄昏ていた。そんな思うこといろいろなことを抑えて自分の部屋へ戻った。
部屋に戻ると工藤さんが「お茶にしますか?」と尋ねてくる。それもいいけど今日は気分じゃない。「では、私は食事の準備をして参ります」と工藤さんはキッチンへ向かった。私はベッドにダイブして布団に抱きついた。それから、窓の外を眺めると再び思いふけっていった。夕空を視界に入れながらもあの日の夜のこと、あの組織のこと、私の婚約者のこと・・・などが脳裏をよぎっていく。そうして眠りにつきそうだったところを工藤さんの呼びかけによって意識は戻った。夕食ができたということで私は席について食事をした。しかし、その間も心ここに在らずといった状態で、その状態は入浴を挟んでベッドに入るまで続いた。




