第二章α14話 Glück
あの後、私たちは焼け野原となった地を進み、アメリカ制圧本部があったホワイトハウスへと行きました。すると、焼け野原の中にぽつんとホワイトハウスが建っていました。そこにはミハエル中将をはじめとした本部いた魔法使いたちがいました。ミハエル中将は私たちを視認し声をかけました。
「無事でしたか、エーミール少将他ニンフェンブルク小隊。この惨事を生き残るとはさすが前線のエース集団といったところです。」
「ゴホメニアズカリコウエイデス。」
中将の言葉に少将は棒読みで返しました。
「君たちが知りたいことはだいたい把握済みだ。だから、ここで話しておこう。」
そしてミハエル中将は現状を話しました。
「まずはこの攻撃はアメリカ宇宙軍によるものだ。この攻撃は一度ドイツ国内で受けている。しかし、今回もまた予測できなかった。今回生き残ったのはここにいるもので全員だ。だいたい魔法使い50人ほど。ここにいた陸軍は全滅。他の魔法小隊もだ。装備も含めてその形、物体の確認すらできないほどだ。塵にはなってこの地に在るだろうけど。あの光線によってペンタゴンの半径10キロ圏内がこんな感じだ。そして、いつまたアレが来るのかという恐怖もあるが、この人数だけではとうていここに拠点を置いたところで何もできない。だからといって国に帰る訳にはいかない。アレの対処方法を予測魔法部隊に探らせているが、今のところ、ない。とりあえず、俺だけは国に戻って参謀会議に出てくる。それまでの間、ここをお前たちに預ける。頼んだよ、兄さん。」
「なんで俺なんだ?」
「これだけ人数が減ると組織変革もありうるから昇格できるかもしれないが・・・。」
「分かった。俺にふさわしい役職を頼む。」
そうしてミハエル中将は本国に戻っていきました。
予定していたアメリカでの作戦がすべて完了し、深夜にドイツ軍参謀会議が開かれました。参加する者たちは、ゲートによって会議室に集まり、その会議室は魔法によって空間を隔離し外部干渉を絶ちました。議題は戦況報告と今後の作戦についてです。戦況報告は各軍の代表が行い、問題点も提示しました。重大なのはやはりアメリカ方面軍の多数損失でした。優秀な人材も多く含めた損失はドイツ軍の戦力を傾けます。しばらくはアメリカ侵攻を休止し、拠点維持に尽くすことになりました。軍の組織変革も行われ、ニンフェンブルク小隊は戦略魔法機関所属となりました。国としての方針は日本との共同作戦や同盟国の増強となりました。
アメリカ某所でも会議が行われていました。
「以上の作戦により、占拠されたワシントンは壊滅し、本土にいるドイツ軍の多くは戦力を失いました。」
「しかし、ヒューストンはやられたのだろう?」
「基地は壊滅されましたが、さほど問題はありません。アレの操作権は国防総省にあります。」
「その国防総省は今どうなっている?」
「強固な守りは破られておらず、内部も機能しています。」
「敵に首都を渡すとはやはり間違いではなかったのか、大統領?」
「ここアメリカは合衆国。首都はいくらでもある。それに副大統領の言う通り、いまだに国防総省は健在だ。」
「アメリカ合衆国の首都はワシントンだけだ。それは州都に過ぎない。」
「なんだろうと、政治が機能すればそれで良いのだ。それに今はこんなことをしている場合ではない。重要拠点を幾つも奪われている。」
「それをそうさせたのは大統領、あんただ。」
「もういい、君は出ていってくれ。さあリック下院議長のお帰りだ。家までお送りしてやってくれ。」
ラザフォード大統領は批判ばかりするリック下院議長を議会から追い出しました。
「さて、気を取り直して話を進めよう。ジェラルド副大統領、進めてくれ。」
「では、現在日本とドイツに挟まれ、アメリカは侵略を受けている。このままではいずれ東と西とで攻め落とされるだろう。そこで、我々は守備ではなく、攻撃に転ずることにより、敵の兵力を削ることを提案する。そして、戦力を集中させまずはアメリカの国土を奪還する。陸軍と空軍と魔法軍による攻撃をもって、まずはフロリダを奪還、敵空軍、海軍の拠点を砕き、それから孤立同然の首都ワシントンを奪還する。この間、海軍は戦力増強を計り、本作戦段階が終了した後、海軍総力と空軍、魔法軍の力をもってして日本艦隊を撃破、ハワイを奪還するものとする。」
「要は主力で叩きのめすということですね。」
「まあ、ヘンリー陸軍元帥の言うとおり、全ての軍を統括して対抗するということだ。」
「それでは大統領、あなた自らが軍を指揮するのですか?」
「いや、私はあくまで文官だ。そんな能力はない。だから6軍を統括指揮する統括司令長官を任命する。」
「そんな大役を誰が?」
「国防長官を務めたことのあるルイス・フォレスタル氏だ。」
「しかし、国防長官も文官では?」
「いや、ルイスは今、サイバー軍の一員となっているため立派に軍人扱いだ。」
「エドウィンサイバー軍元帥!」
「なんだ、トルーマン・パウエル空軍元帥。私が口を開いたくらいで驚くのか。彼は軍事に関してかなりの知識を有している。きっとこの国を良く導いてくれるだろう。」
「ご理解いただけたかな、各軍の元帥殿。彼の階級は置いといて、今後彼の指示は大統領である私の指示と同じものとしてもらって構わない。むしろ、そうしてくれ。じゃあ、最後に副大統領。」
「ええ、各軍は今後に備えて軍を整えておくようにお願いします。具体的なことはルイス統括司令長官からお伝えしていただくとします。では、今回はこれで以上です。」
こうして、アメリカの秘密の会議は終了しました。
各国は怯むことなく、軍事により一層力を入れていくことになりました。果たして世界の命運はどうなるのか、私たちの命運はどうなるのか、まだまだ闘いは終わらず、続くのです。
ドイツ編はとりあえずおしまいです。今後、別タイトルとして投稿する予定ではありますが、確証はないです。というわけで次回からは本編に戻ります。




