第二章α13話 Pentagon-Eroberungsschlacht Ⅱ
陸軍は砲撃を再開し、魔法軍も力を解放するかのように好き放題攻撃を始めました。まさに総攻撃というものです。機関の魔法使いも空中から強力な魔法を放っていました。これだけの攻撃を受けてもペンタゴンは崩れもせず、割れもせず、ビクともしませんでした。この防御力を盾にジェシカたちアメリカ魔法師団は前線にいる私たち魔法大隊をターゲットに攻撃をします。さらには遠方から放たれた空対地ミサイルが陸軍の装甲師団に命中しました。これに対抗するためミハエル中将や陸軍の司令官はフロリダ基地の空軍に出撃要請、近くの水上に待機している大洋艦隊第一艦隊にも艦対地ミサイルの発射と艦載機の発艦を要請しました。本国の予測魔法部隊ニーナ大佐の協力を経て艦隊は正確な座標位置にミサイルを全弾発射しました。すぐ後に艦載機が発艦し、ミサイルの命中率を支えます。しかし、艦載機のような戦闘機では空軍戦闘機に劣ります。まとめて撃墜されてしまいました。そこにフロリダから到着した空軍戦闘機群が加勢し、ペンタゴン攻略戦への邪魔を排除し、別口で攻防を始めました。艦隊から発射されたミサイルはペンタゴンに全弾命中、綺麗な放物線を描いて命中しました。爆煙が収まるまで一時的に攻撃をやめ、結果を見守ります。しかし、何事も無かったかのようにペンタゴンは無傷でした。
「今のうちにまずはアンを狙いなさい!」
戦意を失いかけたすきにジェシカが追い討ちをかけます。私は集中砲火を利用して攻撃反射し、その力を相手に返しました。もちろん、ペンタゴンにはダメージがありません。お互いに魔法の猛攻撃を続け、ある時を境にアメリカ側は攻撃をやめました。
「ゲートを使って撤退よ!これは私たちの負けではないわ。こっちの死者はゼロなんだから。それじゃあバーイ。」
ジェシカたちは姿を消しました。
その後、ドイツ軍は首都ワシントンに入り、官邸や議会を占拠し、ドイツの旗を掲げました。ペンタゴンの内部には入ることができないもののアメリカ首都制圧を完了させました。
アメリカ某地点にラザフォード大統領は潜んでいました。
「大統領、予定通りドイツ軍がワシントンを占拠しました。」
「例の準備はできているか?」
「はい、実行の指示を!」
「うむ、では実行するように伝えてくれ。」
秘書から報告を受け、予め会議をして決めておいたミッションをする司令を出しました。秘書はすぐにその司令を他に伝えました。
アメリカ現地13:00頃、ワシントンを制圧したドイツ軍は現地調査をしていました。危険物の捜索と物資の探索などを含め、ほとんどの部隊がその任務に関わり、ワシントン内部あるいはペンタゴンを含めたその周辺を調査しに出ていました。私たちニンフェンブルク小隊はペンタゴンへの侵入をするための調査をしていました。
「あいつの命令を聞かなきゃならないないのは気に食わないな。」
「ミハエル中将のことですか?」
「ああそんだが、その名前すら聞きたくない。あいつの方が強いだの位が上だの全てが気に食わない。生意気だ。」
「隊長は椅子に座って指示を出すだけと、指示は出されるけど外で好き勝手にできるのとどっちがいいんですか?」
「確かにそうだな。俺は収まることができないんだな。ありがとう、アン。」
私とエーミール少将は2人で話しながらペンタゴンの周りをウロウロしていました。戦闘後、再び曇った空を見上げたエーミール少将は何かを感じとりました。
「全員集合しろ!!」
普段とは変わって危機感を感じた様子のエーミール少将は珍しく焦っていました。ヘンリー大佐がやってくるとすぐに確認をしました。
「間違いない来るぞ!」
「アン、すぐに魔法でみんなをここに集めろ!」
エーミール少将に言われて私は慌てて予測魔法を使い、みんなの位置を確認し、みんなを転移させました。その間に少将はワシントン制圧本部が置かれているホワイトハウスのミハエル中将に事を伝えていました。
「来るぞ!」
「全員、結界を重ねて展開しろ!」
ヘンリー大佐の情報を受け、少将は叫びます。小隊全員で集まり、幾重もの結界を展開させました。すぐに空が光り、光線が地上に落ちてきました。ペンタゴンに命中したそれは衝撃波を周囲に放ち、物凄い熱量で辺りを破壊、焦土と化しました。たった数秒間であってもその威力から小隊全員を損耗させました。かろうじて結界は数枚残り助かったものの、辺りは酷く荒れ、焼け野原となっていました。しかし、唯一ペンタゴンだけはそのまま残っていました。
「俺たちはなんとか生きてるようだな。」
呼吸を整えながらエーミール少将が呟きます。
「まさか自分たちの首都にアレを放つとは。」
「ヘンリー大佐、まずは現状を把握できるか?」
「ちょっと休ませてほしい。」
「分かった。」
私たちはその場で魔力と体力の回復のために休憩をとりました。
この状況に誰もが受け入れずにいました。他に生存者はいるのか、この後どうなるのか、この戦争に勝てるのか、様々な不安が各々に降り積もっていきました。




