第二章α11話 Schlacht von Fredericksburg
ドイツ時間12:00、アメリカ現地時間6:00に首都侵入作戦であるフレデリックスバーグの戦いが始まりました。ここフレデリックスバーグは、南北戦争でも戦場になったところです。郊外では陸軍の戦車を中心に激しい砲撃が行われています。一方、魔法軍の一部として私たち第一攻撃大隊はフレデリックスバーグの市街地に来ていました。市街地を抜けて一足先に進撃しようという考えでした。ところが、市街地では敵魔法使いたちが潜伏していて、足止めをされていました。ヘンリー大佐ら予測魔法使いたちが敵の攻撃を察知し、指示を出します。敵からの攻撃を防いでも、反撃をすることはできません。敵のところへ向かうと集中攻撃を受けてしまうからです。それを実証してしまったのが大隊長でもあるエーミール少将でした。先刻の戦いのこともあり、魔力や体力に無理があるところをそれでも敵を派手に狩ろうとした結界、負傷してしまいました。
「俺はまだまだ行けるぞ。」
「大隊長が先に殺られては困ります。今は大人しく私の指示に従って回復を受けて下さい。」
エーミール少将に対して小隊のメンバーであるミリー大佐はお得意の回復魔法をかけ、少将をなだめていました。
「何かこっちに向かってくるな。あれは・・・ドローンだ!すぐに防御結界を!」
ジョセフ少佐がヘンリー大佐の指示に応じて鉄の防御壁を出現させました。角を曲がってきたドローン集団は下部についていた機銃で連発してきました。ジョセフ少佐はさらに防御壁を展開させて、これらを防ぎました。連撃が終わると、ノア中佐が防御壁の周囲に雷撃をして、ドローン集団を撃墜・破壊させました。防御結界を解き、一息つこうとしたところ、ヘンリー大佐はさらに指示を出しました。
「まだだ。今度はデカい物体が来る!無人攻撃機のロボットだろう。何台か別々にやってくる。挟まれたら厄介だ、散開してコイツをなんとかしてくれ。」
各自バラバラに逃げ、敵機を巻きますが、そこに敵魔法使いが介入します。私はエーミール少将とミリー大佐と一緒にいたため、負傷している少将と治療している大佐を守るために魔法を発動しました。
「Angriff Reflexion[攻撃反射]!」
足元に私たち3人が入るほどの白い魔粒子で魔法陣が浮かび上がり、描いた文字を軽く押し出すとすぐに文字は消えてその効果が魔法陣を介して3人に行き渡りました。これによって敵のある程度までの攻撃を反射させることができ、反射した攻撃は周囲のモノや建物を壊していきました。
「ふん、成長したな、アン。同時に魔法をかけられるようになったのは大きいと思うぜ。」
エーミール少将は私を褒め、頭を撫でてきます。
「や、やめてくださいー。ここは戦場なんですから。」
「まあまあ、そう気にするなって。本当は褒められて嬉しいんだろ?可愛らしいところがあるじゃねえか。」
「どこのおじさんですかー。」
「俺はまだそんな歳じゃねえ。」
「ふたりとも随分と仲がいいですね。」
「そうか?」
「盛り上がるのはいいですが、この状況を打破しましょう。」
照れからきたやり取りのうちに私たちのまわりには敵魔法使いが私たちを取り囲んでいました。
「よしアン。今回の課題を出そう。アン1人だけの力でこの街を突破するまで俺たちを守り、敵を滅ぼせ。いいな?」
「え・・・。」
「これは命令であり、拒否権はないものとする。頼んだぞ。」
会話が終了すると、敵は同時に魔法を発動させました。私はとっさの判断で私たちの地点を転移させて、魔法を回避しました。
「はははっ。自滅してやがる。面白いな!」
エーミール少将は転移先の地点から元いた場所を指さして笑っています。円形になっていた敵は私たちがいなくなったことによって味方の魔法をお互いに受けてました。それも攻撃反射に対応した強力な魔法のため全滅までいたったようです。私は予測魔法の効果を3人に付与して敵の攻撃を察知できるようにしました。
「なんかこの魔法、気持ち悪いなあ。」
エーミール少将がそう呟きます。予測魔法は脳裏に少し先の出来事を映し出す魔法でもあるため、予測魔法使い以外の人はそう思うのもあるのかと思います。私はそうでもないのですが。
予測魔法によって敵の攻撃が分かるとその攻撃位置に向かってニンフェンブルク小隊のメンバーたちが使う魔法を利用して敵を倒していきます。しかし、高速魔法使いが相手だとある欠点によって攻撃が当たりません。
「アンはどんな魔法でも使えるかもしれないが、文字を描かなければならないのは時間的に不利になるな。それに、アンは何かを媒体して攻撃をする。自分で動いて攻撃することはないよな。」
エーミール少将の言うとおり、この魔法にはそんな欠点があり、そして私は自身の攻撃手段がありません。剣技とかの武術は知らないのです。高速魔法使いの多くは剣術などを使った戦闘をする人が多いので、私にとっては難敵にあたる存在でした。でも、剣を使わなくても私には他の手段を使えます。それがどんなものであろうと戦いにおいては関係ないと私はここ数日で知りました。
「Stoppen Sie die Zeit[時間よ止まれ]!」
敵自身ではなく、その周りに発動させることによって敵の動きを止めました。
「Zerlegen[分解せよ]。」
そして確実に敵に対して魔法を使い、消滅させました。
「やったな、アン。さすがは怪物の弟子だ。」
「結衣は怪物ではありませんー!」
「だったとしても、人間とも言えないだろ?」
「・・・。」
「まあいいさ。さっさと行くぞ。もうみんなが待ってるかもしれない。」
エーミール少将はミリー大佐と共に歩きだしました。私は気を重くしながらもあとをついていきました。




