表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エンドレス・マジカルライフ  作者: 沖田一文
【第二章α】‬世界大戦ドイツ編 アンサイド
108/158

第二章α‬9話 Schlacht bei Richmod

 ドイツ時間14:00頃、サバンナを制圧した私たちドイツ軍は、待機組の魔法軍を街に置いてさらに北に向かって出発しました。約3時間後ドイツ時間17:00、現地時間11:00頃に再び戦闘が始まりました。しかし、その1時間前にはドイツの潜水部隊が3部隊を母国に残し、残り7部隊が大西洋に進出を完了させ、更なる大西洋の覇権を強固なものとしました。そして、フロリダ基地から出た大西洋艦隊の第一艦隊はサバンナの北東にある港町・チャールストンを砲撃・空襲をしました。そして、ドイツ空軍は戦闘機複数をフロリダ基地への移送を完了させ、フロリダ基地の新たな守り主となり、ドイツ軍はすべての軍においてアメリカを攻撃する準備が整いました。そのため、今回勃発したフローレンスの戦いはドイツ軍にも空軍という支援が加わり、いっそう熾烈なものになりました。また、フロリダ基地から西に向かったドイツ軍はモビールにてほぼ同時刻に戦闘となりました。そこでは大西洋艦隊第二艦隊がアメリカの海軍と戦闘となり、湾内で海戦も行われました。それから5時間ほど後にもニューオーリンズにて戦闘が起こりました。この戦いは陸軍に空軍と海軍、魔法軍が加担し強力な戦力のもと行われましたが、アメリカ側も戦闘の知識の差からか粘り強く反撃を繰り返しました。これまでの戦闘は最終的にドイツ側が勝利しましたが、作戦予定時間を遅らせる原因となりました。

 現地時間18:00。アメリカ東部戦線ドイツ軍はリッチモンドという都市に到着し、この日最後の戦闘に入りました。リッチモンドはアメリカ南北戦争において南側の首都であったところです。アメリカ側は初めて魔法軍のみを戦闘に投入しました。そこにはフロリダ基地で戦ったことのあるジェシカもいた、というかジェシカが軍を率いていました。

「早いうちにまた会えて嬉しいわ。アン、エーミール。」

「アン、とっととゲートを開け!」

「そうはさせない。ライアン!」

 ジェシカの指示にライアンという男性が魔法を発動させました。それは結界で私たちとリッチモンドの街を含めた大きさに結界が立方体状に展開されました。

「援軍は来ないわ。あなたたちニンフェンブルク小隊だけでその陸軍を守れるかしら?フィールド。」

 どうやらジェシカはすでに戦闘モードに入ったようです。私たちもアクティベーションして魔法を展開させました。ニンフェンブルク小隊30人に対して相手は約500人。アメリカの魔法使いはまだまだいますが、現状況としてこの数は多いです。今までドイツ軍がどれだけのものを有して戦っていたのかが分かります。

「アン。俺たちがどれだけ強いか見せてやるから、勝てそうにないなんて弱気なことを思うんじゃないぞ。行くぞ、みんな!」

 エーミール少将は士気を上げて最初に攻撃を仕掛けました。

「闇夜に光輝く、一つの炎が燃え上がる、わが民の道しるべとなるだろう、燃え上がれ、ファイアーロード!」

 エーミール少将の前方一直線上に炎が舞い上がり、街を貫き通し、1本の大きな道がうまれました。敵魔法使いたちは当然のように空へと舞い逃げました。

「陸軍はどうにかこの道を通っていってくれ。向こうに着くまでには殲滅する。」

 陸軍への道を示したことにより、軍全体は前進を始めましたニンフェンブルク小隊は攻守に自然と別れて行動し、ヘンリー大佐は予測の指示を出し、これに応じて各々の対応をみせていました。それ以外に特に指示はなく、バラバラに思えても一つのチームとして機能していました。それに加え、一つ一つの魔法が強力であり、確実に敵の力を削いでいました。そんななか、エーミール少将は1人、敵将ジェシカと戦っていました。お互いの魔法を知る戦闘はより複雑でエーミール少将は案の定苦戦しているようでした。私は陸軍全体への防御魔法などの支援系魔法をかけ終えると、エーミール少将のもとへ加勢しに行きました。


「前と同じやり方じゃつまらないわね。もっと面白くいたぶってあげる。スキルアップ、ハイスピード。」

 ジェシカは自分に強化魔法の一種をかけ、高速魔法の使い手のような素早さをもって瞬時にエーミール少将のところへ寄りました。

「スキルアップ、ハイパワー!」

 そして、素早さと強化された打撃力をもってエーミール少将を蹴り飛ばしました。お腹を力いっぱい蹴られたエーミール少将は剣で刺された時よりも痛く、苦しみを感じながら雑居ビルへと吹き飛ばされました。

「げっほげっほ。はあ、まさか生物魔法以外の魔法同等を使えるとはマジ強すぎ。俺もマジでいかないとな。」

 剣を地面に突き立ててなんとか立ち上がった様子のエーミール少将は詠唱を始めていました。詠唱が進むにつれ、エーミール少将の魔力が高まって溢れ出てくるのが伝わってきます。

「火を司る精霊サラマンダーよ、

  四大精霊に数えられるその由縁を示し、

  炎という己の毒を人々に見せてやれ、

  Gifthand der Flamme[炎の毒手]!」

 溢れた魔力が炎へ変換され、さらにエーミール少将の剣が炎を纏い、そこから垂れ落ちる炎は地面を溶かすほどでした。

「凍れ、マルチバレット!」

 ジェシカは拳銃に前とは別の弾を入れ、連射しました。エーミール少将は動くことなく、周りに充満している炎の魔力でこの射撃を防ぎました。今度はジェシカ自身が素早く動いてエーミール少将の死角を狙って撃ちました。しかし、これもエーミール少将にまでは当たりません。

「これもダメか。」

「そろそろ俺の番と行こうか。」

 そう言ってエーミール少将は炎を纏った剣を天に掲げました。

「溢れ咲け!火炎噴火!!」

 周囲にある魔力を連鎖的に炎へ変えながら、剣から伸びた炎の毒手は天上にある結界へとぶつかりました。それを見上げていた私、アンはマチルダ中佐に抱きかかえられ、いつの間にか陸軍のもとへ移動していました。そこには他のニンフェンブルク小隊のメンバーも揃っていました。

「防御結界を何重にもかけろ!」

 予測魔法使いのヘンリー大佐が声を上げて指示しました。すると、それぞれの属性を活かした防御結界が幾重にも発動され、私たちドイツ軍を囲いました。少しして防御結界が解かれ、外の世界が露わになりました。地面はところどころドロドロで赤く歪んでいて、張られていた外の立方体状の結界は無くなっていました。リッチモンドの街はまるで爆撃にあったかのように崩壊していました。その街の中にエーミール少将は力を使い果たしたようで膝をついていました。そこに攻撃しようとしていたジェシカの姿がありました。拳銃から銃弾が放たれます。しかし、その銃弾をルイ中佐の風の魔法で防ぎ、マチルダ中佐がジェシカの背後に回って攻撃を加えました。ジェシカはこれを防ぎ、マチルダ中佐を蹴り飛ばします。そこにノア中佐の雷魔法が炸裂し、リア中佐とエリス中佐による光と闇の光線が飛びます。しかし、ジェシカはこれを防御魔法でカバーしました。宙に浮いたままのジェシカはエーミール少将を見下ろし、話しました。

「どうやら私たちの負けというわけね。」

「はははっ。俺たちを舐めるなよ。」

「でもここで勝ててもどうなるか、あなたたちは何処にいると思っている?ここはアメリカ。既に私たちの手の中にあるのよ。あなたたちはただ踊らされているだけ。それではもし生き残れたのならまたどこかで。」

 ジェシカはゲートを使って姿を消しました。

「今度もまた逃げられたか。」

 エーミール少将はそう呟いて大の字に寝そべりました。まだ陽の光が眩しい空が広がっていました。


 ドイツ軍はリッチモンドの戦いを制し、首都ワシントンでの戦いは目と鼻の先にまで迫っていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ