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エンドレス・マジカルライフ  作者: 沖田一文
【第二章α】‬世界大戦ドイツ編 アンサイド
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第二章α‬8話 Savannah Schlacht

 ドイツ時間8月16日10:00、アメリカ時間にして早朝4:00にドイツ軍はフロリダから北と西に分かれて侵攻を開始しました。戦力は西に3割、北に7割と分散されました。これにはアメリカを攻略する上で重要とドイツは判断された上での予め決まっていたことでした。私たちニンフェンブルク小隊は北に行く本軍と共に移動しました。しかし、移動するにあたって問題がありました。それは魔法軍が乗る車両が足りないということです。幾つかフロリダ基地にあるものを使っても足りません。そこで一部隊が陸軍に同行し、拠点に着いた場合や敵との戦闘になった場合にゲートを使って残りの部隊を移動させるという手段をとることにしました。そうすることで、フロリダ基地の防衛または今後できるであろう拠点の防衛にも繋がるということで異論はありませんでした。そして、その一部隊になったのがニンフェンブルク小隊でした。前も私たちだけが上陸作戦に参加したのに、また任命されるというのは嬉しくありません。しかし、先鋭として軍を守ってほしいという中将からの依頼でした。そんな経緯で私たちは今、移動しているわけです。

 朝日が昇り、辺りは既に明るいです。しかし、当たり前ですが住民はいませんので、この軍団の走行する音以外は聞こえませんでした。2、3時間程して戦闘準備命令が出されました。そこはサバンナというところでした。古い建物も残っていて観光スポットとしても人気があるところらしいです。それらを守るということもあり、一般人による義勇軍を含んだアメリカ陸軍が待ち構えていました。しかし、ドイツ軍は怯みません。陸軍は装甲車による砲撃を開始し、ニンフェンブルク小隊はゲートを開いて魔法軍を集めました。しかし、ニンフェンブルク小隊の1人、ノア中佐が既に魔法を詠唱していました。

「緑に輝く雷光よ、我雷神に操られ、

  天地を痺れされよ、雷雨!」

 ノア中佐はプラズマを帯びた両手を合わせ、緑の魔法陣が現れました。そして、詠唱が終わるとともに同じ種の魔法陣がサバンナの街の空に無数出現し、そこから緑の雷光が雨のように降り注ぎました。電撃の痺れるような音と雷が落ちる鈍い音が響きます。雷雨は時に複数が引き合い、倍の威力となって落ちることもありました。さらに、微小なプラズマが辺りに散って、それが電子機械類を故障させる原因にも繋がり、アメリカ空軍による攻撃は愚か、それによって墜落するものもありました。被害は味方の機器にも及びました。陸軍は落胆しましたが、雷雨現象が収まった後、簡単な装備だけで街に突入しました。魔法軍も周辺の地上や上空を警戒して見廻り、残っていた敵を倒していきました。ノア中佐は陸軍中将や魔法軍中将には怒られましたが、エーミール少将は「よくぞ派手にやってくれた」と褒め称えていました。ノア中佐は「これでもまだまだ控えめな魔法を選んだんですけどねー」と文句なのか、謙遜なのかは分からないけれど呟いていました。でも、魔法一つで都市一つが簡単に壊滅、制圧に成功しました。それはとても恐ろしいことでありましたが、各国の軍部や政府はそれを利用し続けようと思っていたのでした。



 ドイツ軍がアメリカのサバンナを制圧した頃、ドイツ国内のとある場所では密かに争いをしている者たちがいました。

「アメリカ方面軍はサバンナを制圧占拠に成功したみたいだね。」

「そうか、そんなことよりアメリカの動向はどうなっているんだ?」

「だーかーらー、これもアメリカに関する情報でしょ?」

「これはそのうち本部に報告が行くから、俺たちの任務とは関係ない。ニーナは特別だからって勝手にしていいわけではないんだ。」

「ねえお兄ちゃん。」

「今度はなんだ?」

「お兄ちゃんは何がしたいの?国のために尽くしたいだけなの?私はさ、ここにいれば、大好きなチョコレートが好きなだけ食べられるからいいんだけどさ、お兄ちゃんはどうしてここにいるの?」

「ニーナ、俺が邪魔だと言いたいのか。」

「そうじゃないよ。ここにいてお兄ちゃんのためになるのかってことだよ。」

「俺は・・・ニーナが無事に居られるならそれで・・・。」

「えーなに?何だってー?声が小さくて聞こえませんー。もう一度―。」

「もういい。俺のことはいいからやることをやってくれ。」

「言われなくてもずっとやってましたー。」

「ああそうか。おまえは気楽でいいな。」

「うん。ところでお兄ちゃん、もう少しで新たな情報が手に入りそうなんだけど、もしかしたら気づかれちゃったかも。」

「はっ?どういうことだ?」

「アメリカの政府の連中が何をしようとしているのか見てたんだけど、何者かに見つかったのか今、逆に追跡されてる。」

「そいつの正体を暴け。」

「いまやってるから、ちょっと黙っててね。」

 ニーナは少しの間、集中して相手の情報を探りました。

「よしわかった。ひとまず撤退するね。」

 それから魔法による情報収集活動、いわゆるスパイ活動を一度停止しました。ずっと魔法陣にあった映像や文字などの情報を見ていたニーナはようやく兄であるルイス大佐に目を向けました。

「おつかれ。」

 と、ルイスは部屋に山積みにしてあるチョコレートの1つをとって、ニーナに投げ渡しました。

「これだけじゃぜんぜん足りない。」

「まずは報告。それからなら好きなくらい食べていいぞ。」

「それじゃあ簡単に説明するね。アメリカは今後、魔法軍と宇宙軍を投入して対抗するみたい。政府関係者は大統領含め、首都ワシントンから移動を始めたみたいだね。どこに行くかは何となくの分析だけど、五大湖周辺って出てる。そして、私を追跡したのはアメリカの情報局の一種だね。まあ、相手が悪かったね。魔法と機械の類いならこっちが勝つでしょ。」

「わかった。そのことを報告してくる。それとアメリカの情報組織を一掃する申し出もな。」

「ふぅーん。がんばれー。応援してるよー。」

「その割にはやる気がないな。」

 そう言ってルイス大佐は部屋から出ていきました。



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