第二章α7話 Schlacht um das Hauptquartier der US Navy Ⅲ
私は艦上にもどり、メイ中将に現在の状況とエーミール少将から言われたことを伝えました。メイ中将はすぐに伝令をだし、上陸作戦の体勢を固めました。陸軍が上陸を開始すると、戦場は一段と騒がしくなりました。この海岸部を超えればひとまず楽になれるのですが、敵の抵抗は大きいものでした。敵海軍は既に統率を失い、バラバラになっていましたが猛威を奮っていました。ここでドイツ海軍大洋艦隊の意地を見せます。メイ中将は敵艦1隻を複数で取り囲み、集中砲撃を行いました。意地はあっても慈悲はなく、容赦ない攻撃でした。一方、空を守るニンフェンブルク小隊は大方戦闘機を駆逐し尽くしていました。海と空をだいたい制圧したドイツ軍は陸軍の上陸をより簡単にしました。
現地時刻13:00、ドイツ時刻でいう19:00に陸軍は上陸を完了させ、陣をとりました。ニンフェンブルク小隊は小隊長エーミール少将のいる一室へと集合しました。大洋艦隊は海軍基地を完全制圧・占拠し、艦船の修理や基地の調査などに忙しくしていました。各軍は参謀本部と連絡をとり、情報を共有し合いました。そして、参謀本部は魔法軍に出動命令を出しました。ようやく終わった先刻の戦闘も作戦の始まり、あるいはそのための戦闘に過ぎないのかもしれないけれど、ついにドイツ軍はアメリカ本土上陸を果たし、侵攻を続行することになります。エーミール少将は改めて今回の作戦概要を話始めました。
「今回の作戦について、今一度説明する。ドイツ軍はこれよりアメリカの首都ワシントンを目指し北上する。本作戦には4軍すべてが参加する大作戦だ。戦闘には陸軍の部隊に加え、俺たち魔法軍のアメリカ方面軍の部隊を主戦力とし、後に合流する空軍の戦闘機戦力を支援とする。たった今、参謀本部がこちらに魔法軍を送る命令を出した。時期に全ての駒が揃うだろう。そして、参謀本部からは作戦開始時刻を現地時刻の15:00ときた。というわけで飯を食いながら聞いてくれ。」
エーミール少将は持っていた袋の中から食料を取り出し、全員に配りました。
「まずは北にいる敵軍を突破しなければならない。突破と言ってもドイツ軍はここをアメリカ進出の拠点とするから、敵戦力を残すわけにはいかない。そして従来の戦力である陸軍同士ではアメリカが現在優位に立つ傾向が大きい。そこで魔法使いがどれだけ威力を見せられるかとなる。魔法軍アメリカ方面軍は2構成16部隊に大きく分かれている。俺たちは攻撃旅団所属の第一攻撃大隊。別として機動旅団というのがあって、こっちはほぼ全員高速魔法で構成されている。つまり、前線あるいは敵陣の中で素早く細かく行動して敵を討つ。俺たちは自陣の上空から敵を倒す。これが2構成の違いだ。俺たちはあまり前線には出ない。だがしかし、これではつまらない!だから俺がこの第一攻撃大隊の隊長となるからには先行して敵陣を壊す。そういうわけでお前たちにはみんなの模範として派手にやってほしい。以上、説明終わり。質問・異論は受け付けん。そろそろ外に出るぞ。」
エーミール少将が言うには本来の部隊編成の意味を無視してとにかく積極的に敵を倒すことがこの第一攻撃大隊のモットーであるということみたいです。そして、私たちニンフェンブルク小隊は陸軍の張った陣の後方に行きました。そこには既にドイツ国内から転移してきた魔法使いたちが大勢集まっていました。エーミール少将が大きな声で大隊メンバーを集めると、それだけでもかなりの人数がいました。一つの大隊でおよそ600人程度いるそうです。私たちは各小隊と交流し、互いに挨拶をしました。その後、攻撃旅団を統べる中将と挨拶を交わしました。そして、ついに時が来たのでした。
現地時刻15:00。両国の陸軍は戦闘を開始、同時に魔法軍も戦闘を開始しました。アメリカは陸軍のみの編成でしたが、戦車を大量に投入し、火力は物凄くありました。対してドイツ陸軍は装備に限りがあり、対抗するには難しいことでした。しかし、そのための魔法軍である。魔法軍機動部隊の第一波が敵陣に突入を開始しました。高速魔法で素早く敵兵力を削っていきます。しかし、装甲の硬い戦車はスピードだけでは勝てません。エーミール少将はそこに漬け込んで、戦車を破壊するという名目で第一攻撃大隊を敵陣に突撃させました。魔法軍の攻撃大隊の威力は強く、戦車は次々と破壊されていき、敵戦力を確実に削っていきました。加えて、ドイツ軍側は魔法による防御壁を貼っており、敵の攻撃威力を抑えていて、損害は少ない状態でした。敵空軍による空爆も実行されていましたが、魔法軍がそれを許しません。防御だけでなく、反撃も加えて敵爆撃機を撃墜することもありました。ドイツ軍の猛威の攻撃により、あれだけいたアメリカ軍はわずか1時間足らずでドイツ軍のここにいる戦力よりも少なくなりました。そのため、これ以上の戦闘は無意味とされ、敵軍は撤退していきました。これでフロリダ攻防戦は終了し、ドイツ軍の圧勝でした。
これらの情報を得たアメリカ上層部はついに伝統ある3軍だけでは叶わないとし、新たに2軍を実戦に加えることを決定させました。そして、緊急事態宣言を発し、アメリカ全国民に戦時体制へ移行することを宣言しました。さらに、アメリカ時刻19:00、ドイツ時刻16日1時、日本時刻16日9時にイギリスとフランスに支援要請をしました。最後にドイツ軍の狙いは首都ワシントンであることから一時的に首都を移そうという議題が出ましたが、さすがにここまで来ることはありえないとラザフォード大統領は却下して上層部の話し合いは終わりました。




