第二章α4話 US Continental-Landeoperationen 15.8.2575
8月15日8:00にアメリカ軍は空軍によるドイツ爆撃を実行しました。しかし、ドイツの防空網を破れず、作戦は失敗に終わりました。そこまでの報告を受けたアメリカ政府は緊急会議を開き、今後の方針を話し合いました。その間にもドイツは陸軍の大西洋進出を完了させて、更なる作戦実行へと段階を進めていました。15:00頃に艦隊決戦によってドイツは大西洋の覇権を手に入れると、陸軍は進出を続けて大洋艦隊と合流しました。16:00に海軍の護衛を受けながら、陸軍は作戦の準備を完了させました。そして、17:00。作戦がいよいよ開始されました。作戦は敵主要基地及び首都の制圧を目的としています。まずはアメリカ海軍の要所であるフロリダの海軍基地を制圧します。そのため、大洋艦隊は連戦となります。先刻受けた損傷箇所は簡易的な補修をして一応は使用可能でした。大洋艦隊は陸軍艇を護衛しながら戦闘を行わなくてはなりません。現在のフロリダは温暖化の海面上昇によって大陸とは離れ、フロリダ島となり、これらの地形を利用して海軍基地となってます。アメリカの海軍本部と言ってもいいでしょう。しかしながら、大洋艦隊の第一艦隊は損耗も激しく、魔力砲を撃つための魔力がある魔力タンクには残りわずかしか残っていませんでした。残された第一艦隊の戦力と第二艦隊の戦力とでかなう相手では無いのです。そこで海軍は陸軍と魔法軍に協力を請いました。陸軍はついでだからと快諾し、魔法軍は一部隊だけの派遣を許可しました。その部隊とは私が所属しているニンフェンブルク小隊です。陸軍にいた魔法使いがゲートを開いて私たちを海上に呼びました。そして、上陸作戦の前段としてアメリカ海軍本部陥落作戦が始まりました。艦隊はフロリダ島の防衛圏に入り、敵艦が現れました。私たちの役割は空を守ることです。敵空母2隻から次々と発艦された多くの戦闘機が押し寄せます。
「「アクティベーション!」」
私たちは空母グラーフ・ツェッペリンの甲板上で魔力を展開させました。
「Schutz heben[防御上昇]!」
私は小隊全員に防御強化魔法をかけました。一度に全員にかけることはできないので1人ずつかけて、順次こちらも飛翔して戦闘に参加していきました。小隊長のエーミール少将は相変わらず派手に魔法を使って敵機を破壊していました。私たちの小隊は基本的に『自由』が方針なのでそれをエーミール少将はよく表していると思います。しかし、実際は役割があって攻防などにわかれています。私アンは今のところ後方支援ですが、この作戦の前にエーミール少将から課題を出されました。「戦闘機3機と敵艦1つは最低でも倒してみせろ。」ということでした。エーミール少将が言うには直接人を殺す訳じゃないからいいだろうと思っているようで、確かに面と向かって人を殺すよりはハードルは低くなりますがそういうことではないのです。
「おーい、アン少佐!ヤるべき事をヤらない奴には飯抜きにするぞ。」
見てるだけの私にエーミール少将は気づきました。
「いいか、おまえにはあの空母を飛んでいる奴ら共々やってもらう。俺がちゃんと見てるからさっさとやれ!」
エーミール少将に押されて、私はようやく決心しました。それは決心なのか諦めなのかは分かりませんでしたが、それでも宙に文字を描き始めました。
「PRALL[激突]!」
それを何度も描いては敵機を狙って放ちました。私の魔法の欠点は個別にしか効かないことであり、さらに今回は動きが速いものを対象にしているため当たらないということが起こりました。透明な文字がいくつも海に消えていきます。そしてようやく命中すると、敵機は敵機同士ぶつかって墜落していきました。
「最初は地味だと思ったが、成功してみるとなかなか面白いな。」
エーミール少将が愉快に笑っていました。こういう人はいつか罰があたるのではとついつい思ってしまいます。私はその後も同じことを続けて徐々に相手の戦力を削っていきました。そんな時に、小隊の他のメンバーがもうひとつの空母を沈めたようで、隊長は急かしてきました。
「さて、そろそろお遊びはおしまいにして、あのどデカい奴をやってしまおうぜ。おまえがどうやってやるのか楽しみにしてる。飛んでる奴らは俺が片付けておくから好きにやりな。」
そう言って、エーミール少将は飛び去っていきました。確かにそろそろこの場を去らないと後ろから大洋艦隊らが迫ってきていて砲撃に巻き込まれてしまいます。私はシンプルに言葉を描きました。
「EXPLOSION[爆沈]!」
いつもよりも大きめに描いて、大きな的に向けて放ちました。その文字が小石のように見えるくらい大きな空母に当たり、空母は一瞬動きを止めた後、とても大きな爆音が響いて中央で爆発して崩壊していきました。そしてものすごい爆風が閃光と共に吹き荒れました。どうやらその空母は原子力空母だったみたいです。防御魔法をかけておいて本当に良かったです。しかし、爆風に耐えられず私は吹き飛ばされました。そこでエーミール少将は私を受け止めてくれました。
「世話のかかるやつだ。」
「うん。」
エーミール少将はそのまま私を抱えて空母グラーフ・ツェッペリンの上に着艦しました。そこでようやく下ろされ、敵空母の末路を見届けました。
「好きにやれとは言ったが、ここまで派手にやるとはな。防御魔法をかけて貰ってなければ俺たちは死んでたぜ。でもまあよくやったアン少佐。」
エーミール少将は私を褒めて頭を撫でてくれました。
その後、戦艦などの残る敵艦隊を大洋艦隊が倒し、私たちドイツ軍はアメリカ海軍の総本山に至りました。




