第二章α3話 Sargasso Seeschlacht Ⅱ 15.8.2575
時刻は正午を過ぎ、大洋艦隊は昼食も取れないまま航行を続けていた。敵機による空襲は間隔が長くなったが続いていた。潜水艦による攻撃は分隊してからは1度も確認されていない。第一艦隊を指揮しているメイ中将は次の指示を出した。
「第二戦隊、魔力砲装填開始。敵機飛来方向に向けて発射する。」
第二戦隊のティルピッツ、ザクセン、ヴュルテンベルクは主砲に魔力を溜め始めた。しかし、異変に気づいたアメリカの潜水艦は緊急浮上し、魔力を溜めている主機を狙ってミサイルを放った。
「至近距離に敵艦捕捉!ミサイル発射を確認!」
「魔力砲をすぐに発射せよ!」
誰もが分かっていた。被弾する前に魔力砲を放つ。その直後にミサイルが主砲付近にて魔力砲を受けて爆発し、主砲1基が損傷した。ミサイルを撃った潜水艦はとうに潜り、逃げていた。艦隊はゆっくりと旋回し、針路を敵艦隊があるであろう方向へ変えた。損傷箇所の応急修理が終わり次第、速力最大で進み敵を射程距離内に収めようとした。しかし、そこを潜水艦による雷撃が邪魔をする。そこでメイ中将はついに潜水艦駆逐令を出した。原子力潜水艦を撃破することは核兵器を受けるようなものであると考えられている。今までに原子力潜水艦を撃破した例はない。メイ中将は高速で進みながら潜水艦をおびき寄せ、艦隊後方で撃破する方法をとった。その際の雷撃は無視をしただひたすら前に進む。そのため艦隊の両側に耐久力のある戦艦を置き、前方に空母、後方に駆逐艦を置いた。作戦を決行し、潜水艦の位置が不明確なまま爆雷を投射した。あとは水中聴音機によって大まかな位置を把握し、狙いを修正して再び投射する。確実に当たっていることが分かるとそれを繰り返した。一方潜水艦側は、被弾し浸水が始まって大慌てだった。攻撃をする余裕はなく、浸水を止めるのに必死でいた。狙われている艦以外の潜水艦は雷撃を続け、引きつけようとしたが効果はなかった。間もなく潜水艦は航行不能となり、海底に沈んでいった。底についた衝撃で原子炉が壊れ、わずかに爆発を起こした。撃破を確認した艦隊は他の潜水艦も探した。しかし、爆発音に紛れて潜水艦は撤退していた。
その後、フォーメーションチェンジの間もなく敵機が襲来した。数からして完全に第一艦隊はターゲットにされたようである。先頭を航行しているのは空母であり、そこを狙われた。空母2隻に被弾、火災し、しばらくは航空戦力が封じられた。しかしながら、敵艦隊を捕捉し、大洋艦隊も攻撃に出ることが可能になった。航空戦力こそ失われたが、水上戦力なら勝っている。陣形を戻し、決戦を臨んだ。
「長距離射撃にて敵艦の殲滅を行う。主砲砲撃用意!」
メイ中将の命令に従って戦艦6隻は照準を合わせ、砲弾を装填した。
「砲撃開始!」
一斉に砲撃が始まった。アメリカ側も対抗して砲撃を行うが、対艦ミサイルも混ざって発射された。大洋艦隊は防衛を戦艦以外全ての艦に委任し、攻撃を続けた。もちろん戦艦でも副砲による自衛行動はとっている。戦艦2隻しかいないアメリカ側は航空戦力で補ってはいるが、砲撃を長く続けることはできなかった。戦艦同士の殴り合いによって、早く脱落をしてしまった。ドイツ側の損害も大きかった。駆逐艦が2隻沈没、巡洋艦アドミラル・ヒッパーは主機損傷し航行不能に、戦艦も主砲塔や副砲が損傷を受けて戦力を削がれた。まだお互いに距離があるなか、アメリカの航空戦力だけが攻撃を続行している。メイ中将は危険を承知で次の指示を出した。
「使用可能な主砲すべてに魔力砲を装填!残りは対空射撃をより一層努めよ!」
現在使える主砲全部で10基20門に魔力が何事もなく装填された。
「魔力砲、発射!」
ものすごい勢いで色とりどりの魔力20本が発射された。既にアメリカ大西洋艦隊は散開行動をとっていたが、間に合うはずもない。慈悲なく、容赦なく光線に巻き込まれ、誘爆などを起こして海のなかへと沈んでいった。飛行していた敵機も爆風や爆片に飲まれて撃墜された。それらの事象を確認した大洋艦隊第二艦隊はそれを目印に第一艦隊と合流した。
これによって15:00サルガッソ海戦第二戦もドイツ軍が勝利した。そして、大西洋の覇権もドイツが握ったことを意味した。




