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司彩と春休み 前編

 あの試合から数日後、女バスの友達がいるという蛍から話を聞いたところ、その選手、元々部内で問題児だったらしく、今回の件でついに顧問の堪忍袋の緒が切れたそうで、実力は十分なのにレギュラー落ちしたそうだ。

 それをまごめに話したら、あっそ、とだけ返ってきた。まごめらしい返答に思わず笑ってしまった。

 新学期から練習できないーってごねながら暴れてるし、試合後の数日間は落ち込んでたけどある程度復活した、のかな。

 なぜかしばらくの間、まごめの「みなとくん」が耳から離れない俺だった。


 まごめの練習試合から数日がたち、ついになけなしの春休みがはじまった。大学生の従姉妹は春休みが2ヶ月弱あるそうでうらやましさしかない。なぜ高校の春休みもそれくらいないのだろうか。それだけ長ければ積みゲー積みラノベを消化できるし、気になってたアニメを一気に見れて、ネトゲも朝から夜までやり放題! 2週間って中途半端なんだよな。

 例年春休みはカナやまごめからむりやり予定をつめこまれるんだが、今年はそうはいかないぞ!

 1日だってムダにしないために綿密にスケジュールをたてていた俺の元に、1通のメールが届いた。

 ピロリン。


『タカト、ひましてないかい? 遊びにきなよ』


 ふむ、司彩から遊びのおさそいか。どうしよっかな。計画が狂うが、やることは部屋にいてもこいつんちにいても変わらないか。ひととおり協力プレイして、あとは雑談しながら各々のゲームを進めてくいつものパターンになるだろう。

 しかしながら一度ベッドの中で携帯ゲーム機片手にくつろいでしまうと動きたくなくなるのが人のサガ。今の状態を正直にメールしよう。


『ベッドからでるのめんどくさいので行きません』


 送信、っと。

 ピロリン。

 返信、はやっ!


『ふーん、そんなこと言っていいのかな。ボクが持っているキミの秘密、幼なじみちゃんたちにバラしちゃおっかな』

『お前すぐその話だすな! 毎回おとなしく従うと思うなよ!』

『中学2年の頃、幼なじみちゃんたちと違うクラスになったから女の子と話す機会が増えたんだけど、今まで幼なじみちゃんたち以外の女子と話してこなかったためキョドりまくりのタカトのマネ、披露するのが楽しみだ』


 やめろ! そんなことされたらカナやまごめから一生ネタにされる!


『すみませんすぐそちらへ向かいます』

『さすがタカト。待ってるよ』


 つかさぁぁああ、覚えてろよ、いつかお前の弱みを握って下克上してやる!

 と思ったがあいつ友達いないしバラす相手がいなくてつまらん。司彩ファンクラブのやつらはあいつにとって友達と言えなくもないかもしれないけど、俺の言葉なんて信じてもらえないだろう。

 協力プレイするための携帯ゲーム機とあいつから借りたマンガ、俺があいつに貸すラノベをリュックにつめこんで、家をでる準備をする。

 階段を降り、リビングをのぞいたらソファでだらだらしていたまごめと目があった。


「にいちゃんどこいくん~」

「んー、友達の司彩んとこー」

「いってら~。遅くならないようにね~。カナちゃんが春休み初日だから腕によりをかけて料理作るぞ~! っていきこんでたし、夜ご飯のあとには3人で人生ゲームするんだから」

「おーけーおーけー、19時には帰るようにするわー」

「ほ~い」


 司彩の家行くとついつい時間を忘れて遊んじゃうから注意しないとな。

 急ぎ足で目的地へ向かう。

 寒い冬が終わり、桜が咲き始める春。気持ちの良い気温でのんびりと歩きたくなる。


『寄り道とかしたらハッキングしてキミのネトゲのデータをトばすから遅くならないようにね』


 風情を味わいたい。日本特有、四季の移り変わりを感じたい。

 そんなささいな願いを、俺の命の次の次の次くらいに大事なサイガーオンラインのデータをたてに奪おうとするなんてひどいやつだ。仕方ないから今日サイガーオンライン内のお花見イベントに司彩のやつをつき合わせようそうしよう。

 最短ルートを早足で駆け抜けたらあっという間についた。これなら寄り道してないということを信じてもらえるだろう。


「やあタカト。早かったね」

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