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第6話 「はじめての投稿」 震える指で押した投稿ボタン。 人生初の“自分の作品”。

深夜二時。


家族も寝静まった頃。


俺は布団の中で、


震える指を動かしていた。


タイトル。


あらすじ。


本文。


何度も書き直して、


何度も消して。


誤字を見つけては焦り、


変な文章を見つけては頭を抱える。


「こんなんで……本当に投稿していいのか……?」


心臓がうるさい。


たかが投稿。


でも俺にとっては、


人生で初めて、


“自分を外へ出す”行為だった。


仕事でもない。


義務でもない。


誰かに言われた訳でもない。


ただ、


自分が書きたくて書いたもの。


それを世の中へ出す。


怖かった。


もの凄く。


そして――


俺は、


震える親指で、


投稿ボタンを押した。


「……うわっ……」


本当に投稿された。


取り消せない。


急に恥ずかしくなる。


「な、何してんだ俺ぇぇぇ……!」


布団の中で転げ回る。


四十を過ぎたオッサンが、


深夜に一人で悶絶している。


冷静に考えると地獄だった。


だが翌朝。


恐る恐るスマホを開いた俺は、


固まった。


『面白かったです!』


『続き気になります!』


『オッサン主人公なの珍しくて好き』


「……え?」


理解が追いつかない。


誰かが、


読んでいる。


しかも、


感想まで書いてくれている。


知らない誰かが、


俺の文章を読んで、


何かを感じてくれている。


その事実だけで、


胸が熱くなった。


涙が出た。


嬉しくて。


信じられなくて。


「マジかよ……」


だが――


もちろん、


それだけじゃなかった。


少しスクロールした先。


そこには、


別の言葉もあった。


『文章下手すぎ』


『読みにくい』


『何が言いたいのか分からない』


『オッサンの自虐キツい』


その瞬間。


胸に、


ズンッと重いものが落ちた。


頭が真っ白になる。


スマホを持つ手が止まる。


さっきまで嬉しかった感情が、


一気に冷えていく。


「……あぁ……やっぱりか……」


そうだよな。


素人だもんな。


才能ある訳でもない。


文章の勉強した訳でもない。


オッサンが勢いだけで書いた小説。


甘くない。


当たり前だ。


俺はスマホを閉じた。


そして、


しばらく何も出来なかった。


投稿画面を開くのも怖い。


感想を見るのも怖い。


また否定される気がして。


それでも――


数時間後。


気づけば俺は、


またWeb小説を開いていた。


そして、


自分の作品ページを見ていた。


感想欄の片隅。


たった一言。


『続き、待ってます』


その言葉が、


どうしようもなく、


胸に刺さった。

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