第2話「パソコンという強敵」 ノートパソコンすらまともに扱えず、 打ち込みだけで心が削られていく。
ノートパソコンの前で、
俺は固まっていた。
「……えっと……あれ?」
カタカタ……
止まる。
カタ……
また止まる。
変換できない。
押したキーと違う文字が出る。
急に全部英語になる。
「あっ!? な、なんだこれっ!」
意味が分からない。
さっきまで普通だったのに、
急に大文字。
戻し方が分からない。
「え……ちょっ……待って待って待って……」
パニックになる。
押す。
増える。
壊れる。
もっと分からなくなる。
「うわあああっ、もうっ!!」
思わず机を叩いた。
静かな部屋に、
乾いた音だけが響く。
そして――
急に、
涙が出た。
ぽたっ。
ぽたっ。
「……なんでだよ……」
ただ文字を打ちたいだけなのに。
ただ何かを書きたいだけなのに。
そんな簡単なことすら、
まともに出来ない。
情けない。
悔しい。
惨めだ。
「俺……何やってんだよ……」
気づけば、
笑っていた。
ははっ……
乾いた笑い。
なのに涙は止まらない。
笑ってるのに、
顔はぐしゃぐしゃだった。
「ははっ……オッサンが小説家ぁ……?」
無理に決まってる。
若い頃から文章を書いてきた訳でもない。
特別な才能がある訳でもない。
タイピングすらまともに出来ない。
そんな人間が、
何を勘違いしているんだ。
「……馬鹿じゃねぇの、俺……」
でも。
画面に残っていた。
たった一行。
『オッサン、Web小説家を目指す!』
その文字だけが、
やけに眩しく見えた。
涙で滲んだ画面の中、
そのタイトルだけが、
まだ消えていなかった。




