第55話The golden dream will shine
「I love you…1度目も、そう言ったんだ」
「おれもあとで気づいた。うれしくなっちまうのって変かな?」
「ぜんぜん。ロマンティックだと思う」
Like youではなくて、Love youと、ノアはわざわざ言ってくれた。
「たった半年だったけれど、ノアは一生おれの心に刻まれた」
「ノアとは、どうなったの?」
「ノアは……いつのまにか、いなくなってた。まるで最初からいなかったように、おれの妄想が作ったような女だよ」
「連絡先とか……」
「あるよ。でも音沙汰がないんだ。少し月までいったら、帰ってくる。そう言ってきられたっきり」
「それはたしかに……現実的とは思えないかも。わたしはどうしたらヒラクのはなしを信じてあげられる?」
「いつわりなんて混じらない」
「ごめん、でも言葉にしてほしい」
「……これがオレの初恋の話だからだ」
だからおれの初恋はずっと花を咲かせては、実らない。
「わたしの秘密は……愛してるっていってくれるかぞくがほしい」
フユミの語る秘密は長くない、それだけだけど、頬に置いた手から伝わる温もりがそう思わせるのだろうと、心の底からの告白をしてくれたと感じている。
「やっぱダメか。だよな。オレのことしか話してねぇんだからさ」
こっちは勝手に告白しただけなのに、フユミにはこっちが知りたいことを暴露しろなんておしつけ虫が不愉快な儘だ。
「ごめんね、ヒラク」
「いいや……話してくれて、ありがとう」
父さん母さん、アゲハやタカヒロさんたちは1番目の愛する家族だ。
そしてホストファミリー、異国の地で出会ったみんなは2番目の大好きな家族だ。
目論見は外れたけれど、それで八つ当たりするようなことはなく、そんなふうにバンリやフユミとも、あいつらは家族だって思い返せる日が来るのだろうと信じて生きたい。
「そういやホームステイ先に中国の留学生もいてさ。ショーンって言うんだけど」
「通称ね」
「そ。本名も聞いたんだが読み方むずくてさ。メッセンジャーの名前は本名だけどチャットではいまでもショーンだな。ショーンには中国式の指を使った数の数え方とかおしえてもらったし、ショーン経由で同い年くらいの中国の子たちとも知り合ってさ、日常で使えそうな風を装って汚いことば教えるのって儀礼みたいなもんだよな。発音教えてもらったら女の子の名前のあとに言ってみろってやったら全員に爆笑された。あとに意味聞いたらうんこだったわ」
「引っ叩かれなかったの?ざんねん」
「言い出しっぺにも同じことしてって言われたからしたらその子も大爆笑。ニーハオ、シェンシェ、ハオ、ウォーアイニーの次に覚えたのがそれなんだからさ……留学中もいろんなバカやって、たのしかったわ……」
「最初の3つはわかるけど、4つめがそれなあたりあなたらしい……わたしたちもバカやりましょ」
「いいなそれ……ところでこの突然変異率ってなんだと思う?」
「……ヒラク、これを話すか迷ってたから長話したの?」
「いやー、どうだろう。フユミとのんびりしたかった……じゃ、だめ?」
「……いいけど」
会話も突然変異したな。
当のおれがわからないくせ、フユミや父さんにも話したけどわからないんで、生簀の警戒観察を注意程度に引き上げるってんで保留することになった。




