第14話アマレーナ
「ふぁぁああ」
大きく欠伸する。
昨夜は遅くまでウミたちと通話してたから、若干、寝不足。
今日は生成を試してみる。
ランドリーに現在ある物+小型自動洗濯乾燥機 ♢5 =現在生成できる物。
ここに来る前にホームセンターに寄って、生成と強化のための材料をかき集めた。
車で運搬したが、店内に一人で搬入するのは一苦労だった。
材料を全て店舗内に搬入したところで、自動乾燥洗濯機・小型 ♦︎7の生成ボタンがアクティブになる。
これ一台で、購入すれば2、3百万はする。
なのに材料費は10万円もかかっていない。
簿記における直接材料費に当たる主要材料費以外のほとんどを排除した結果がこれって考えると妥当なのかもしれないけれど、本当にできるのか……。
材料が床に吸い込まれ尽くすと、床から自動洗濯乾燥機が生えてきた。
目を擦って栽培された自動洗濯乾燥機を二度見する。
「魔法やん」
おれ……いったいどんなシフターの核肉を食わされたんだ。
現状、コインランドリーの設備は自動洗濯乾燥機小型×1,中型×2,大型×4、乾燥機中型×4, 大型×1,ふとん用乾燥×1,スニーカー用洗濯機×1,乾燥機×1。
昨日統合したのはスニーカー用に申し訳程度においていた一番やっすい洗濯機と乾燥機だった。
そして、今日生成した自動洗濯乾燥機はメーカー品と見た目まったく同じに見える。
「生成したヤツで強化実験しよう……強化内容は……選べるのガチ?」
グレードの違いなのか、生成品だからか、素体となった品の違いなのかはわからない。
生成した自動洗濯乾燥機は容量アップ、節水、ガス節約、運転時間短縮の4種から強化内容を選ぶことができた。
検証のため元からある同製品の強化リストを開いて比較してみると、まったく同じだった。
ひとまず、7回の強化を終わらせよう……1、2、3、4、5、6……あと1回、材料が足りない。
購入数を数え間違えたらしい。
買い物がてら、喫茶店に寄って休憩するか。
「いらっしゃいませ」
喫茶店『アマレーナ』のドアベルを鳴らすと、落ち着き払った心地の良い声で出迎えられる。
「ヒーちゃん?」
「よっす朱翼」
「帰ってたの!?」
「色々あったんよ。コルトでアフォガード」
花木 朱翼は、苗字こそ同じだが、親族6等身外の父方の親戚で、3つ年下の幼馴染だ。
アマレーナはアゲハの実家で、俺も親についてちょくちょく通ってた。
軽食や夜はアルコールも提供する飲食店だが、地元ではカフェで通ってる。
アゲハとは親同士が仲が良く、近所ということもあってよく遊んでた。
俺にとっては、妹みたいな女の子かな。
「やっぱりアゲハ? 東京行く前までアーちゃんだったじゃん」
「心境の変化」
「そう」
「寂しい?」
「まぁね。でもヒーちゃんが大人になったんでしょ?」
「店に入ってマスターやってるアゲハみたらなんか大人っぽく扱ってみたくなったんだよ」
「たった1年なのに?」
「1年なのに」
アゲハはカウンターで話に耳を傾けながら、豆を挽きホルダーに移し、タンピングしていく。
黒い髪を後ろで束ねて、白いシャツに落ち着いた黒のエプロン姿が、美人なアゲハをさらに大人びて魅せて様になってる。
突然現れた俺にどうして帰ってきたのかとか、突っ込んだ話をしてはこないし。
これでまだ高校生になりたてなんだから、いつも見てた背中がよかったにちがいない、おれに似たんだな。
「……はい。ヒーちゃん専用コルトアフォガード。久々に作ったわ」
「朝からうつらうつらしててん。頭ボケたんかと思って、グイッと一発目覚めさせとこうかと」
「寝不足?」
「それもある。やめらんねぇよ。家じゃあブラックばっか」
「でた、クレマ大好き人間」
「エスプレッソ苦ぇっていうのが世間一般らしいけど、コーヒーの中じゃあクレマがある分一番マイルドな気がするんだよ。俺が喫茶店を開いたら、店の名前はクレマだな。でもこの店来たら、まずはアマレーナジェラードの入ったアフォガード飲まないとはじまらない」
「昔と同じ話をしてるよ。私に気つかわないで味わって」
「ありがと。で、チェーン展開して店デカくするからさ!アマレーナとのコラボでこのめちゃうまアフォガード出させてくれ!」
「はいはい。ホント調子よくて変わらない」
「……いや、それが変わった変わった……この店支配してマシン生成したら本格エスプレッソ飲み放題じゃね?」
「どういうこと?」
アフォガードをスプーンで一口。
アマレーナのチェリー特有の風味と甘さが溶けたミルク味のジェラードを介したコーヒーと混ざりあって、調和している。
眠気もあったせいか、体が熱くなる。
この感じがたまらんのよなぁ。
テンションが上がってきた。
ウミたちにはしらばっくれたけど、アゲハになら特異のこと話してもいいか。
「ぜったいにやめてよ」
「なんで」
「だってヒーちゃんもう店に来なくなるでしょ!」
「……いゃ、くりゅよ?」
「目が泳いでる!東京行く応援にマキネッタあげたじゃん!」
「そ、そうだな……で、アゲハは学校は?」
「今日は振替休日。知っててきたんじゃないの?」
「……さぁ、どうだろうな」
「すぐしらばっくれる!もうしらんから!」
「残念だなぁ。じゃあ、俺が東京で春瀬 朝に助けてもらった話とか聞きたくないか」
「え゛っ!!?」
野太い声を出したアゲハに速攻詰められた。
他に客がいなくてよかった。




