第67話 シナの武器
「さすがだなチヨ婆・・・」
シナは三男を一撃で仕留めたチヨ婆に称賛を送った。
「カラカラカラ!せっかく助けてやったというのに、結局負けてしまったか・・・。それも仕方なし!我や兄者に比べればあいつはまだまだ未熟。それでも技のキレは上がっていたな・・・その点は褒めてやるとしよう。このような結果になろうと、そして実力があろうとなかろうと、我の可愛い弟に変わりはない!どれどれ、仇を取るために、次は我が相手をしようか・・・」
次男は刀を強く握り直した。
「ホホホ!威勢のいいこと。どんどん掛かってきんしゃい!わしゃほぼ無傷じゃて、戦った気がせんわ!」
「いや・・・チヨ婆は下がっていろ!」
やる気満々のチヨ婆をシナがなだめた。
「坊っちゃま・・・」
"まだまだ自分がやります"と言いかけたチヨ婆だったが、シナの真剣な眼差しを見て言葉を飲み込んだ。
「そう言えばシナの戦うところって見たことがなかったわよね・・・」
ムーンがボソッと言った。
「確かに!シナさんてどんな武器を使うんでしょう・・・???」
「王子だからね・・・!札束とかでぶん殴ったりして・・・!」
「ははは!ムーンったら・・・」
と言いつつも、ニニはシナならやりかねないかもと思った。
「でも、ガサ王国って地の国って呼ばれてるんでしょ?だったら、土に関係する能力じゃないかしら?」
「ポロ・アチチさんが火の使い手でしたからね。そう考えると土魔法とかでしょうか?」
「やりづれぇ〜・・・あいつら、せっかくの武器初お披露目って時に、ガンガン予想してくるじゃん!んで、みんなに聞こえるくらい大声で話してくるじゃん!んで、ガンガンハードル上げてくるじゃん・・・。これじゃもう、俺がどんな武器出したってげんなりするのが目に見えてね・・・?もう、ため息しか出てこんわ!」
聞き耳を立ててニニとムーンのやりとりを聞いていたシナは、戦いよりも自分の武器が出オチにならないかどうかが気になって仕方なかった。
「どうした?そちらから来ないのであれば、こちらから行くぞ?」
ドヒュン!
先に次男がシナに仕掛けた。
「はやっ!」
シナは次男のスピードに驚いたが・・・
スカッ!
次男の攻撃を軽々と避けた。
「おぉぉぉ!身のこなし軽いじゃん!」
ムーンはシナが王子ということを忘れているかのように上から目線で言った。
ブンッ!ブンッ!ブンッ!ブンッ!ブンッ!
サッ!サッ!サッ!サッ!サッ!
その後も、シナは次男の刀を何度も交わした。
「カラカラカラ!身のこなしが素晴らしいことは分かった!しかし、それではいつまで経っても我を倒す事は出来んぞ!」
次男の話には挑発も含まれていた。
次男自身も攻撃をしてこないシナにヤキモキしているところがあった。
今の発言でシナが苛立ちを見せ、攻撃を仕掛けて来て欲しいという思いも込められていた。
「分かってるって!ずっと怒ってたから体が緊張しててな・・・。解きほぐす意味も込めて、軽い運動してただけさ!」
シナが爽やかに返した。
「カラカラカラ!我の攻撃を避けることが軽い運動だと・・・?」
次男の眉がピクッと動いたのをシナは見逃さなかった。
次男がシナを挑発したように、シナもまた次男を挑発したのだった。
そこに、それ以上の深い意味はなかった。
"次男に挑発されたから仕返した"
シナが挑発を仕返したのは、そんな子供のような理由からだった。
それでも、次男を苛立たせるには十分だった。
「カラカラカラ!ならば、これならどうだ?」
ヒュンッ!
次男の攻撃速度が上がった。
スカッ!
次男のスピードはシナの想像を超えていた。
シナは次男の攻撃をギリギリのところで交わそうとしたが、かすってしまった。
頬から赤い血が僅かに滴った。
「・・・・・」
シナは頬の傷口に目線だけを動かした。
目線を動かすだけでは傷口を確認することは出来なかったが、シナは傷口を確認したかったわけではなく、少し気になって条件反射的に目線が動いただけだった。
「カラカラカラ!いちいち傷口を気にしていたら集中出来んぞ!それとも温室育ちで、今まで勝負で傷を負うことがなかったか?」
「正直それもあるな!久しぶりに傷を付けられて反応してしまった・・・。でも・・・、これが命賭けの勝負だよな・・・。ツシカのあんな姿を見たくせに、自分の事になった途端、スポーツでもしているような感覚になって実感を失くしてたわ!でも、お前のおかげで目が覚めた。礼を言う・・・」
「カラカラカラ!安心しろ!お前はもうすぐあの世に行くのだから!」
「ハハハハ!そのお礼にと言っちゃなんだが、俺も真剣に相手をさせてもらうとするよ!」
そう言うとシナは武器を取り出した。
「ついに出るのね?」
ムーンが目をキラキラさせながら言った。
スッ・・・
シナが武器を取り出した。
「えっ・・・?あれって・・・??」
ムーンが驚いた。
「あれがシナさんの武器ですか?」
ニニも驚いた。
「おぉぉぉ!シナ坊っちゃまの本気を久しぶりに見られるとは何とも光栄!」
チヨ婆は今にも泣き出しそうに瞳をウルウルさせていた。
「お主・・・本気でやっているのか・・・?」
次男は思わずシナに尋ねた。
「何を言っている!俺はいつだって真剣だ!」
そう語るシナの手に握られていたのは・・・
「アレってスコップですよね・・・?」
ニニの言う通りスコップだった。
「カラカラカラ!それが武器だと・・・?本気で言っているのか?」
次男は構えを解いて大きく笑った。
「そう言うなって。自分との相性を考えながら試行錯誤を重ねて、この武器に辿り着いたんだからさ」
「カラカラカラ!考えてその武器だと・・・?笑わせるな!お主は相手をどこまでバカにすれば良いのだ?いいだろう。そういうことであればすぐにあの世へ連れて行ってやる!」
ドンッ!
次男が我慢できずにシナに攻撃を仕掛けた。
カンッ!
シナは逆手に持ったスコップで次男の刀を受け止めた。
「カラカラカラ!これは驚いた!」
そう言うと・・・
ブンッ!ブンッ!ブンッ!ブンッ!ブンッ!
次男は次々と攻撃を仕掛けた。
しかし・・・
カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!
シナは次男の攻撃を全てスコップで受け止めた。
「カラカラカラ!面白いぞ、その武器!我の攻撃がここまで防がれたのはいつぶりだろうか?」
ブンッ!ブンッ!ブンッ!ブンッ!ブンッ!
カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!
次男は攻撃の手をやめなかった。
シナはその攻撃を全て受け止めた。
しかし、ジリジリと後方へと押され始めた。
「カラカラカラ!どうした?防戦一方じゃないか?それでは、先ほどまでと何も・・・」
次男が言いかけた時だった・・・
ザシュッ!
次男の頬を鋭利な何かが傷つけた。
「・・・」
次男は何が起こったのか分からなかったが、スグにその答えを知った。
「カラカラカラ!やるな・・・お主・・・そういうことか?・・・まさか二刀流とは」
次男の頬を傷つけたのはシナの2本目のスコップだった。
「1本しか使わないなんて言った覚えはないぜ!」
「カラカラカラ!確かに・・・、これは卑怯とは言えんか・・・」
次男は自分を無理やり納得させるように笑った。
「さっきの頬の傷のお返しをさせてもらったぜ!」
シナはしてやったりという顔で笑った。




