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第19話 聞かれたことしか答えません

「まさかあなたがあのポロ・アチチだったとはね・・・」


「ごめんよ。騙すつもりはなかったんだけどね。名前を聞かれなかったからさ」


「確かに・・・。では、改めて自己紹介といきましょう!!私の名前はニニ。ギルティ王国で処刑人の卵をしているます!!」


「ほう・・・。若いとは思っていたけれど、君が処刑人・・・。そして卵??」


「そうです、何か??」


「いや、悪気があって言ったんじゃないんだよ、気分を害してしまったのなら謝ろう。しかし、君みたいに実力があっても、卵なのだね」


「ふん!!あなたに私の何が分かるって言うんですか??」


「分かるよ!!背中におぶってもらっただけで伝わってくるほど、君の体は鍛えられていたからね。さらには僕を気遣って病院にまで連れて行こうとしてくれた。その優しさもグッド!!体も心も申し分ない人格者だ!!そんな君が卵・・・。ギルティ王国は民に恵まれているんだね。それとも、民を見る目がないのかな??」


「からかっているんですか??」


「いやいやそんなことはない!!むしろ、買っているんだよ。どうだいニニ君、ホッカ王国で働いてみないかい??」


「いいえ結構です!!」


「どうしてだい??」


「人が自己紹介したのに、自分は全く名乗らない!!そんな王様が統治する国で働きたいなんてこれっぽっちも思わないので・・・」

 ニニの言葉を聞いて、ポロ・アチチは"ハッ!!"とした顔を見せた。


「すまない。悪気はなかったんだ。僕も色々あってね・・・」

 ポロ・アチチの顔が少し曇ったように見えた。

 しかし、すぐに切り替えて話を続けた。


「とは言え、君の言う通りだね。自己紹介が遅れて申し訳ない。僕の名はポロ・アチチ。ホッカ王国で王をしているものだ!!」


「今更遅いですけどね!!」

 ニニは厳しかった。


「ははは、君のようなしっかり者が僕の側にいてくれると助かるんだけどね。しかし、僕の誘いを断ると言うことは・・・、困ったなぁ・・・、ここで君を始末しないといけないと言うことだ。だって、君たちは僕の部下の結婚式を邪魔しに来たんだろ??」

 "やはりバレていたか"

 ニニの予感は嫌な方に当たった。

 しかし、ニニは素直に認める気がなかった。


「さぁ、それはどうでしょう??」


「ふふふ、とぼけてもダメだよ。さっきお姫様を連れ戻しに行くって言っていんだからね」

 そう言いながら、ポロ・アチチは人差し指から直径30cmほどの炎の玉を作り出し、ニニに向けて飛ばしてきた。


「せっかちな王様は民に嫌われますよ!!」


 ガッキィィィィィィィンンン!!!!

 ニニは剣で炎の玉を弾き返した。


 ピリピリピリ・・・

 ニニの剣を持つ手がわずかにシビれた。


「流石にこれでは何ともないか・・・。では、これはどうだろう??」


 アニマルフレイム スワロウ


 ズオワァァァァァァァァァァ!!!!

 炎が燕の姿になり勢いよくニニに飛んで来た。


「でっしゃぁぁぁぁいぃぃぃぃ!!!!」


 バッガァァァァンンン!!!

 ニニは燕の炎を強振で打ち砕いた。


 ビリビリビリ・・・

 ニニの剣を持つ手がシビれた。


「ははは!!本当に君が卵なのかい??つくづく信じられないよ!!この技をこんなに簡単にさばけるなんて、うちの国だと副隊長クラスにしか出来ない芸当だ」

 ニニを評価するポロ・アチチであったが、もちろんニニの実力に押されているといったことは全くない。

 むしろ余裕の笑みを浮かべているほどであった。


「くぅぅぅ、シビれますねぇぇぇ!!!」

 それはニニも同じであった。


「それは君の手の話かな??それとも気持ちの話かな??」

 ポロ・アチチは意地悪な質問をして見せた。


「気持ちに決まっているでしょう!!」

 少し強がりの入った言葉でニニは答えた。

 そして、今度はニニの方から仕掛けた。


 ドヒュン!!!

 ニニは燕の炎よりも早くポロ・アチチのふところに潜り込んだ。


「お返ししますよ!!」

 ニニは下から上へと剣を切り上げるように攻撃を放った。


 シールドフレイム


 ガキィィィィィィィンンン!!

 しかし、ニニの一撃は炎の盾によって止められた。


「えぇぇぇぇ!!そんな使い方まで出来るんですか??言ってくださいよぉぉぉ!!」


「だって聞かれてないから!!」


「そうでした!!」

 ニニは素直に納得した。


「わかればよろしい!!じゃあ、今度はこの距離から僕の炎をさばいてごらん!!」


「しまった。完全にあなたのペースにはめられてしまった!!」


「そんな人聞きの悪いこと言わないでおくれよ!!」


 アニマルフレイム スワロウ

 

 ボガァァァン!!!

 ニニに炎をかわすことは出来なかった。

 ニニはくらった炎に包まれた。


「これで終わりっと・・・。それじゃあ、僕は行くね!!そろそろ花嫁の来る頃だ!!他の連中がその瞬間を狙ってくるかもしれない。こう言うおめでたい時くらい、部下のために尽力しなきゃね!!僕はこう見えて、部下に慕われたいタイプなんだ・・・って、そんなに炎に包まれてちゃ聞こえないか??」

 と、チラリとニニに視線を向けると・・・。


 ズアァァァァァァ!!!!

 なんとニニを包んでいた炎が一瞬で吹き飛んだのである。


「勝手に終わりにされると困るんですけど・・・」

 ニニがニヤリと笑いながら言った。


「へぇ・・・。これでもダメなんだ。やっぱり君、卵じゃないでしょ??」


「そうですね。今し方炎に包まれたので卵焼きかもしれませんね・・・!!」


「まだまだ行けそうだね??」


「そんなことより、いい加減その卵発言やめてください!!そこまで言われると褒め言葉ではなく、イジられているようにしか聞こえません!!私が卵だってことは私自身が一番わかっています。だって、私のスグ側にはとんでもない化け物がいるんですから!!」


「へぇ・・・。君にそこまで言わせる人がいるんだ。会ってみたいなぁ」


「いずれ会えますよ!!」


「では楽しみにしておくよ・・・。その前にこの戦いを早く終わらせないとね」


「そんなに思い通りに行きますかね??」


「いくよ!!僕がもう少しだけ本気を出せばね!!」


 アニマルフレイム ホーク

 

 ズオアァァァァァァ!!!

 先ほどの燕の炎よりも大きく力強い鷹の形をした炎がニニに襲い掛かった。


 ズガガガ!!!

 ニニは炎を剣で必死に受け止めた。

 しかし、弾くことが出来ずそのままズリズリと後ろに下がっていく。


「では、こちらも一緒にどうぞ!!」

 ポロ・アチチが畳み掛ける。


 アニマルフレイム イーグル


 ズオアァァァァァァ!!!

 奇抜な動きをしながら鷲の形をした炎が、鷹の炎を必死で受け止めているニニに向かって飛んで来た。


「マジ???」


 ドガガガガガガ!!!

 ボガーーーンンン!!

 

 ニニは二つの炎を一緒に受け切ろうとした。

 しかし、二つの炎が合わさった瞬間、大きな爆発が起き、ニニは吹き飛ばされたのである。


「質の違う炎を合わせて爆発させることも出来るのさ!!ね、言ったでしょ。僕が少し本気を出せばスグ終わるって」

 周りで見守る兵士たちの開いた口が塞がらない中、ポロ・アチチは楽しそうに話す。

 しかし・・・。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・」


「おぉ!!これでもまだ立ち上がるのかい??でも、もう限界みたいだね・・・。可哀想だから、さっき助けてくれたお礼として、早く楽にしてあげよう!!」


 アニマルフレイム ホーク&イーグル


「さぁ、本当にこれで終わりだ!!」

 ポロ・アチチの言葉にニニは覚悟を決めた。

 しかし、ポロ・アチチが二つの炎を放とうとしたその時・・・。


「ちょっと待ったぁぁぁ!!!」

 どこからともなく声が聞こえて来た。


「誰だい!!今良いところだったのに・・・」

 ポロ・アチチは声のする方へ向いた。

 そこに立っていたのは・・・。


「ポロ・アチチさま、私です!!ご無沙汰しています。ボリベでございます。本日は私の結婚式に出席してくださり、本当にありがとございます」

 なんとボリべだった。


「こういう時って、主人公が来るんじゃないの・・・??」

 ニニの力がドッと抜けた。


「だね・・・」

 流石にポロ・アチチも苦笑いをした。

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