21.現れたるは
「よっし!
決めた!」
ボスはしゃがんで香織たちをじろじろ眺めていたが、突然、そう言って立ち上がった。
「本来なら、仲間を傷付けた奴らは全員処刑なんだが、あっさり処分しちまうのももったいない。
捕虜も増えたことだし、頑張った部下たちを労ってやろう!」
こいつ、まさか。
ボスは楽しそうに俺たちに銃を向け、香織とみちると咲に言い放った。
「お前ら3人が、俺たちに奉仕してくれたら、こいつらを殺さないでやろう!」
「ふざけんなっ!」
「てめえ!
いい加減にしろっ!」
「……てめえらは黙ってろ」
がっ!
ごっ!
ボスの提案に噛み付いた俺と京也は、銃の持ち手で殴られた。
新一は目を閉じて、必死に自分を抑えているようだった。
「さーて、どうするよ?
大事な大事なお仲間を助けるために、俺らの慰み者になるか?
それとも、せっかく助けに来てくれたお仲間を見捨てるかぁ?
もし見捨てるってんなら、お前らには何もしないでやるよ」
ボスはニヤニヤしながら、香織たちにそう告げる。
「そ、そんなっ」
香織たちは青い顔をしていた。
「……そんなことしなくていい。
助けられなくて悪かった」
「新一」
しばらく目を閉じて、現状を打開する策を考えていた新一は、やがて諦めたように目を開けて、穏やかな顔で、香織たちにそう言った。
「香織。
連れてきてしまって悪かった。
何とか、生き延びてほしい」
「……悟」
「ま、しゃーないか」
京也も溜め息を吐きながら、抵抗するのをやめた。
「はっ!
つまんねーの」
ボスはそう吐き捨てると、劇鉄を起こした。
「約束は守れよ」
「あーはいはい。
なんか冷めちまったからな。
別にそれでいーよ」
きっと睨み付ける俺に、ボスはつまらなそうに引き金に手をかけた。
「待って!」
「みちる?」
それまで話さなかったみちるが突然声を上げた。
「私、やる。
やるから、皆を助けて」
「ほう」
「わ、私も、助けに来てくれた皆を見捨てるなんて、無理」
「咲まで」
ガタガタと震えながら声を出す2人に、香織がぎゅっと拳を握る。
「私もやります!
だから、3人を助けてください!」
「バカっ!
やめろ!」
「いーい度胸だ!
だってよ!
お前ら!」
嬉しそうなボスの声に、部下の男たちもウオオー!と声を上げる。
「やめろ!
そんなことするな!
香織!」
男たちの歓声で、俺の声は届かない。
「ごめんね」
香織のその声だけが、俺の耳にしっかりと届いた。
「ちょ、ちょっと待てー!」
「ああっ!?」
「え?」
「や、弥彦」
ボスの部下たちの魔の手が香織たちに伸びようとした時、フロアに声が響き、声のした方を振り向くと、入口に、外で待っていたはずの弥彦の姿があった。
青い顔を上気させて、震えながら、何とかその場に立っているようだった。
「なんだぁ?
お前」
ボスが弥彦の方を向く。
「皆を離せ!
じゃないと、ゆ、許さないぞ!」
「ぷっ!」
わはははははっ!という笑い声がフロアに響く。
「そんなにプルプル震えちゃって、どう許さないっつーんだよ」
ボスはせせら笑いながら、弥彦に近付いていく。
小柄な弥彦は大柄なボスな胸辺りまでしかない。
「こ、こらしめてやる!」
「ぶはははははっ!
ご老公かよ!
やめろよ!
笑い死ぬだろ!」
ボスは腹を抱えて大笑いしていた。
ガシャァーーーーンッ!
「なんだぁ!?」
すると突然、窓ガラスが割れた。
ざざざざざざっ!
「ばあちゃんっ!」
「お望み通り、ご老公様のお出ましだよ。
こらしめるのも、私らだけどね」
そこに現れたのは、新一の祖母率いる、お年寄り軍団だった。




