13.次なるお題
「来たか」
新一が呟く。
お題変更の放送だ。
『さてさて!
少なからず密告してくれた皆さんのおかげもあって、かなりの逃走者を捕まえることが出来ました!
これも皆さんのご協力のおかげです!
感謝感謝!
ありがとーございますー』
ピエロが帽子を押さえながら、わざとらしく頭を下げる。
俺は三枝木やみちるをさらった奴らをの事を思い浮かべ、思わずギリッと歯を食い縛る。
『無事に逃げのびた逃走者もいるみたいですね。
その方たちには少し休んでいてもらいましょう!
私は慈悲深いですからね!
悪魔だけどっ!
あ、ここ笑うとこですよー!』
ピエロは相変わらず無駄に高いテンションで話を進めていく。
『さって、そろそろお待ちかね、次のお題の発表でーす!』
皆がごくりと唾を飲むのが分かる。
『えー、まだまだ人はたくさんいますねー。
それでは、これまで頑張って働いてくれた方々には、ここで退場していただきましょー!
と、いうわけで、次なるお題は、
60歳以上!
です!
もう十分生きたでしょー!
ここらでバイバイしときましょー!
それでは頑張ってくださーい!
あ!密告もお待ちしてますねー!
それではまたっ!
しーゆー!』
「くそっ!
範囲が広いっ!」
京也が吐き捨てるように叫ぶ。
「ば、ばあちゃん」
京也の叫びよりも、俺は優先すべきものを知っている。
新一の声に従って目をやると、新一の祖母の額が、香織のようにぼんやりと光っていた。
「そ、そんな」
悲嘆に暮れる香織だが、その香織の額の光が消えているのを見て、俺は内心ほっとしていた。
だが、その代わりに新一の祖母が逃走者になってしまった。
どうするべきか。
本来であれば、香織と新一の祖母には留守番をしてもらって、男たちで奴らのアジトに潜入する予定だったが、誰か護衛も兼ねて残した方がいいだろうか。
新一も同じことに迷っているようだった。
新一の祖母にはお世話になっている。
守りたいと思う。
新一は自分の祖母なんだし、その気持ちは俺なんかよりずっとあるだろう。
俺たちが迷っていると、新一の祖母が口を開く。
「新一。
迷う必要はないよ。
皆で行ってきなさい。
もちろん、香織ちゃんも連れてね」
「でもっ!
ばあちゃん!」
祖母の言葉に、新一が叫ぶ。
「ここにいたら、香織ちゃんも危ないかもしれない。
それなら、あなたたちと一緒に行って、あなたたちが守ってやる方がいい。
もう逃走者でもないから、鬼に襲われる心配もないしね。
なあに!
私は物置にでも隠れて、大人しくしてるよ!」
新一の祖母はそう言って、二の腕にぐっと、ない力こぶを作ってみせた。
「ばあちゃん……」
新一は泣きそうな顔をしていた。
「まったく、情けない顔をするんじゃないよ。
言っとくけど、私だって、まだまだ死ぬ気はないからね。
隠れとくから、さっさと友達を連れ戻して帰ってきなさい。
そしたら、また皆で冷たいカレーでも食べようね」
祖母は最初は厳しい顔をしていたが、最後は柔らかく包み込むような微笑みを湛えていた。
「ばあちゃん……
分かったよ。
必ず、全員ですぐに帰ってくるから。
ちゃんと待っててよ!」
新一は決意を決めて、祖母にそう告げた。
「ああ。
それでこそ、私の孫だね。
待ってるよ」
そう言って微笑む祖母を、俺も決意を固めて見つめていた。
その後、日が沈む前に、俺たちは布団に入った。
朝から歩き回ったからか、布団に入るとすぐに眠ることが出来た。
新一の祖母は、1人洗濯物をたたみながら、先ほどの出来事を思い返していた。
「ふふっ。
あの子も立派になって、嬉しい限りだねえ」
祖母はそう言って微笑む。
「妙さん。
準備はできたよ」
「そうかい、ありがとね」
窓越しにいた男性が祖母に話し掛け、祖母はそちらを見ずに、それに応える。
そして深夜、祖母に見送られ、新一たちはみちるたちが連れ去られたアジトへ向けて出発していった。




